レベル15
いやそうだよ? これが正しいモンスターカードだよ? いやそうなんだけど。
違う! オレが期待していたのはそうじゃない! そうじゃないんだよ!
どうしてこうなった……
オレは手元にある『白い』モンスターカードを見やる。
メタルスライム……レアカードじゃないのかよ。
名前はまんまメタルスライム。レアリティは☆2だ。
2ってあんた……どんなにレア種でも、スライムは所詮スライムだってことなんだろうか。
「はぐれメタルならぬ、はずれメタルですねえ」
「うまいこと言うなお前」
ざぶとん一枚あげちゃうよ。
ん? そういやオレ、このメタル、ダメージ削ってないのにゲットしたな。
「人間に懐いているようでしたからね。好感度? が一定を超えていたのかもしれませんね」
そういや中には、仲良くなってゲットする、なんて方法もあったりしたっけかなあ。
そこへ、遠くからズルッ、ズルッっていう音が聞こえてきた。
ふと道を見渡すと、モーゼな十戒の人が海を割ったがごとき、人垣が割れて居るじゃありませんか。
そしてその先から、何かを引き摺って来ている人物が一人。
……引き摺られてるの、アレ、人間じゃねえか?
引き摺られてるのは、なんかズタボロになっているようだけど、戦士風の男性に見受けられる。
引き摺っている人物は、両手にグローブをした格闘家? っぽい感じの女性だ。
「ここに、鍛冶屋のイブセイって人が居るって聞いたのですけど」
コホー、コホーって、怒り冷めやらぬって表情でそう言ってくる。
エクサリーとはまた違った迫力があるでござる。
その迫力に押されてか、皆が一人の男性へ視線を向ける。
その男性は、先ほどオレにスライムをくれた親父さんだった。
「な、なんじゃろか?」
腰が引けてるッスよ親父さん。
親父さんは、一回り小さいその女性の迫力に押されてござる。
「このボンクラがね、よりにもよってね、私のくゎわいいスラミィちゃんをね、う、売ってきたってね」
売っての部分で力が入ったのか、ズタボロになっている男性が悲鳴を上げる。
「それで、買い戻したいのですけど」
親父さんはオレの方をチラッと見て、その後、ラピスの方へ目を向ける。
他の人達もみな、ラピスへ視線を投げかける。
たぶんあれだ、ラピスはオレの護衛なんで、そっちへ視線を流したようだ。
で、そのラピス、そんな皆の気遣いを知ってか知らずか、オレの方へ視線を投げかける。
そしたら皆さんも釣られてオレを凝視してくる。
そしてそんなオレの手の中には、まるで討伐した証拠って感じな、スライムが描かれたカードがあったりする。
「まっ、まさか……!?」
ズタボロなお兄さんを放り投げ、ガチンと両手の拳を打ち鳴らす。
それ、鉄が入っているッスか?
いや、オレは悪くないよ? 悪くないよね?
なんかさっきも同じ事考えたような、デジャブ?
「わ、私のスラミィちゃんを……」
「待って、まって! ストップ! ちょっ、暴力反対!」
『出でよ! メタルスライム!』
オレは慌ててスライムを召喚する。
そして、オレの手のひらにポンと現れるメタルスライム。
「スラミィちゃん!」
ちょっ、お姉さん、あかん、あかんって。
そんなに強く握ったら……ああ、スライムが……
興奮したその女性は、オレの手からスライムをひったくると、抱きしめて頬ずりし始めた。
しかしながら、結構な握力のようで、メタルなスライムさんが今にも潰れそうでござる。
「あっ、あっ、スラミィちゃんが!」
そのご様子にやっと気づいたようで、慌ててスライムを机の上に置く。
スライムはベチャッとなって今にも死にそうなヤカン。
『戻れ! メタルスライム!』
オレは慌ててカードにスライムを戻す。
スライムが消えた後の机を呆然と眺めるお姉さん。
「ぐすっ、グスッ……」
なんだか泣き出し始めてしまった。
大丈夫! 大丈夫ッスよ! 昇天してないですから!
「私、こんな怪力で……」
なんでもこのお姉さん。格闘家のスキル持ちらしい。
しかしながらカワイイものが大好きで、中でもスライムはちっちゃくってまるくって、とっても大好きなモンスターなんだって。
ただ、格闘家のスキルは素手での攻撃をアップさせるらしく、モンスターであるスライムには、つつくだけでもダメージになってしまうんだと。
普通のスライムだと、抱くことすら叶わないのだが、メタルスライムは防御力が高いので、唯一触れる事が出来たのだと。
そこで大層かわいがっていたのだが、パーティメンバーの一人が、
「見てくれこの装備、メタルスライムと代わりに半額にしてくれたんだぜ」
そんな事を言っている。ふと見渡すと、可愛いカワイイ私のスラミィちゃんがいない。
ちょっとボコボコにして事情を聞きだしたところ、懇意にしている鍛冶屋さんが、どうしてもメタルスライムが欲しいって言ってたので譲って来たとか。
そこで、急いで買い戻しに来たとの事だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます