折れ! マジで折れ! 恋愛フラグ

 一説には、煩悩と同じ数だけあると言われるナウマン象の欠点。そのひとつが「異様に惚れっぽい」というところです。恋の対象が女性だけならまだいいのですが、老若男女をはるかに飛び越え、動物植物や無機物にまでその好意は向けられていました。先日など、夕食にでたビーフストロガノフに一目ぼれして、「俺とビーフストロガノフの結婚を認めなければ、死ぬ!」と騒ぎ、その熱くせつない想いで、ついに国をも動かして『人間と食べ物の結婚を認める法律』まで作らせる始末。



 そんなナウマン象の、今度の恋のお相手は、ヒロシの昼飯のカレーライス。



ナウマン象「色っぽいカレーライスだ! 抱きたい!」



ヒロシ「な、なんだよ。カレーは僕の大好物だぞ。ゆがんだ性の捌け口にされてたまるか! 死んでも渡すものか。もぐもぐもぐ」



ナウマン象「あー! カレーライスたんを、俺の大好きな、俺の愛する、俺の子供を産むはずだったカレーライスたんを完食しやがったー! ちくしょう、もう殺す! 放課後空き地で決闘だぁ!」



ヒロシ「とてもじゃなけど勝てないよ! マルぼん、なんとかして!」



マルぼん「時代は不意打ちだよ、ヒロシくん。この『ドリル帽子』を被るんだ。この帽子を被ったら、地下を自由に動き回ることができる。地下を移動してナウマン象のうしろにまわりこみ、この鈍器のようなもので一撃だっ」



 ヒロシは『ドリル帽子』を被ると、さっそく地下に潜り、決闘の行われる空き地へと向かいました。



ヒロシ「ナウマン象のやつ、僕が来るのをいまや遅しと待ち構えているな」



 マルぼんの企てた策のとおり、ナウマン象の後ろへと回り込むヒロシ。そっと地中からでてきて、鈍器のようなものを振り上げ



ナウマン象「うぎゃ!」



ヒロシ「あ、勢い余って、ナウマン象の命を……」



金歯「あ、人殺しでおじゃる!」



マルぼん「人殺しだー! 誰か警察を読んで! 110番! 110番!」



ヒロシ「目撃された! やばい!」



 ヒロシ、ドリル帽子や鈍器のようなものを投げ捨てると、空き地から走り出します。



マルぼん「自首しろ! ヒロシ、自首するんや! 今ならやり直せるさかい!」



ヒロシ「死んでもごめんだ! とんずらー!」



 町には手配写真が貼られまくっていますが、それからヒロシの姿を見た人はいません。夜の繁華街で見た人がいるとかいないとか。関西で働いているのを見るのか。



 マルぼんは、ヒロシを地下に潜ますようにした『ドリル帽子』の効果は絶大だと思いました。

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