-4-
少女は、ごく普通の家庭に生まれました。両親は共働きで、少女はいつも家に一人でした。両親とは時たま顔を合わせることがあっても、そこに会話はなどはありません。二つのスーツ姿はいつもどこかへと消え、少女はその行先を知りませんでした。
少女はいつも考えていました。どうしたら、この退屈極まりない日常を変えられるのか。
ある日、食事を摂りませんでした。
特に変化はありません。
ある日、学校を無断欠席してみました。
特に変化はありません。
ある日、家に帰りませんでした。
特に変化はありません。
そうしてまたある日、少女は家出をしようと思い立ちました。
電車に乗り、とりあえず終点まで行ってみます。人ひとりおらず、自然だけがのびのびと生きる田舎。何処へゆくでもなく歩き回り、やがて黄金色の咲き誇る岬を見つけました。その先端から泡立つ岩肌を覗きながら、ふと、少女は思ったのです。
ここから飛び降りてみたら、この退屈な日常は変わるかしら、と。
何をしても自分に興味を示さない両親が、何かしら反応を示すんじゃないかと。学校へ行っても生まれ持った色素の薄さ故に少女に話しかける者は居ませんでした。誰に迷惑をかけることもありません。
ふと、空を見上げてみました。透き通るほどの蒼さと重量感のある入道雲。あぁ、綺麗だなとそんなことを思いました。
ふわり。
少女の記憶は、それきりでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます