ナウマン象のイリュージョン
今日はナウマン象が自慢の手品を披露する会が開かれました。
ナウマン象の手品は、発作的に墓の下まで行きたくなるようなほど下手なのですが、そこらへんを歩いているイヌを生きたまま喰らうナウマン象の暴力が恐ろしく、みんな「最高!」「感動した!」「抱いて! 強く抱きしめて!」と絶賛し、したくもないスタンディングオベーションを強要されているのです。というか、死ねばいいのに。ナウマン象のやつ。
ナウマン象「今宵、貴様らを感動の渦のなかで溺死させる奇跡のイリュージョンはこれだっ! 『人体消失』。不思議な呪文を唱えれば、あっという間に俺の体が消えてしまう! では行くぞ! カネカネキンコサッサトダシテ
カネカネキンコ はい、消えました!!」
当然ですが、消えていません。普通に見えています。ナウマン象の体。それでもマルぼんたちは、まるで消えているかのような対応をしなければなりません。生きるため家族のため。と、そこへ、今回の会に招待されていなかったヒロシがやってきて
ヒロシ「あ、いたいた。ナウマン象。お袋さんが探していたよ」
ナウマン象「あ?」
ぼこすかぐちゃべちゃぐさっめりっ
ヒロシは星になりました。
ナウマン象「誰も俺の姿が見えないのだ。この隙に」
ナウマン象はマルぼんのお尻を触ってきました。
マルぼん「や、やだ!?」
ナウマン象「おかしいな、俺の姿は見えないはずなのにー。おーかーしーいーなー(ヒロシの亡きがらをチラッとみながら)」
マルぼん「くっ…!?」
マルぼんは、ただ屈辱に身を歪めるしかなかったのです。明日のため。未来のため。
辱めをうけたマルぼんは怒り心頭でっす。それからそれから。
マルぼん「屈辱屈辱!! ナウマン象死なす!!」
ヒロシ「よし、あれ使おう。青酸カリ!!」
マルぼん「そんな現実的なアイテムは使えないよう。マルぼんらしく機密道具で死なす!」
ヒロシ「なるほど」
マルぼん「『種無し手品の種』。これを飲んだ人は、手品がうまくなるんだ。こいつ飲んで手品が上手になって、ナウマン象に恥をかかせて憤死させてやる!!」
ナウマン象「いいものもっているじゃないか」
マルぼん「!!」
ボコスカズガッボキッドガッグチャッ
種は奪われました。ナウマン象、奪った種を飲み込んで……
ナウマン象「ごくん。がはは。これで俺様はいつもよりもすごい手品の使い手になったワケだな。がはは」
通りすがりの少年「貧乏人は石を食え~♪ 石を食え~♪」
ナウマン象「そこの少年! 俺様のイリュージョンをみたくないか!?」
通りすがりの少年「イリュージョン?」
ナウマン象「どんなものでも消してしまう奇跡のイリュージョンさ」
通りすがりの少年「なんでも消し去るだって!? おじさん、僕についてきて!!」
ナウマン象「な…お、おい少年!」
少年はナウマン像を連れて町内の病院へと行き、ある病室へと入りました。病室には、やせた女性が寝ています。
通りすがりの少年「ママだよ。悪い病気なんだ……」
ナウマン象「……」
通りすがりの少年「奇跡のイリュージョンでなんでも消せるんでしょ! ママの病気を消してよ!!」
少年ひとりの笑顔すら見ることのできない己の無力さに、大ショックなナウマン象。自殺して果てました。めでたしめでたし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます