シカトは人間のクズの所業

 子供たちが集い、共に遊ぶいつもの公園。その公園の現れたのは、僕らの大沼ヒロシ。ヒロシは公園の中央にたつと、右手を高くあげ、ひとさし指を立てて叫びました。



ヒロシ「おにごっこする者、この指とーまれ」



 ヒロシが呼びかけても、公園にいる子供たちは無視。



ヒロシ「かくれんぼする者、この指とーまれ」



 やはり子供たちは無視。



ヒロシ「タカオニする者、この指とーまれ。ちなみに、同じ場所に10秒以上いたらダメなルールだぞー」



 無視。



ヒロシ「イロオニするもの、この指」



 むし。ムシ。無視。



ヒロシ「なぜだろう、みんな僕を無視する。遊んでくれないよ。シカトするやつは人間のクズだって、あの国民的キャラが激怒していたのを知らないのか!」



マルぼん「それはキミが、今年で45歳になるおっさんで、しかも今の格好が生まれたままの姿だからじゃないかな」



ヒロシ「45歳無職の僕が公園で遊んではいけないと言うのか! なぜ日本はこんな国になった! 誰が政治しとるのか!! 」



マルぼん「45歳無職なのが悪いのではなくて、全裸なのが悪いの!」



 全人類がやさしくなれば、45歳無職が公園で子どもと遊ぶことだってできるようになるハズなのです。来たれやさしい時代。



ヒロシ「生まれた姿のままでいることがなぜいけないの?」



マルぼん「いけないことはないだろうけど、今は親が子を、子が親を殺す修羅の時代だぜ。白眼視はされるだろうよ」



ヒロシ「遊びたい遊びたい、公園で遊びたい! 遊ぶ相手がほすぃ!」



マルぼん「仕方ないな。いつまでも子供心を忘れないのは、君の長所でもあるし。『この指とまれ棒』。この棒を高らかにあげると、誰かが必ず遊びにつきあってくれる」



ヒロシ「やったー!」



 さっそく、『この指とまれ棒』を高らかにあげるヒロシ。



ヒロシ「これで鬼ごっこやかくれんぼ、タカオニで遊ぶ仲間が集うわけだね。あ、さっそく誰か来たぞ」



近隣住民「おまわりさん、あいつです! 全裸で子供に声をかけている男は、あいつなんです! 早く捕まえてください! 子供たちが傷つくその前に! なんなら殺してもかまわないです。国民はあなたの味方です」



警官「よし、まかせろ! 本官がこの銃で、ただの一発でしとめてやる!」



ヒロシ「うわー、国家権力だ!」



 ヒロシは警官に捕まらないように逃げ出します。追いかける警官。ヒロシは、とっさに近くの草むらに身を潜めました。



警官「どこだ、どこにいる。早く姿を現して、本官に撃たれませい!」



ヒロシ「ガタガタガタ……」



警官「ん。そこいるな。そこにいるんだな。よし、死なす。よし、逝かす」



ヒロシ「うわー!」



 あ! 裸のヒロシが草むらから飛び出してきた! 追いかける警官。ヒロシは近くにあった電柱にとびつくと、ものすごい勢いで、一番高いところまで登りきりました。



警官「むむむ。本官は高い所が苦手なのだ! 降りてこい」



ヒロシ「ごめんこうむるー」



 警官は「降りてこい」と叫ぶのみ。ヒロシもずいぶん無理をして登ったようで、しんどそうです。



 そして10秒後。



ヒロシ「あっ」



 ヒロシはついに力尽き……地面へと。所詮、人生は長い遊びよ。遊びが終われば、眠るだけ。朝が来るまで眠るだけ。朝はいつだ。朝はまだか。そして今日も、夜はあけない。あけない夜はここにある。

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