ヒロシのプロポーズ大作戦

あれから数年がすぎました。ヒロシやルナちゃん、ナウマン象に金歯らいつもの連中も、純粋な子供だった時代は、とうの昔のこととなり、今は立派な大人であります。



 ルナちゃんは、信仰している宗教の青年部でバリバリ活動、選挙前はなぜか大忙し。教団ないでの地位もあがり、「先生」と呼ばれる事も増えたとか。その後色々あって、昨年死去。



 ナウマン象は、自慢の腕力を生かして運送業をはじめました。きめ細かなサービスはなかなかの評判らしいです。その後色々あって、昨年死去。



 金歯は、傾いた父親の会社を見事に建て直し、新社長として大活躍。時代の風雲児の呼び声も。その後色々あって、昨年死去。



 ヒロシですが、普通に生きています。なんと結婚を前提としたお付き合いをしている恋人までいます。



ヒロシ「そんなわけで、いよいよ彼女に、その、プロポーズをしようかと思うんだ。で、この通り婚約指輪も手に入れた!」



マルぼん「決して多くはない収入のキミが、よく指輪を手に入れることができたね」



ヒロシ「実は親戚のおじさんが、結婚祝いとして、999円で売ってくれたんだ」



マルぼん「よかったなぁ。あ、そんなことより彼女が来たぞ」



ヒロシの恋人・広野嫁子さん「ヒロシ、話ってなに?」



ヒロシ「あ、あの実は、実はその。こ、この指輪を受け取って欲しいんだ!」



広野嫁子「え、こ、これはまさか。こ、こ、こ、婚約指輪?」



ヒロシ「受け取ってもらえるかな」



広野嫁子「うん。もちろんだよ……ふつつか者ですが、これからもよろしくお願いします。……大好きだよ、ヒロシ」



マルぼん「ひゅーひゅー」



広野嫁子「ところでね、この婚約指輪。もちろん、給料の三ヵ月分だよね?」



ヒロシ「へ?」



広野嫁子「実は私『給料三ヵ月分の値段の婚約指輪を用意しない、乙女の夢を土足で踏みにじる男の指を容赦なく切断し、どこぞへ送りつける神聖儀式を行う会』の会員なの」



マルぼん「怖っ!」



広野嫁子「もちろん、私の好きなヒロシさんの用意してくれた婚約指輪は、給料の三ヵ月分よね?」



ヒロシ(言えやしないよ。999円だなんて言えやしないよ!)



ヒロシ「マルぼん、なんとか、なんとかしてえ」



マルぼん「『つじつまあわせスイッチ』。このボタンを押せば、なんでもつじつまがあう」



ヒロシ「ポチっとな」



 藁にもすがる思いで、『つじつまあわせスイッチ』を押すヒロシ。すると、ヒロシの勤め先の上司が現れました。



上司「会社つぶれた」



ヒロシ「えー!?」



上司「つぶれただけでなく、のっぴきならない事情で、元社員は全員、某所で強制労働だ」



ヒロシ「ええー!?」



 そんなわけでヒロシは、国内某所の兵器製造工場(おおやけには存在しないことになっている)で、施設内についた放射能を何の装備もつけずに雑巾でふき取る強制労働に従事することになりました。



 わずかながら、給料もでます。その額、1ヶ月で333円。

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