叔母が来た

かの子「ひさしぶりね、ヒロくん」



ヒロシ「伯母上さま、お久しぶりです、もがもが」



 ヒロシの叔母であるかの子さんがやってきました。挨拶代わりに小遣いの千円札をヒロシの口にぶちこむかの子さん。



マルぼん「ごぶさたしてます」



かの子さん「さっそく用件なんだけど」



 かの子さんはマルぼんを無視しました。昔、マルぼんはかの子さんと投資関係の仕事をしていたことがあり、億単位の損失をさせてしまったことがあるのです。これはもう、マルぼんの罪です。償っても償いきれません。ああ、どこかの女神様。罪深きマルぼんを殴って! けちょんけちょんにして!



かの子さん「これを読んでほしいの」



ヒロシ「卒業文集ですか?」



かの子さん「それの54ページに載っている作文を読んで」



ヒロシ「はいはい。『将来の夢。6年5組 飛ん田 夢清。将来の夢。将来僕は、ゲーム会社に勤めたいです。作ったゲームが大ヒットして莫大な資産を手に入れます。その資産で城(地下室つき)を建て、そこにロボットのように従順で、僕の言うことを何でも聞く奴隷のような女の子をたくさん住まわせ、「ご主人さま」と呼ばせたいです』だって。なんですか、これ。狂人の作文?」



かの子さん「それ、うちの息子の作文なの。もしもうちの夢清ちゃん(36歳。自称漫画家の卵)が将来、無実の罪(性犯)で逮捕されたとき、ワイドショーで卒業文集が紹介されて、こんな内容(将来の夢。6年5組 飛ん田 夢清。将来の夢。将来僕は、ゲーム会社に勤めたいです。作ったゲームが大ヒットして莫大な資産を手に入れます。その資産で城(地下室つき)を建て、そこにロボットのように従順で、僕の言うことを何でも聞く奴隷のような女の子をたくさん住まわせ、「ご主人さま」と呼ばせたいです)だったら、心理学者なんかに『これはまさしく犯罪者の書く内容です!』とかプロファイリングされてしまうでしょ」



ヒロシ「そうですねえ」



かの子「ただでさえ、夢清ちゃん、裸の女の子が表紙の本をたくさんもっているのに、そんなプロファイリングされてしまったら、白でも黒、無実でも有罪になってしまうわん」



マルぼん「そ、そこでなんとかしてほしいわけですなー!! よい機密道具がありますですよー!!」



 名誉挽回しようと、マルぼんは必死ですよ。



マルぼん「『なんでも校正機』。この機械になんでも好きな本を仕掛けると、好きな箇所を修正できる。修正すると、この世界に存在する全ての同じ本の同じ箇所が、同じように修正されるんです!!」



かの子さん「あら、生きる価値もない生物のくせに、気の利いたものを持っているじゃないの。さっそく使わせていただくわ」



ヒロシ「あ、なら、僕が代わりの文章書きますー」



かの子「まぁ、頼もしい!」



ヒロシ「よっし。校正完了。犯罪をおこしても『この人ってば超人格者!』とかプロファイリングされるような作文が完成したよ!」



かの子「まぁ。ありがとう、ヒロくん。夢清ちゃんも喜ぶわ。これでしばらくは『俺を漫画家にしろよ!』とか言って暴れたりしないはず」



 夢清さんが、知り合いの子供を車で連れまわした(3日間)として、逮捕されたのは数日後のことでした。



 ちょうどでかいニュースもなく、ワイドショーはこぞってこの事件を取り上げました。



司会『容疑者の卒業文集を入手しました』



心理学者『これはとんでもない文章ですよ。まさに狂人の文章です』



将来の夢 将来は、墓場の近くに住みたいです。なぜなら、死体がたくさんあるからです。死体は、いつも僕を嬲る憎らしいナウマン象や、汚いものとそうするかのように僕と接するルナちゃんのように、僕に逆らいません。僕の言うことを聞いてくれる死体と、いつまでもいつまでも、幸せに暮らしたいです。できることなら、全人類が死体になればいいのにと思います。



心理学者『もう、どこからつっこんでいいかわかりません!!』



ヒロシ「あれ、おかしいな。なんで狂人扱いされているんだろ。ねえ、マルぼん」



マルぼん「それ以上、近づくな」

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