第六章 初仕事 2-4






バックを丸ごと持って出て行ってしまったのが気がかりだ。

あのままチェックアウトしようと思ったら、簡単に出て行けてしまうのだ。



「あ〜。私、見て来てあげるよ」



亜美は若葉の間の京壁に埋まるように沈み、向こう側へと消えて行った。



暫くしてまた、京壁から染み出すように帰って来ると、「大丈夫だったわよ〜。あの子、お風呂に入ったみたい」と教えてくれた。



「よかった……。ん?でも、どうしてだろう。お風呂に行くなら、入浴道具だけ持って出れば良いのにね。それをする余裕が無いくらい怖いなら、どうしてまだこの旅館に留まるんだろう」



「本当よね。そこまでして座敷わらしが見たいのかしら。でもうちの旅館に出るって噂、まだそんなに有名じゃないはずなんだけどなあ。しばらく休業中だったわけだし」



「うーん」



安河内の入浴中に、マリカと亜美は、二人で布団を整えた。


これも亜美の、仲居の仕事だ。


真ん中に穴の空いたシーツで掛け布団の角を包みながら、亜美は首を傾げた。



「お風呂から出たら、彼、もしかしたら部屋を変えてしまうかしら」



「ですよね。その可能性もまだありますよね」



ところが二人の予想を裏切って、安河内は若葉の間へと帰って来たのだ。



「あらま」



「ええっと。この場合、続き……ですよね?」


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