ヒロシの人生(やさしい)

ヒロシ「人生見切った!!」



マルぼん「はいはい。夢をみるのは自由。妄想するのも自由。この大空に自由という名の翼を広げて飛んでいけ」



ヒロシ「本当に見切ったんだよ! だって、めちゃヌルいもん。今の人生」



マルぼん「ほう。なにか嫌なことがあると『なぜ生んだ! なぜ僕を生んだ!』と両親に暴力をふるう小心者が言うようになったね」



ヒロシ「この前、ママの弟にあたるおじさんが息を荒げて『おまえの本当の親父がどんなヤツがおしえてやるよ。今どこにいてなにをしているのかもな』と、子供にはちょっと重すぎるアウトロー人間の半生を語られてしまったんだよ。『僕にもそんな血が流れているのか』と、とてもヘコんだんだけど『今の人生は夢。本当の僕は眠っていて、幼馴染(女の子。面倒見がよく、料理が得意)が起こしに来ている』と思いこんだら、不思議と気が楽になったんだ。以来、つらいことがあると同じことを思い浮かべるようにした。そうしたら、もうヌルいヌルい。生きるかいのない人生になっちまったのさ」



マルぼん「そんなにヌルいのなら、難易度をあげてみてはいかかがな?」



 マルぼんは『脳とパソコンをつなげ、モニターで色々見れるようになるコード』をヒロシの頭にぶっさし、ノートパソコンにつなげました。モニターには『ヒロシの人生』という大きな文字。その下には『はじめから』『つづきから』『オプション』といういくつかの項目があり、マルぼんは『オプション』のところをクリックしました。



マルぼん「モニターにうつっているのがヒロシくんの人生のスタート画面。そしてこれがオプションさ」



ヒロシ「オプション!!」



マルぼん「難易度調整の他、サウンドテスト、登場人物事典、画面の明るさ調整、コントローラーの設定、エンディングムービーやスタッフロールや次回作予告編の鑑賞ができる。さぁ、さっそくキミの人生の難易度を『難しい』にしてやろう」



ヒロシ「すいません。『やさしい』にしてください」



マルぼん「というわけでキミの人生の難易度を『やさしい』にしたよ。ちなみに今までの難易度は『ふつう』」



ヒロシ「どこがどういうふうにやさしくなったの?」



マルぼん「『ふつう』のときに比べて、他の人のレベルが下がっているんだ。たとえばほら、あそこを見てみな」



ヒロシ「金歯がアタッシュケースにぎっしり詰まった札束を、小動物のような瞳で眺めているね。温和な笑いなどうかべているよ」



金歯「このかみきれはなんだろういったいなんだろうたべものかなむしゃむしゃおいしいなおいしいなおいしいよこれうふふふあははははうふふふふあはははははは」



マルぼん「な。お金の使い方も分からないくらいレベルが下がっている」



ヒロシ「すげえや。これなら僕は神のごとき存在になれるぞ! よし、ナウマン象あたりをシめてこよう!!」



 外にとび出すヒロシ。そこにはなぜか車に乗っている金歯がいました。



金歯「あれれくるまのうんてんってどうやるんだっけわかんないやどうしたらいいんだろとりあえずこのぺだるをふんでみようそれぽちっとな」



ヒロシ「ぎゃー!! はーねーとーばーさーれーたっ!!!」



マルぼん「大変だ。色々な箇所があらぬ方向へまがっているぞ。救急車を!」



119番「ぶーぶーいまあそんでいるからでれないよーじぶんでびょういんへいこうねぶーぶーくるまのおもちゃであそぶのはさいこうだなーぶーぶー」



マルぼん「仕方ない、這いずっていこう、這いずって!」



ヒロシ「こういうときに機密道具だせよ…うう……ううう。そうこうしているうちに病院に到着…」



医者「しにかけさんがきたぞしゅじゅつだしゅじゅつだ」



医者B「めすだますいだてんてきだ」



医者C「めすってなにますいってなにてんてきってなに」



ヒロシ「うー…」



マルぼん「あ、ヒロシの命が尽きようとしている」



医者D「しぬってなにいきるってなに」 



ヒロシ「サヨウナラ……」



マルぼん「ヒロシィィィィィ!」

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