俺がバールでおまえが凶器で

ヒロシ「暑い暑い暑い暑い。なんて暑さだ」



マルぼん「オマエの親には『そうだ、クーラーを買おう』という発想はないのか」



ヒロシ「ないと思うよ」



マルぼん「ちっ。仕方ない機密道具の力を借りるか。『冷房キャット』」



キャット「にゃー」



マルぼん「一見、単なる猫の置物に見えるこの道具だけど、置いておくだけでその場所が涼しくなるというすぐれものなのさ」



ヒロシ「なぜに猫の置物という形をとっているの」



マルぼん「猫は涼しいところを知っている、と言うだろ。『だったら猫のいる場所=涼しいところじゃねか』ということで、猫の形になったらしいよ」



ヒロシ「くだらねえ理由だな。カスみたいだ」



マルぼん「なんだと。もういっぺん言ってみろ。マルぼんは、『冷房キャット』の製作者と親戚付き合いをしているんだぜ。今までだまっていたけどマルぼんの娘は、『冷房キャット』製作者に嫁いでいるのだ! 悪口は許さんよ? 絶対に!」



ヒロシ「くだらねえ。くだらねえ。カスみたいな理由。何度でも言ってやろう」



マルぼん「貴様っ」



 マルぼん、思わず床の間にあった壷を手にとって、ヒロシの頭部をガツンと。それはもう、ガツンと。



太郎「ということが、数年前にこの家であったんだ。以来、死んだヒロシという少年の霊が出ると言う話になって、誰かが引っ越してきてもすぐに出ていくようになってしまい、今では廃墟同然なのさ」



ヒロシ(IN草葉の陰)『ウラメシヤー』



花子「それでこんなに荒れ果てたのねえ」



ヒロシ(IN草葉の陰)『ウラメシヤー』



太郎「今では立派な心霊スポットさ」



ヒロシ(IN草葉の陰)『ウラメシヤー』



花子「心霊スポット……もしかして、その少年の霊がいるのかしら。夏の昼間なのに、ここは妙に涼しいわね。背筋がゾクゾクしてくるくらい。寒いくらい」



ヒロシ(IN草葉の陰)『ウラメシヤー』



太郎「それなら、俺が……温めてやるよ」



花子「あ……」



ヒロシ(IN草葉の陰)『ウラヤマシイヤー』



 こうして大沼宅は、いつでも涼しくなったのでありました。でも、ヒロシ(IN草葉の陰)はさみしくなんかないのです。廃墟マニアとか心霊スポットマニアとかカップルとかがたくさん来てくれるから! だから、君も! あなたも! お前も! 貴様も! Youも! うぬも! おいでよ、大沼の家。



 マルぼん(ふくえきちゅう)は「冷房キャット」の効果は絶大だと思いました。

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