第二話 自意識
都会の子はみんな田舎に憧れてるなんて真っ赤な嘘。知らない土地に懐かしさなんて感じるわけない。空気がきれいだからってそれが何になる。
文句なんていくらでも言える。だけど言ったところで意味がない。この引っ越しはすでに決まったことだから。親父の都合だからってそりゃないよって感じだけどね。
友達はみんな無責任だ。羨ましいだの離れててもSNSで繋がってるだの、あんな山奥でインターネットが繋がるとは思えない。僕らにとってネットは普遍的で世界中を繋ぐもの。SNSの知り合いなら外国人だってそこそこいる。世界中と繋がれるなんて当たり前に思ってた。
だけどそれは違う。電波が整備されていないところでネットは使えない。これから行くのはそういうところだ。そこらの外国に行くよりひどいところだ。
繋がっている。ただそれだけで安心できた。一人でいても一人じゃない。ネットを介して世界の誰かといつも繋がっていられた。身近な友達が何をしているかも直ぐに知ることができた。僕らはそうしてアピールすることで常に誰かと繋がってきた。
存在なんて不確かなものだ。自己を自己と定義できるのは他者の存在があるからだ。常に誰かと繋がっていないと僕たちは自己を保てない。
僕が田舎生活に不安を覚えているのは多分そういうことなのだろう。ネットから隔絶され、他者との繋がりを断ち切られることに僕の自意識が漠然とした不安を感じさせているんだ。僕が僕でなくなろうとしている。
繋がらなくちゃ。誰か僕を見てくれ!!
ルーラルネットワーク 津笠 @Polymix
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