レベル4 『モンスターカード!』で、ゲットしてみたらエロいお姉さんになりました。

「それだけ計算が出来れば裏方を任して大丈夫か」


 ウス! 頑張ります!

 今まではエクサリーが一人で頑張っていたんだが、いかんせん12歳という子供。

 間違いも多く、時間もかかっていたそうな。

 そこで、なんとかならないかと奴隷市場へ足を向けたとのことだ。


「暫くはエクサリーと二人頑張ってくれ」

「私、受付する」

「「えっ!?」」


 えっ! その顔で!? えっ、それはちょっと厳しいんじゃ……お客さん寄り付かなくならないか?

 オレと親父さんがエクサリーを凝視する中、


「大丈夫だ、問題ない」


 そう言って拳を握り締める娘さん。

 オレの前世の記憶では、そのセリフを言った奴はたいがい大丈夫じゃないんだが、ほんとに大丈夫か?


「お前ちょっと愛想笑いしてみろ」


 ――ニヤァ


 こぇえええ、悪魔が微笑んでおられる。


「ああ、うん、受付は俺がいるから」

「父、いつも値引きばかり」

「いやだって2個買ってくれるって言うんだぜ? だったらちょっとぐらい値引いてもいいじゃねえか」

「原価割れば赤字も2倍」


 おやっさん……もしかして商品の原価を把握してないとか?


「お、おっとぉ、そういやクイーズはモンスターを操るスキル持ってんだったよな」


 オレ達二人の冷ややかな視線に耐え切れなくなったのか、あからさまに話を変えてくるおやっさん。


「そのモンスターカードのスキル、どんなに弱っていても大丈夫か?」

「ああまあ、というか弱ってなければダメですね」

「それじゃあぜひ頼みたい事があるんだが」


 そう言うと店の入り口付近の一角に連れて行かれる。

 そこにはぐったりと力なくのびている、一匹のウサギが籠の中に入れられていた。


「ほらほら見てくれよこの毛並み、虹の血族、アイリスブラッドっていうんだぜ」


 そのウサギの毛並みはカラフルで、様々な色合いをしていた。

 言われてみれば、虹のような色彩であるかもしれない。


「モンスターの一部はこのように、稀に毛並みの違う奴が生まれる。その中でも虹色の奴はアイリスブラッドと呼ばれ、幸福を運んでくると言われている」


 なるほど、所謂、レアモンスターって奴だな。


「普通に買うとバカみたいに高くてなあ。それこそちょっとした家が立つぐらい。それがなんと!」

「ああ、言わなくても分かってきた」


 そのウサギさん、今にも死にそうな様態。

 たぶん、病気か何かで弱っているのを掴まされてしまったのだろう。


「商才のない父に、客商売に向かない娘、将来は、暗い……」


 隣でエクサリーが真顔で呟いている。

 笑えない上に怖いッスよ。


 よし! たった3枚しかないカードだが、ここで使うべきだろう!


 こんなに弱っているのほっとけないしな。

 なーにカードはそのうち増える、はずだ!


『モンスターカード!』


 そう叫ぶと、オレの目の前に3枚のカードが現れる。


「おっ、やってくれるか」

「これがスキル……わくわく」


 興味津々で覗き込んでくる二人。

 オレもなんだかドキドキしてきた。

 これがオレが始めて使うスキル、オレが始めて仲間にするモンスター。


「ちなみにこのモンスターに名前は?」

「ラピスと名づけている」

「よし!」


 オレは一枚のカードを手に取りそれを掲げる。


「モンスターカード発動! さあ、こい! ラピス・オブ・アイリスブラッドォオオ!」


 オレの叫び声と共に、強い光がカードからウサギに向かって放たれる。

 その光を受けたウサギは徐々に透き通っていく。

 そして、最後には掻き消えるように消えていなくなった。


 次の瞬間、オレの手に持っているカードが光り輝く。

 まるでカードに光が集まって来るがごとく、神秘的な現象だった。

 そしてその光の奔流が収まったとき、そこには……虹色にキラキラと輝く一枚のカードが浮かんでいた。


「これは……もしかして、レアカード!? おお! これがオレの、始めての…………」


 オレは目をゴシゴシとこする。

 そしてもう一度良くカードを覗き込む。

 ん? んんっ!?


 カードを空に透かしてみる。

 そしてもう一度よく見てみる。

 んっ? んんんっ……


「もんすたぁあ?」


 そのカードには――――バニーガールのエロいお姉さんが描かれていたのだった。


「………………」


 とりあえず出してみよう。


『出でよ! ラピス・オブ・アイリスブラッド!』


 オレがカードを掲げそう言った瞬間、オレ達の眼前に一瞬光が集まったかと思うと、ポンと一人のお姉さんが現れる。

 頭から伸びる2本の長い耳、おしりにちょこんと付いてるタマモのような丸いしっぽ、そして、それ以外はどっからどうみても人間でした。


 ハイレグと編みタイツがとっても似合ってございます、ハイ。

 とってもエロいです、ハイ。

 いいのでしょうか、ハイ。


 そのお姉さん、しばらくキョトンとしていたかと思うと、おもむろに飛び掛ってきて、尻餅をついたオレの頬をペロペロされるでござる、でへ、でへへへ。

 そういやオレ、某ゲームも死ぬほどやり込んだなあ。

 ディーなエムな会社さんの、モンスター捕まえるとなぜかエロいお姉さんになるカードゲーム。いやあ、あれにはさんざんお世話になりましたわぁ。


「おいちゃんも、おいちゃんもペロペロ希望」


 順番、順番ですよ?


 その時、ドンッと地面を踏みしめる音が。

 隣を見上げると、般若のような顔をしたエクサリーが。

 元々怖い顔がさらに怖く、もはや直視できないレベル。


「それ、なに、」


 まるで地獄から響いてくるような声で問いかけてきます、ハイ。


「もんすたぁ?」

「どこ、が、」


 一言一言がとても重いです、ハイ。

 なぜかオレは全然悪くないはずなのに、もの凄く悪い事をしている気分になりますです、ハイ。


「これ、モンスターカード、モンスター、捕らえる、操る?」


 そしてなぜかカタコトになるオレ。


「そのスキル、使用禁止、ね、」

「うす……」

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