第21話 3分間

「委員長の熱!下がってきた!!」

 昨日の出来事に陰鬱な朝を迎えるかと思っていたが、久美の開口一番の報告に皆安堵した。

「まだ眠っているみたいだけど、高熱は下がったみたい」

「地下の備品庫に、抗生物質があったのが良かったな」

 ミリオも眠そうだが、嬉しそうにそう笑った。

「竹内さんも、能力が目覚めたりするのかな?」

 今井の自信なさげな発言にみな一同色めきだった。

「そういえば、小豆ちゃんも熱を出してたよね!」と久美が鐘がなるような声を出せば、

「ヨハクも熱を出したと聞いたぞ」

「…………ああ、うん、まぁ」

「「「おっおおおお!!!」」」

「まぁ、熱を出しても能力がない人たちもいるけどね」

「もう、絵里奈そういうこと言わない!って委員長なら言うよ」

 久美が嬉しそうに絵里奈を咎める。

 朝は終始、和やかに過ぎ、ミリオは少し寝るとイベントスペースへと向かった。

 幸せな朝。ただ状況は閉塞しているそれでも、みな一様により生活を充実させようとそれぞれ動き出した。



  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 三階のアウトドア用品コーナー、水耕栽培セットを見つけ、食料を自給出来るようになるかもしれないと思ったからだ。

 小百合が水耕栽培セットを物色していると

「ねぇ、さゆ…………昨日、笹先輩と何を話してたの?」

 ブスッと頬を膨らませながら、玲奈は聞いた。

 小百合は玲奈が左手だけスカートのポケットに手を入れているのを見て「気になる?」などと意地悪に聞き返してみた。

「気になる!」

 小百合が近くのベンチに腰掛けると、玲奈も横にベタっと寄り添うように座った。

 さて、どういじろうかなと、あれやこれやと玲奈の反応を予想しつつ考えるという小百合にとっての至福の時間を過ごしていると、ぷるぷると玲奈が小刻みに震えだす。

 小百合がん?と目を向ければ、見上げる玲奈と目が合う。さきほどのブスッとした表情とは打って変わりにんまりと笑っている。

「んっふふふぅ、これぇ~」

 スカートのポケットから出した左手の薬指にはピンクダイヤモンドの指輪が光っていた。

 …………随分、手が早いのね。とこうなるように仕向けたとはいえ、妙な早さに小百合はいぶかしむが、

「うまくやってくれたんでしょ? へっへへ、だからさゆ好きぃ~」

 と、肩に頭を置かれてグリグリとこすりつけられる、子犬のような行動に小百合はまぁいいかと思ってしまう。

「ねぇ…………さゆ、ヨハク君のことどう思う?」

「どうって?」

「ええ、だから。…………一人の男の子として~」

 小百合はそれでああっと感づいた。玲奈が妙に甘えてくると思ったら、そういうことだったのかと、だから答えた。

「興味はあるわね」

「えっ、マヂ! さゆが興味持つなんて珍しいね!私、色々と協力できると思うよ!」

 としんみりから若葉が咲くように元気になる玲奈に、ええ、だってこんな状況だしね。と心で呟き、

「仲良くしとくことに越したことはないでしょ?」と言った。

「?……えっへへ、それもそうだね。じゃぁささっとこれ屋上に持っていこう」

 うーん、やっぱり綺麗と、ピンクダイヤモンドの指輪を眺めながら、玲奈はよく分かってなさそうに笑った。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ぐぉおおおおおお、こぉお!という豪快な音が首領・ホーテの備品庫に響く。

 害虫ペスターとの唸り声とは違うその音の正体は、グリのいびきであった。

グリの周りにはカラー飯やカレー麺と書かれた容器がいくつか転がっていた。

最後の晩餐には何がいい?

 そう聞かれたなら、迷わずカレーライス!と答える。

 それほどにカレーライスが好きだった。

 十一時前、あと1時間ほどで皆が集まっての昼休憩を取る予定となっている。

 だというのに地下の備品庫、埃が詰まったようなここに香辛料の独特な匂いが充満していた。

 当然それは昼食まで待てずにグリが食べたからだ。

 口にはカレーの汁がつき、腹を出して気持ちよさそうだ。

 そんなグリを起こそうとするかのようにスマホがピロンと音を立てるが、グリは腹をボリボリと書いただけで起きようとしなかった。

「う~ん、もうちょっと」

 意識の半分は浮上を開始しようとしているが、もう半分はまだ寝ようとしているような微睡の中でこの瞬間が、カレーライスを食べる時の次に幸せだとグリは考えていた。

 ここは学校じゃない。別に仕事なんかもなければ、宿題や授業もない。

 ただ皆が皆何かを忘れたいのか、はたまた暇つぶしなのか、色々と今後に向けて動いてたりしている。ただ、グリはそんな気にはなれなかった。初日動いたのもベッドを確保するためであって自分のためだ。夜ぐらい快適に過ごしたいと思ったからだ。

 快適な寝床に当分困るこのない水と食料を手に入れて、何をそんなにやることがあるのか、みんなゲームでもして助けを待てばいいじゃないか。そんな楽観的にグリは考えていた。

 今の今まで、なんだかんだ、人が死ぬところを見ていないグリの発想だった。いや、この状況に心が参らないようにするための脳の処置なのかもしれない。

 そんな幸せ絶頂のグリを起こしたのは、ファンファンとけたたましいサイレンの音だった。

 最初は遠くから。徐々に、徐々に、大きく近づいてくる。

 どうやら音源は重なっているようでそれもけたたましいサイレンのようだ。

 さすがのグリも驚いて飛び起きた。

 外?!誰かが鳴らしているのかもしれない。それもその音は一つや二つじゃない。

 微睡から覚醒しきれていない頭はそれを、誰かが助けに来たのだと思った。

すぐにエレベーターに駆け寄り、ボタンを押す。だが、

「まてよ」と思いなおす。

 変に動いて万が一、はぐれたり害虫ペスターに出会ったりしたら大変だ。

 うん、ここにいよう。ここはバリケードもあるし、なにより食料も水もある。ここで籠城しているほうがわりかし安全かもしれない。

 そう思うと、ぐぅ~腹がなった。

 うん、万が一に備えて今のうちに食いだめしておこう。

 グリはいそいそと段ボールを漁り、カップ麺を取り出した。これがいいか。お湯を入れるだけでカレー麺が食べられる人類史に残すべき技術。しかし、これもいつか食べられなくなるのか、そう思うと感慨深い。

 グリはラベルをはがし、持ち込んだポットのお湯を注ぎ、スマホを重し代わりに乗せる。

 ついでに三分のアラームもかけられる。スマホは重しにこの上ないアイテムだ。



 ◆◆◆◆◆◆11:27スタート◆◆◆◆◆◆


 そうしているといつの間にかサイレンらしき音も遠ざかっていく、うんうん食事の時ぐらいは静かにしてほしいものだとグリは思う。

 ほのかに上がる湯気から、カレー特有のスパイシーな香りが漂い始めている。

 食べたい気持ちをぐっとこらえるまだ1分も立っていない。

 ああ、早く時間が経たないかーとグリは思った。


 ◆◆◆◆◆◆11:28◆◆◆◆◆◆


「流石のあの体力バカも寝たみたい」

「一緒に寝てくれば良かったのに」

「なにを、バカなこと言ってるのよ。…………このっ!」

「ひゃん!そこだめっ、」

「この、この、この、この、」

「ひゃん! だめひゃん!、わきひゃん!腹ひゃん!ダメだってばー」

 葵の熱が下がり、久美も絵里奈も、またあの三人の日常が戻ってくると思うと、自然と疲れが吹っ飛び、久美がフザケ、絵里奈が乗る。あとは、葵がツッコミを入れてくるか、さらに天然にボケてくれかすれば、いつもの三人のノリが戻ってくる。

 二人でじゃれていると、

「そんないいんですかぁ~?」

 コーヒーカップから溢れるほどに入れた砂糖のように甘ったるい声が聞こえてきた。

 まるで宝探しをするように商品を探すのがこの店の醍醐味だ!と言わんばかりに雑多に積み上げられた商品群の中で、そこだけは綺麗に整頓され、ある意味で異彩を放っていた。

 床は大理石をイメージしているのか、エナメルのように黒く光り、十字の交差した溝に白い線が走っている。

 その上に置かれたガラスケースには、色とりどりの宝石の輝きが咲き乱れる。

 そんな宝石たちの間を、ミツバチが楽し気に花々を飛び回るように手に取る少女を見て、絵里奈は感情を隠さずに舌打ちする。

 そのちょっと長めのボブカット、そこから覗く丸く大きな瞳、小さな背丈から自然と上目遣いに見上げられれば、大抵の男子が落ちてしまう、豊かな表情と舌足らずな言動は、小動物のような可愛らしさがある少女、玲奈だ。

 その横には、爽やかな笑顔を浮かべる青少年笹がいた。

「およ、笹先輩だぁ~。灰原さんと一緒…………付き合ってる感?」

「あいつが口説き落としたんでしょ。ずっと狙ってたし」

「ふーむ、でも笹先輩は百合姫が好きそうな感じしたけどね」

「ハッ」 何を当たり前のことを?と絵里奈は笑ってしまう。

「そんなの決まってるでしょ、百合姫様がバッサリ振ったから、あいつがおこぼれをもらったんでしょ、なにせハイレナだし」

「そんなもんかー」

「そうよ、もう行きましょ。葵が心配だし」

「そうだ、そうだ、委員長が目覚めてるかもしれないし」

 久美が軽やかなステップで階段を目指してフロアを横切っていく、絵里奈は横目で玲奈を見ながら、それを追った。

「もう、やだぁー」と腕を触る自然な?ボディタッチ、喜怒哀楽がはっきりとした表情、そのすでが愛くるしいて、アイリスが“花”があると称した理由も分かる。そして、自分にはない“花”があると、自然と絵里奈は睨むように見つめってしまっていることに気が付いて、手招きする久美を小走りで追いかけた。


 ◆◆◆◆◆◆11:29◆◆◆◆◆◆


「…………害虫(ペスター)を誘導している?」

 屋上にいたヨハクはファンファンファンというけたたましいサイレンの音を聞き、ちょうど屋上にいたこともあり、外を眺めたのだ。

「パトカー!!」

 ヨハクが見たのは、パトカーがサイレンを鳴らしながら、駅前を爆走してそれ追うように害虫(ペスター)

が連なっているものだった。

 ジグザグに走行する様、いや何よりも窓から体を乗り出す、いわゆる箱乗りで人が乗っている様は警官が助けに来たという幻想を打ち破るには十分なものだった。

「何が目的なのかしら?」

 ふわりと、甘ったるい思い切り吸いこめばむせ返ってしまいそうなほどに芳醇な香りが舞う。

 ヨハクの隣にきた小百合のにおいだった。

 小百合の匂いにヨハクの心臓が高鳴ってしまい、それを誤魔化そうと外を見た。

「分からないけど、誘導しているみたい」

 通りをぐるぐると回っていたパトカーが徐々に離れ、それにつられてサイレンの音が徐々に遠ざかっていく。

 まるでニュースで見た難民のように害虫(ペスター)が群れを成してそれを追いかけていている。

「騒がしいわね」

「まったくその通りですね。アイリス様」

 そんなこれから何かが起こりそうな異常事態の中、アイリスはいつもと変わらずいやそれ以上に泰然自若というかくつろいでいた。

 夏の直射日光で屋上のコンクリートはさながら熱せられた鉄板みたいだというのに、アイリスはそこにサマーベットを持ち込みパラソルを建て、片手にはストローがついたペットボトルを持ち、今井に団扇を仰がせているというどこぞの女王様という風情だった。

 この首領・ホーテのいちおう最年長である今井だったが、本人は嬉しそうに扇いでいるのでヨハクも小百合も特には何も言わなかった。

 ヨハクは外を警戒する振りをして、小百合の様子をうかがう。

 小百合は笑っているでもなく、怒っているでもなく、何気なく外を眺めているようだ。

 それでも長いまつげに縁どられ、濡れた黒い瞳を見ているだけで愁いを帯びた表情に見えてしまう。

「ねぇ、ヨハク君」

「――っ!な、何かな」

 まずい、思わず見つめってしまっていた。ヨハクはそう内心焦って慌てて目線を外したが、小百合はそんなことを気にしてはいなかった。

「あれ、なにかしら?」

「えっ、…………」

 小百合に言われ、ヨハクが視線を戻すと複数台のトラックがまっすぐこちらに向かってくるのが見えた。

 運送業者が使うような武骨な大型トラックに混じって、1台の赤い、血のように、炎のように、赤く目立つ車両があった。

 前に群がる害虫(ペスター)たちを時にひき殺し、時に押し殺しながら、それらはどんどん近づいてくる。

 その目立つ車両の名前にヨハクは覚えがあった。ヨハクだけではない小学生の低学年それよりも低い幼稚園や保育園児でも知っているような有名な車両だった。

「消防車…………」

 ヨハクがその車両の名前を呟いた時、

 消防車の不安定に揺れるはしごの上に堂々と立つ男がいた。

 その男が叫びが上がる。

「さぁあああああああああああああ、ゆぅううううううううううううう、りぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい、言われた通りに来たぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 近隣に響くような叫び、その意味をヨハクは理解は出来なかったが、ようやく訪れようと、みんなで取り戻そうとしていた日常が崩壊していくのを感じたのだった。


  ◆◆◆◆◆◆11:30 ◆◆◆◆◆◆


 それは、グリに祝砲のように聞こえた。3分を告げるアラーム音、意気揚々とカップ麺を持ち上げた時、それは起こった。

 地震?!そう思うほどの衝撃と爆音、金属が擦れる金切り音が響く。思わず両手を離してしまう、カップ麺は床にたたきつけられ、半分以上飛び出てた。

 音が鳴り止むと同時、グリは絶望した顔でカップ麺を拾い上げる。

「もう半分以上出ちゃった。…………でも上のほうは食べれるかも」

 落ちた麺の土埃がついてなさそうなところを箸で器用につまんでいく、そんなことをしていたからだろう、ギィイイという金属の軋む音を聞き逃してしまった。

「もう、本当にもったいな―――」

―――直後、後頭部をバッドで思い切り、殴られたいやそれ以上の衝撃を受ける。

何が、どうして? 思う暇もなく、グリの意識は一瞬で闇に引きづりこまれ、カレーの海へとダイブしていった。

 それに連なるように、ドミノのごとく、次々と備品庫の棚が倒れていた。



  ヨハクが男の叫びを聞く、ほんの少し前、

「嘘でしょ…………なんで」

 朝、熱が下がり復調を見せていた葵だったが、今度は熱が下がりつき、まるで凍っているように冷たくなってきていた。

 どうればいい…………。どうすればいいの…………。

 顔色は青から白へ、まるで彫像なんじゃないかと思うのほどに親友の顔が、体が白くなっていき、それと同時に血の気が引いていっているのが分かる。

 抗生物質を飲んで熱が下がり、それで安心してしまった。少し目を逸らした隙にこれだ。

 絵里奈は自分の行動を後悔した。

 自責の念に駆られながら、どうすれば、と気ばかりが焦りどうすればいいか分からない。

 ああ、私の“バカ”と、思った瞬間、頭に浮かぶのはあの“バカ”のことで、どうすれば、

「どうすれば、いいの辰雄!」

 気づけば目に涙が浮かんでいた。あのバカは、確か…………上で寝ている!

 もう、本当にバカ。葵がこんな時に何、暢気に昼寝こいているのよ!

「久美、葵を見てて私すぐにあのバカを起こしてくるから。…………すぐに戻るからね!」

 久美の返事も待たずに絵里奈はミリオのもとへと駆け出した。




 笹先輩と二人、宝石の花畑が二人を祝福するかのように光る。これはまごうことなき、初デート。幸せ絶頂、この世の春であり、天国のよう…………だった。

 ガラスケースから、取り出された金と銀が交互に編み込まれたチェーンの先には真紅がついたとても高級そうなネックレス。

「こんな高いのいいんですか?」

 もはやこの店には店員などはいないのだ、むしろこの店すべてが今いる私たちものと言ってもいい。それでもだ、申し訳なさそうに玲奈は言った。

「いいんだ」と笹が答える。それに、と続き、

「これは君に似合いそうだから」と玲奈の耳元で囁かれる。

 吐息が耳にかかってぶるりと震える。付けたあげるよ、と甘い囁きで腰がとろけそうになる。

 火照った皮膚に、金と銀のチェーンがヒンヤリとして気持ちいい。チェーンを付けた手がそのまま肩を掴む。

 下からのぞき込むように玲奈は聞いた。

「どうですか?」

「ああ、綺麗だよ、玲奈…………」

 玲奈と笹の目が合い、二人は自然と近づいていく、玲奈が目を閉じ、鼻先に笹の吐息を感じた時、それは起こった。

 直下型を思わせる建物が縦に揺れる衝撃に、爆音まで響いてきた。

 笹が玲奈を守るように支える。それに玲奈はしがみつきながら、恐怖ではなく幸福を感じた。だが、それもすぐにやんだ。

 余震がないか、しばらく待ったが続きはないようだ。

「ちょっと、下を確認してくる」

 笹には先ほどの甘い表情はなく、いつものみんなを引っ張っていくときのような凛々しい表情をうかべていた。

やだぁ、かっこいい!と玲奈は頬をあかまらせる。

「もしかしたら、バリケードが破られたのかもしれない。玲奈は、小豆ちゃんや立花君を…………」

 パァリィイン!とガラスが盛大に割れる音を聞いた。

 まさか!と笹は焦るが、いやここは4Fだ。いくらバリケードが破れたとしても早すぎると思いなおす。先ほどの地震で罅が入ったのかもしれない。だとすると早急に被害を確認しないとまた上階に籠城する羽目になる。

「笹先輩?」

 上目遣いに、心配そうに見上げてくる玲奈を見る。

「大丈夫」

 自分にも言い聞かせるように玲奈の頭を撫でる。

「ええっ、やめてくださいよ~崩れる~」

 子犬のように笹の手にじゃれる玲奈のいつも通りな感じを見て、少し平静さを取り戻した。

 よしと気合を入れたのをあざ笑うかのように哄笑が聞こえてきた。

「ぎゃっはぁはははははははっはははっ。ここに来るのも久しぶりだな、おぃ」

 その哄笑に玲奈が怯えたように腰にしがみついてくる。

 その肩を抱きながら、笹は考える。

 誰の声だ?記憶を漁るが、ヒットはない。少なくともここにいたメンバーであんな下品な笑い声をあげる物はいないだろう。すると、侵入者?だが、ここは4階だ。どうやった侵入したというのだ。

 その思案の答えが出る前に、それは前に現れた。

「ん、んん??????? あれっぇえええええええええ」

「…………嘘、な、なんで…………」

「どうしたんだい、玲奈…………し、知り合い?」

「玲奈、玲奈じゃないか!」

 後ろに見るからのガラの悪そうな二人組を従え、向かえるように両手を広げる男。

「き、キング」

 玲奈は笹の質問には答えず、この世の絶望を見るかのように怯えた目をして、震えていた。

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