暴力の滅ぶ日

ナウマン象「うう。なんだか、社会に対してどす黒い感情が湧いてきたぞ。このまま放置しておけば、俺はいずれ人々に対してとんでもないことをしでかしてしまうかもしれない。早いとこ、誰かを殴るなりして気晴らしをしないと……」



金歯「1000万円の小切手のぉ~旅がらすぅ~♪」



ナウマン象「金歯の野郎、鼻歌まじりで楽しそうに歩いていやがる。よし、あいつを殴って気晴らしだ! おい、金歯……」



 ナウマン象が金歯に近づいた瞬間、ついさっきまで姿も見えなかった黒服の男たちが突然現れました。黒服たちは、どこからか取り出した銃をナウマン象に向けます。



黒服「それ以上坊ちゃまに近づいたら、死なす」



 失禁までして怖がって、速攻で逃げるナウマン象。



ナウマン象「ううう。ますますどす黒いものが心のなかにうずまき始めたぞ。気晴らししないと、気晴らししないと」



ルナちゃん「今日も1日元気にいられることを偉大なる神とその代弁者である我等が尊師に感謝」



ナウマン象「あ、ルナちゃんだ。よし、ルナちゃんでいいや」



 『俺は年寄りや女子供でも殴れる、新世代のガキ大将さ』と自負するナウマン象(この自負のせいで、親にどこかの施設へ連れて行かれて『なぜ人を傷つけてはいけないのか』というビデオを見せられた経験アリ)は、袖まくりしつつルナちゃんに近づきます。



ルナちゃん「あら、ナウマン象さん。今日も1日元気にいられることを偉大なる神とその代弁者である我等が尊師

に感謝している?」



ナウマン象「そんなことより……」



 ナウマン象がルナちゃんに手を上げようとしたその瞬間、ついさっきまで姿も見えなかった幸薄そうな人たちが

突然現れました。幸薄そうな人たちは、ナウマン象を取り囲みます。



幸薄そうな人A「あなたの血、汚れていますよ。私に3分ほど時間をくれたら、聖なる祈りでたちまち浄化を」



幸薄そうな人B「あの、とても立派な考えを持った候補者の人がいまして、是非とも紹介したいと」



幸薄そうな人C「ちょっと手相をみせてください。ああ、このままじゃあなた、癌になりますよ」



 精神的に追い詰められたナウマン象は、速攻で逃げ出しました。



ナウマン象「ちっくしょう。金歯にもルナちゃんにもボディーガードがいて手がだせねえ。このままじゃ、俺の内に秘められたどす黒いなにかが、なにかが」



 悶えるナウマン象。と、そこへヒロシが歩いてきました。カモネギとはまさにこのこと……。



ナウマン象「おーい、ヒロシィー」



ヒロシ「あ、ナウマン象どうしたんさ」



ナウマン象「俺が人様に迷惑をかけちまうような人間になる前に、気晴らしに殴らせろ!」



ヒロシ「えええ?!」



ナウマン象「逝けええ!」



 ナウマン象がヒロシに殴りかかろうとした瞬間、黒服の男たちが現れました。ナウマン象を取り押さえる黒服たち。



ナウマン象「こ、こいつらは、もしかしてオマエのボディーガード?!」



ヒロシ「その通り。ルナちゃんと金歯から『ナウマン象が社会に対する憤りを抑えきれず、触るもの皆傷つけようとしている状態だから気をつけろ』という連絡を受けた僕は、先手をうち、マルぼんに機密道具を頼んだのさ。

『ボディーガードベルト』。このベルトをつけると、危険な目にあった時、屈強な人たちが身の回りを守ってくれるようになる」



ナウマン象「ち、ちくしょう!」



 退散していくナウマン象。



ヒロシ「あははは。ざまあみろ。いやーそれにしても、強いですね、黒服のみなさん」



黒服「商品に傷でもついたら大変ですからね。人体って存外もろいし」



ヒロシ「……」



ママさん「ごめんね、ヒロくん。私ってば久しぶりにやらかして、その、あなたに尻拭いを」



黒服「さあ、こちらの車へ。なあに、手術を行なう国まであっという間だから大丈夫。麻酔もサービスしちゃうし。内臓が少し足らなくても、意外に生きられるもんです」



マルぼん「ごめん、さっき渡したの、『ボディーガードベルト』じゃなくて、ただのベルトだった。本物はこっち!」



 マルぼんは『ボディーガードベルト』の効果は絶大だと思いました。

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