サイコかおまえは
今日は週に一度の配給の日です。町が飢えている町民たちに、豚汁を振舞ってくれるのです。配給が行われる学校の校庭には、空のお椀を持った町民たちが長蛇の列を作っています。
ナウマン象「お願いします」
役人「町民番号47789…ナウマン象か。貴様に配給される豚汁は、250mlだな」
ナウマン象「えええ!? な、なんでそれっぽっちなんだよ! こちとら、1週間ぶりの食事だぜ! もっとおくれよ!」
役人「うるさいやつだ。配給される豚汁の量は、町が誇るコンピューターがその人間の日頃の行動や町への貢献度から導き出した数字だ。文句があるならこうだ」
ナウマン象の分の豚汁を地面にぶちまける役人。「はわわ。豚汁さんが大変ですぅ」とうろたえ、必死の形相で
泥と混じった豚汁の具を、お椀(アニメのキャラクターがプリントされています)にいれるナウマン象。
ヒロシ「僕はどれくらい、豚汁をいただけるのだろう」
列に並んでいたヒロシは、ナウマン象を不安げに見ていました。そうこうしているうちに、ヒロシの番が来ました。
役人「貴様は、町民番号37564、大沼ヒロシか。配給される豚汁は、900mlだから、1000mlだな」
ヒロシ「え、900なのに1000いただけるんですか?」
役人「『配給される豚汁の量が900ml以上の場合、切り上げて1000mlあげてやれ』と、法律で決められているのだ」
ヒロシ「やっ、やっほう!」
飛び上がってよろこぶヒロシ。豚汁の半分を食べて残り半分は、泥と混じった豚汁だけでは満足できず「はわわ。お腹さんがぐぅ~っと鳴いているですぅ」と泣いているナウマン象に1mlあたり1000円で売りつけ、その金で飲む! 打つ! 買う!の大騒ぎ。
ヒロシ「いやー『切り上げ』ってシステムはすんばらしいね。ほんとすんばらしい」
マルぼん「あれですか、なんでもかんでも切り上げできる機密道具ですか」
ヒロシ「YES!」
マルぼん「やれやれ。『まんだらゴッコ きりあげクン』。未来の世界の人気4コマ漫画なんだけど、これを読めばなんでもかんでもきりあげられるようになる。たとえば、給料が2760円だったら、端数が切り上げられて2800円もらえる。こんな出来事が頻繁に起こるようになるんだ」
ヒロシ「むひょー!」
ヒロシは『きりあげクン』をむさぼるように、恋人同士が愛をぶつけ合うかのように、読みふけりました。
ヒロシ「これで僕は、なんでもかんでも切り上げられる人間になったわけだな」
ナウマン象「ヒロシおにいちゃん、やっぱりあの豚汁の値段はぼったくりだと思うの! だから死んで! あたしと!」
全身に大量のダイナマイトを巻きつけたナウマン象が、ライター片手にやってきました。ライターをダイナマイトに近づけるナウマン象。
爆音が響きました。
ヒロシ「ううううう」
ヒロシは重傷のようでした。マルぼんはドクターを呼びました。
ドクター「この傷じゃ、助かりませんね」
マルぼん「え、でも、生きてますよ動いてますよ」
ドクター「こんだけの怪我じゃ、死んでいるのと同じだよ。なにをしても無駄無駄。薬の無駄遣い。さいならー」
マルぼん「ヒロシー!」
マルぼんは、怪我を死に切り上げてしまった『まんだらゴッコ きりあげクン』の効果は絶大だと思いました。
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