マルぼんと妊婦

マルぼんが歩いていると、若い男女が路上で「どうしようどうしよう」と悩んでいる様子。女性のほうはお腹か大きく、どうも妊婦さんのようでした。困っている人を見過ごすことができない性分のマルぼんは、「いかがしました」と話しかけてみました。



男「じつは嫁がもうすぐ子供を産みそうなのですが、お金がなく、産婦人科とかに行けないのです」



マルぼん「マルぼん、助産婦をやっていたことがありまして、そのときの知り合いがすべて無料の産婦人科を経営しておりまして、よければそこを紹介しましょうか」



男「マジっすか! ぜひともお願いします!」



 マルぼんは噂の無料産婦人科へ夫婦を連れていきました。ちょうど着いたところで、奥さんの陣痛がはじまりました。



男「うう。がんばれ、がんばるんだ、里美」



マルぼん「大丈夫です。おくさんは、里美さんはゲンキな子を産みますよ」



男「しかしなんでこの産婦人科は無料なんですか」



マルぼん「最近、無料のコピー機とかジュースの自動販売機があるでしょ。あれと同じです。スポンサーに商品の代金をもってもらうかわりに、こちらは広告スペースを提供するという」



男「広告スペースって、いったい」



「おぎゃーおぎゃー」



男「あ! 生まれたらしい!」



院内放送「ただいまの出産は、『ふたりの営みを応援するラブホテル ふれ愛YOU!』の提供でお送りしました」



 数日後、マルぼんが件の産婦人科を訪れると、あの夫婦が子供を連れて定期健診に訪れていました。



マルぼん「おやどうも。お子さんの様子はどうですか」



男「おかげさまでゲンキです。これもマルぼんさんのおかげで」



看護師「山川ふれ愛YOU! ちゃん、山川ふれ愛YOU!ちゃん、診察室へどうぞ」



男「ああ、うちです。それじゃあ、また」



 男はふれ愛YOU! ちゃんを抱きかかえると、同じタイミングで呼ばれた、山田死霊のえじきちゃんや、鈴木淫乱小姑くんずほぐれつちゃん、田中ラーメン刑事の事件簿16美人OL温泉ミステリーツアー連続殺人事件ちゃん、中村もしものときは慌てずにやすらぎシティホールほほえみちゃんとともに診察室へ入っていきました。

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