第23話 北条早雲
さて、これから戦国時代に至るわけだが、その前に方針を決めておこう。
戦国時代といえば言わずと知れた
日本で一番戦乱が多かった時代だ。
これが終われば江戸時代になって太平が300年続く、やってやるしかない。
必ず江戸時代にたどり着いてみせる。
戦国時代の注意点といえば、火縄銃の登場だ。
銃弾を防ぐ樹皮には未だ達していない。
これまで以上に俺の近くを戦場にしないことが重要になる。
だが、無限に戦があったのも事実。諜報の手も愛だけでは足りない。
輝夜を動員してもなお足りない。
ここで必要なのは戦略だ。
幸い俺は、なぜかふんだんに歴史知識を有している。
関東の戦国の覇者が誰になるのかわかる。
北条氏だ。
素浪人からのし上がった北条早雲に始まる戦国大名。
豊臣秀吉の支配に最後まで抵抗した大名としても知られている。
彼らが関東一円の支配者となるのだ。
ならば、彼らに取り入るのが正解だろう。
一方に
情報も入りやすくなるしな。
俺は小太郎に命じた。
「お前たち、今から北条に行って忍び働きをしてこい。名前は、そうだな。風魔がいいだろう。」
小太郎と名付けた時は考えもしなかったが、今となってはこれ以外に考えられない。
戦国三大忍群の一つ、風魔忍群は俺の部下だ。
輝夜だけを守りに残した。
「なんで私だけお留守番が多いの。」
「一回失ったから、お前を俺の目の届かないところに送るのは不安なんだ。」
「⋯⋯っ。なら、仕方ないわ。」
輝夜の口元は嬉しそうに緩んでいた。大丈夫だったみたいだ。よかった。
●
「あるじ様も無茶振りなさる。」
「いつものことですよ。」
「あの方の意図など考えても無駄だ。」
「なんでゾンビが混じってるんやろ。」
「銀孤お前はぶっ殺す。」
将門と銀孤の仲は良くない。先に仕えたということでマウントをとった将門が悪い。
初対面でそんなことを言うものだから、第一印象は最悪だ。
銀孤も負けてはおらず、大和杉の上に登ることを許されていない将門を煽りかえした。
以来二人は犬猿の仲だ。
仲裁ちゅうさいする小太郎の気苦労もわかって欲しいところである。
ちなみに将門の姿は普通の人間に近いものとなっている。
ゾンビとは思えない。
大和杉の生命力溢れるオーラを浴び、輝夜の技能「全体自動回復」の効果を500年受けていたためだ。
大和杉のそばに住むと長寿になるとの噂が立っている。
「なにはともあれまずは情報収集だ。愛、頼んだ。」
北条早雲はこのころ、伊豆韮山城いずにらやまじょうに居を構えていた。
伊豆一国の平定が終わり、次の相手に目が向いていた時代であった。
技能「諜報」を最大限活用し、四人は誰にも知られることなく、伊豆に入り込んだ。
しばらく潜伏していたが、なかなか城に忍び込めない。
北条家臣団は優秀だった。かなりガードが固い。
愛が鹿狩りの情報を手に入れた。
北条早雲が直々に伊豆天城山中いずあまぎさんちゅうで鹿狩りを行うらしい。
警備はやはり厳重だが、城ほどではない。小太郎たちは、そこに狙いを定めることにした。
ただ傭兵として雇ってくれと言っても重用されるわけがない。自らの優秀さを示してこそだ。
山の周りには早雲の手勢が展開し、守りを固めていた。
だが、その程度が問題になるはずもない。
警備兵たちを技能「全体麻痺付与」で痺れさせる。
4人は鷹狩りをする北条早雲の元へたどり着いた。
お供を一瞬で麻痺させ、四人は早雲を包囲する。
北条早雲は僧形ではあるが、
「⋯⋯ッ!」
見慣れない姿に即座に警戒態勢をとる。さすがは後北条初代。
「北条早雲、我ら風魔の腕を買うか、否か?」
「条件を言え。」
早雲は警戒を緩めずに問う。何者かはわからない。
ただ、とんでもない力を持った4人であると言うことだけは確かだった。
「我らの願いはただ一つ。大和杉を戦場としないことだ。それだけで我らの望みは成る。」
「その程度でいいのか?」
思ってもみなかった条件を聞き、彼は呆気あっけにとられた。
「不安ならば別の条件を与えても良いぞ。」
「⋯⋯いいだろう。お前らのように腕の立つものを雇えるなら、その程度やすいものだ。」
たとえ他国の間者だとしても、わしが注意しておればいいだけだしな。
口には出さない。
だが、まだ完全にこの風魔と名乗る者たちを信用したわけではなかった。
こうして小太郎たち4人は早雲に雇われたのである。
北条の小田原城奪取作戦が始動する。
風魔の力を最大限に発揮した作戦。
だが、それは風魔の加入がなくとも実現していた緻密な計画だった。
小太郎たちの付け入る要因となった早雲の鷹狩り。
それは早雲が鷹狩りを好むという噂を流すためであった。
愛が技能「諜報」を使って噂を最大限に増幅する。
ここで早雲は小田原城主、
箱根山で鹿狩りをするので、人員を入れることを許して欲しいという内容である。
藤頼は快諾した。心が広い。
だが、それは戦国大名として見せてはならぬ優しさであった。
早雲は鷹狩りの人員として、屈強な兵を送り込んだ。
昼に鷹狩りを行い、帰ったと見せかけて、兵を潜めた。
そして、その夜。
喚声をあげて火を振り回す。
銀孤の放つ火はひときわ多く、大人数がいるように見えた。
数万の軍勢もかくやという鬨の声に小田原城は大混乱に陥る。
城主藤頼は命からがら逃げ出した。
城主の逃走により、将兵の士気も低下する。
早雲は労せずして小田原城を落としたのだった。
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