代用

小鳥さんたちの鳴き声も悩ましい、うららかな昼下がり。マルぼんが家でダラダラしていると



「発砲事件だー! 人が撃たれたぞー!」



 絹を裂くような一般市民の叫び。人の不幸が三度の飯よりも好きなマルぼんは、とるものもとりあえず家を飛び出し、現場へと急行。

そこではなんと、ヒロシが倒れていました。撃たれたのはヒロシだったのです。ざまぁ。



マルぼん「ヒロシ、これからは空の上からマルぼんたちを見守っておくれ」



ヒロシ「安心しろ。銃弾は、たまたま胸元に入れておいた湯タンポに当たったから、僕は無事だよ」



マルぼん「ちっ」



 神の奇跡か仏の慈悲か、ヒロシは無事でした。



ヒロシ「しかし参ったな。湯タンポが壊れてしまった。寝るときに布団を温めるのに使っていたんだけど……今夜から、寒い思いをしなきゃならないや」



マルぼん「大丈夫だよ。『代用とシスコムーン』。一見、単なる月の形をしたアクセサリーに見えるけど、これを身につけると欲しいものの代用品が手に入るんだ」



 言われるまま、ヒロシは『代用とシスコムーン』を身につけます。



ヒロシ「これで湯タンポの代用品が見つかるんだね」



ママさん「ヒロくーん、ごはんよー早く帰ってきなさーい」



ヒロシ「はーい」



 ヒロシとマルぼんが帰宅すると、なぜか顔なじみの臓器密売組織の人が飯を食べています。「また腎臓か」「いや、角膜か」と身構えるヒロシでしたが



臓器密売組織の人「安心しなよ、今日は臓器は関係ないんだ。副業できたのさ」



ヒロシ「副業?」



ママさん「シャワーを浴びてきなさい」



ヒロシ「シャワー?」



いつもの臓器密売組織の人「『町で偶然見かけた少年に心を奪われた。なんとか彼と親しくなりたい』と知り合いに頼まれたんだ。

私の副業、人と人の出会いの斡旋なの。んで、調べてみると、その少年ってのがキミだった。で、お母さんのほうに相談したら、『50万円で』ということだったんで」



ママさん「先方は、既に布団に入って待機中よ」



臓器密売組織の人「布団もいい感じに温まっていると思うよ。寒い夜も一安心だね」



 マルぼんは、湯タンポの代用品を用意してくれた『代用とシスコムーン』の効果は絶大だと思いました。

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