魔王とナウマン象
ヒロシ「あ、隣町の魔王軍の兵士だ」
魔王軍兵士「ドキナ、イエロモンキードモ! コノ空地ハ、イマカラ我々ガベースボールノ練習ニツカウンダ。HAHAHAHA!」
金歯「ひどいでおじゃる。空き地はみんなの(正確には朕ひとりの)ものでおじゃるのに!!」
ルナちゃん「ナウマン象くんはガキ大将で、ガキ大将は地域の子供たちを、たとえ親を殺してでも助けるものなんでしょ。魔王軍のモンスターくらい、指先ひとつでダウンさせなさいよ」
ナウマン象「そんなこと言われても」
魔王軍兵士「ホラホラ、ボールノカワリニ手榴弾ダヨー。HAHAHA! 死ノ千本ノックサー!!」
一同「ぎゃー!!」
ナウマン象「そんなわけで多数の死傷者を出す大惨事になったんだ。みんなを守れなかった俺は、一両日中に処刑されることが学級会で決定した」
マルぼん「そりゃキミが悪い。日ごろから、奪いたいだけ奪い、食いたいだけ食い、眠りたいだけ眠り、犯したいだけ犯し、やりたいだけやるという人生を送っているんだから、いざというときくらい、みんなを守らないと。死んで侘びなよ。死んで。遺族も黙っちゃいないよ」
ナウマン象「あたい……あたい……死にたくないよぉ」
マルぼん「処刑されないためには、みんなの信頼を回復する必要があるね。それにはキミ1人で魔王軍と戦って勝たなきゃ」
ナウマン象「うう……そんな、1人じゃ無理だよぉ……」
マルぼん「1人じゃなかったら勝てるのかい? それならよい機密道具があるよ」
隣町にある魔王軍駐留基地をナウマン象が滅ぼしたのは、翌日のことでした。
ヒロシ「すげえや、すげえ。さすがナウマン象!! 金歯やルナちゃんも喜んでいるよ。空で」
金歯とルナちゃんの家を天にかざすヒロシ。写真のなかのルナちゃんの笑顔が素敵。抱かれたい。
ヒロシ「しかし、よく1人で勝てたよね」
ナウマン象「この人たちのおかげよ」
ナウマン象のうしろには、なんか年も性別も職業も人種もバラバラな、多種多様な人たちが勢ぞろいしていました。
ナウマン象「この人たちはね、あたいの応援団さ。マルぼんに出してもらった『不特定多数の人を自分の応援団にする機密道具』で、応援団になってもらったの。ココロをこめた応援のおかげで、あたいは勇気に満たされた。勇気さえあれば、どんな強大な力にも勝てるものなのよ。あとは愛。愛を信じること」
応援団「なぁ。もう応援することはないの?」
ナウマン象「ん? そうだねえ、もうないわ。一同解散」
応援団「冗談じゃねえ。こっちは仕事を休んできているんだぞ」
応援団「私は死にかけの父を放置してきたわ!!」
応援団「俺だって島に行くはずだったのに」
応援団「もっと応援させろ!!」
ナウマン象「そ、そんなこと言われましても……!!」
応援団「この野郎、なんでもいいか応援させろ!!!」
ナウマン象「や、やめてください!! ひぃ!!」
応援団「それ、人の応援を無視するような輩は放り投げてしまえ」
ヒロシ「ああ、そちらは地雷地帯!! あぶないっ」
爆音とともにナウマン象が吹っ飛びました。
ナウマン象「あたいを見ないでー!! 死にゆくあたいを見ないでー!!」
で、病院。ナウマン象が懸命に生きようとしている集中治療室。
ヒロシ「ドクター、ナウマン象死にますか? 死にますよね?」
医師「メチャ危険な状態ですな。超ヤバイ。でも、もう五時で帰る時間だから、僕には関係ありませぬ。ばいばいきーん」
集中治療室の前では、ナウマン象応援団のみなさんが勢ぞろいし、生きるという戦いを続けているナウマン象にエールを送っています。
応援団「フレーフレーナウマン象!!」
応援団「フレーフレーナウマン象!!」
この機密道具をだして、本当に良かったとマルぼんは思います。みなさんには、応援するべき人や応援してくれる人はいますか?
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