ヒロシと未亡人

ヒロシ「隣の家の未亡人萌えなんですけれども」



マルぼん「そうか。がんばれ」



ヒロシ「そうかじゃなくてだな、少しはだね、協力をだね」



マルぼん「そうか。がんばれ」



ヒロシ「うんとね、あのね、平安時代にはね、通い婚という風習があってね」



マルぼん「ようするに夜這いしたいというわけですか。夜這いくらい独力でお願いしますよ、坊ちゃん」



ヒロシ「やだやだっ夜這いしたいよ! 夜這い夜這い! 日本の古き習慣よみがえれ―!! 夜這い夜這いー!!」



マルぼん「だから独力でなんとかしろや」



ヒロシ「独力でしたいのはやまやまなんだけど、未亡人の家の庭には彼女が防犯のために配置した、ドーベルマンや、虎や、ドーベンウルフや、熊や、目から殺人レーザーを発射する二宮金次郎像や、戦闘メカや、刃物を持った不審な男性や、猟奇殺人犯や、足元が半透明の赤ん坊を持った女性(近づくと消える)や、「助けて」というか細い女の声が中からするトイレや、「せんぱぁい」という女の声が入り混じってしまった音楽CDや、子泣きじじいや、在未亡人宅アメリカ軍や、人を人とも思わぬ所業を繰り広げることができる拳法家や、痴漢や、泥田坊や、人権団体や、過激な思想をもった未亡人保護団体なんかが大量に存在していて、簡単にたどり着けそうにないんだ」



マルぼん「普通に行くのが無理ならば、普通ではない方法で行くしかないね」



 そう言って、マルぼんはスコップをヒロシに渡しました。



マルぼん「こいつは100万馬力のスコップ。ものすごい勢いで穴とかを掘れる。こいつでうちから未亡人の家へと続くトンネルを掘るんだ」



ヒロシ「よしっ!」



 ヒロシはさっそく、庭に大沼宅発未亡人宅行のトンネルを掘りはじめました。



ヒロシ「どんどん掘るぞ、どんどん掘るぞ!」



 100万馬力スコップの効果は絶大で、すンごい勢いで穴を掘っていきます。



ヒロシ「夢のトンネル開通まで、あと少しィ!」



 掘りすぎたせいで、大沼宅と未亡人宅が轟音とともに地下に沈んだのは1時間後のことでした。瓦礫のなかからヒロシが救出されたのはさらに3時間後。担架で運ばれるヒロシに近づく、1人の男。



男「警察の者ですが、いろいろと聞きたいことがあります。いろいろと。署までご同行ねがいまーす。」



 マルぼんは、ヒロシの人生もトンネル(出口はみえない)に突入させてしまった『100万馬力スコップ』の効果は絶大だと思いました。

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