レベル14 『モンスターカード!』で、ゲットしてみたらメタルな鎧に

「うわ~、ついに来ちゃいましたね。私をとるか、冒険をとるか、ほらちゃんと答えて差し上げませんと」


 ラピスがオレに耳打ちしてくる。

 そして、どうやらそのセリフが耳に入ったようで、真っ赤になった顔を両手で隠しながら、ちがっ、そんなつもりじゃ、なんて呟いているエクサリー。

 なぜかそんな仕草がツボに入ったオレは、思わずこう答えてしまう。


「一緒に居たくない訳がない。それどころはオレは……エクサリーと一生を共にしたいと思っている」


 まるでプロポーズみたいになってしまった。というかそのものじゃね?

 ヤバイ、思わず吐いて出た言葉が、かなりくさいセリフになってしまった。

 エクサリーは一瞬、驚いたような表情を見せると、さらに両手で顔を覆いつくす。

 そしてしゃがみこんで小さな声で呟く。


「こんな、こんな怖い顔なのに……それなのに一生一緒に居たいなんて、信じられない……」


 そして、殻のように閉じこもり、小さくなってしまう。

 一生懸命、怖い顔を隠そうとするエクサリー。

 だけど、今はそんなに怖くないのに。むしろ、キリッとした美人に見えない事もないのに。


 オレがちっちゃい頃から、怖いコワイってからかっていた所為なのだろうか?

 だとしたら責任をとらないとな!

 オレはエクサリーの前に座り込み、その肩に手を掛ける。


「初めて会った時に言ったろ。エクサリーの運命の相手は、その怖い顔が好きな奴だって」

「クイーズ……」


 両手を開いて、オレを見つめてくるエクサリー。

 それはまるで、蕾が花開いたかのようで……思わずオレは、エクサリーを抱きしめてしまった。

 そしたらエクサリーも、きつく抱き返してくる。


 暫くして二人、身を離すと互いに見つめあう。


「私、生まれて始めて、こんな顔でも良かったって、思えたかもしれない」


 そう言って微笑む。

 ズキューンってキタっす。

 ヤバイ、あと2年待てる気がしない。


 その時だった


 ――ガタンッ!


 何かすぐ近くから物音が。


「おめっ、いいとこなのに何してんだよ!」

「すまねえぇ、いや、これからキッスかと思ったら思わず力が入っちまった」


 見渡すと、物陰に隠れた人影が……一つ、二つ……10人以上はいるや。

 隣のエクサリーがおもむろに立ち上がる。

 おおっ、表情が無くなって超コエエ。

 美人が怒ると凄みがあるというが、エクサリーの場合、凄み通り越して凄慘というかなんと言うか、周りの人達が息を呑む音が聞こえるようだ。


 そして突然走り出した。

 あっ、壁にぶつかった。超痛そう。

 額を押さえたまま、さらに走ろうとして桶につまづいてすっ転んだ。


 暫くうつ伏せに倒れて動かない。ラピスが木の枝でつついている。やめてやれよ。


 気を取り直して立ち上がるエクサリー。

 そっとコッチを振り返る。

 それはまるで、これからちょっと殺ってきますわぁ、と言っても不思議ではない表情であって、近くからヒィって声も聞こえてきた。


 えっ、何? オレこれからタマァ取られるの?

 いや、オレは悪くないよ? 悪くないよね?


 ゆっくりとオレに近づいてくるエクサリー。

 そして……触れるか触れないかの、軽い口づけをしてくるのだった。


「私、待ってるから」


 そう言うと、今度こそ走り去って行くのであった。

 暫く呆然と立ち尽くすオレ。

 えっ、何が起こったの? えっ、マジで!?


 これってもしかして――――プロポーズ成功という奴ですか!


 ヒャッパーっとガッツポーズをとるオレに、周りの人達が肩を叩きながら話しかけてくる。


「いやあ良かったなぼうず。こんな所で何おっぱじめんのかと最初はハラハラしたもんだ」


 そういや、夕方とはいえ、店の真ん前だな。

 良く見ると遠くで、道を塞いでくれているお方が居たりする。

 気を使って通行止めにしてくれていたようだ。ありがたい事だ。


「しかし怖かった、怖かったが……いい女になったよなあの譲ちゃん」

「ああ、偶に実は凄い美人なんじゃ? と錯覚するほどだな」


 やはり、オレ以外からも美人に見える事があったんだな。


「ほらぼうず、ちょっと早いかも知れねえが、婚約祝いだ」


 そう言って、一匹のスライムを差し出してくる近所の鍛冶屋の親父さん。


「えっ、……これは?」

「欲しがってたんだろ? メタルスライム。知り合いの冒険者が持ってるってんで譲って貰ったんだ」

「親父さん……」


 なんと、オレがメタルスライム欲しがっているのを知って、近所の鍛冶屋さん達が知り合いにあたってくれていたらしい。

 ドラスレの件では世話になった、こんどは鎧かも知れないんだって、期待しているぜって言ってくる。

 ありがてえ、ありがたすぎて涙が出て来るぜ。


 ようし! その期待、答えてしんぜよう!


『モンスターカード!』


 オレは、目の前に浮きあがった最後の、白い無地のカードを手にする。


「モンスターカード発動! さあ、こい! メタルスライムゥウウ!」


 モンスターカードから照らされる、強い光に包まれるメタルスライム。

 そして、徐々に影を薄くしていく。

 最後に掻き消えるかのように消えると、オレのモンスターカードに光が集まり始めた。


「よしっ! コレがおれの第3のモンスター! メタルスライムだぁ!」


 えっ、あれっ、メタルスライム? えっ、…………


 ――――そこに描かれていたものは、メタルスライム、そのものであった。


 まんまやんけ!



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も、当然なりません☆

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