ヒロシ、親からも信用されない
前を歩いていた女性が財布を落としました。ヒロシはその財布を拾うと、女性に「もし、財布を落とされましたよ」と、「これでもかっこれがええのんかっ」ってくらい紳士的に声をかけたのですが。
女性「うそつきのド外道! 拾ったなんて真っ赤な嘘で どうせ私からスリとったのでしょ!」
とか言われる始末。この女性、必要以上に人類に絶望しておられる様子。
ヒロシ「ちくしょう。人に親切にしても、なんもええことありゃしない。なんなのこの世界。なんなの21世紀。腐ってるの? 死ぬの? 多少なりとも見返りがほしいところだよ」
マルぼん「それなら、この人にまかせれば大丈夫だよ」
マルぼんが連れてきたのは、甲冑に身を包んだ髭面の男。
マルぼん「彼は『見返り武人』。人に親切にした者が損をするご時勢をなんとかするために生まれた武人なんだ。彼に任せたら、人に親切をしてもかならずその見返りを得ることができる」
たとえば、人に親切にした時、その親切を査定して、内容に見合った金額を相手に請求してくれたりします。ちなみに、さっきの『落ちた財布を持ち主に渡してあげる』という親切は、お金に換算したら1500円くらいなんですって。
武人「こんにちは! 金を払わない人は、この刀で脅してでも払わせますよ。はい、1500円。さっきの女から払わせてきました」
ヒロシ「うわー、なんてボロい商売だろ。こうなりゃ、親切成金を目指すぞー」
武人「あ、そうそう。仮に脅しても金を払わない人がいても大丈夫ですよ。絶対にあなたには損をさせない方法があるんです。実は」
マルぼん「おい、ヒロシ。そこの河で小さな女の子がおぼれているぞ!」
ヒロシ「うひょ! おぼれている人を助けるなんて、めっちゃ儲かりそうだ!」
ヒロシ、光の速さで河に飛び込むと、女の子を助けます。
女の子「げほげほ。あ、ありがとうございます」
ヒロシ「いえいえ、どうしまして。武人さん、いまの親切はいかほどに?」
武人「人命を救うという最高レベル親切でしたので、750万円ですね」
ヒロシ「シェー! 大もうけザンス!」
女の子「750万円? そんな大金払えないです」
ヒロシ「武人さん、さぁその刀で、そのごつい腕で脅すなりなんなり」
武人「こんな可愛らしい女の子にお金を払わせるなんてそんなひどいことはできませぬ」
ヒロシ「ええええ」
マルぼん「彼の唯一の欠点は、小さい女の子が必要以上に好きということなんだ。ライクじゃなくて、ラブ的な意味で。小さい女の子を見ると全身が震えだし、脳内は萌えという単語で埋め尽くされるんだ」
ヒロシ「近年珍しくない類の変態っ」
武人「さっき言いかけましたが、金を払ってもらえなくても、あなたに損をさせない方法があります。した親切と同じ親切を、相手にしてもらえばいいのです。そしたら損はしないでしょう!」
『見返り武人』はヒロシを抱きかかえると、川に放り込みました。おぼれるヒロシ。掴むワラもなく、ただおぼれるヒロシ。
ヒロシ「うわっぽ、お、おたすけー。溺れるのはルナちゃんの体だけと、硬く心に決めていたのに! おたすけっ」
武人「さぁ、お嬢さん、どうぞ。ヒロシを助けなされ。助けた後は、よろしければ拙者と」
女の子「む、無理です」
武人「あ、そうですよね。あはははは。拙者ときたらー。ところでこの後ヒマですか」
ヒロシ「がぼがぼがぼがぼ。さようならー!!」
ヒロシは地上に戻らず、武人も社会的によろしくないので排除されました。そして世界につかの間の平和が戻ったのでした。
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