金歯の生まれた日

 今日は金歯の誕生日。町の人口の三分の二が金歯コンツェルン関連の会社で働いている微笑町は、住民総出でお祝いをするべくこの日は祝祭日でお休みとなります。



 ただ休みというだけではなく、金歯コンツェルンから米の飯が振舞われるのも魅力のひとつ。日ごろから粟かひえか芋以外のものを食べることを禁じられている町民にとっては、まさに命の洗濯となる日なのです。



ヒロシ「いやー休日最高だねー」



 休みを利用して、積みゲーを消化していたヒロシが言いました。



ヒロシ「土日以外の休みって、本当に最高。ねえ、マルぼん。自由に祝祭日を制定することのできる機密道具とかない?」



マルぼん「あるよ。マルぼんの尊敬するある人も『6月に休日がないのはいやなので、休日を作りたい』と『ぐうたらの日』という休日を制定したりしたんだよ」



『祝祭日製造機』。自由に祝祭日を制定できる機密道具です。



マルぼん「たとえば、4日と入力する。祝祭日の種類は、そうだな、偉い人の誕生日。はい、スイッチオン」



ニュース『金歯コンツェルン総帥・ロドリゲス・オペラグラス氏に新しい子供が誕生し(中略)来年度より、この日は祝祭日とします」



ヒロシ「すごい! 本当に祝祭日ができたぞ! よし、どんどん作ろう! とりあえず、6月13日を祝祭日にしてみよう!」



マルぼん「はいはい。で、祝祭日の種類は? 誰かえらい人の誕生日? 海とか自然とかに感謝する日? あ、ランダムで設定できたりするよ」



ヒロシ「ランダムいいね。それでいこう。どんな祝祭日ができるか楽しみだね」



マルぼん「そうだねえ」



 そのときでした。前の家が爆発したのは。



ヒロシ「ななななんだー!?」



マルぼん「爆弾が落ちたー!?」



ヒロシ「ぎゃあああああああああ」



ニュース『ロドリゲス・オペラグラス氏が新たに誕生されたお子様を跡取りに指名し、それを不服に思った金歯氏が謀反を…』



マルぼん「戦争だ!! ぎにゃああああああ」



 そしてまた爆発。また悲鳴。



 微笑町を哀しみと憎しみで包み込んだ戦争が終結したのは、1週間後の6月13日。金歯一族はことごとく滅び、彼らに縛られていた人は、結果的に解放されました。自由を得ました。しかし、多くの命が星となりました。



 政府はこの日を解放の日という祝祭日とし、戦いで命を落とした人を偲ぶことにしたのでありました。完。

 

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