おれは一犯おまえは十犯

前科一犯「兄貴ー」



前科十犯「なんでえ、舎弟」



前科一犯「次のお仕事なんですけど、この家なんかいいんじゃねえですか。この大沼って家」



前科十犯「そうだな。ここにしておくか。うん? 玄関先においてあるこれは、犬の像か」



前科一犯「犬の像…番犬にもなっておらんですな、ウチらも舐められたもんです!」



前科十犯「まったくだ。まぁいい、さっさと仕事だ」



犬の像「がうがうがうがうがうがうがう!」



前科一犯「うわあああ!? 犬の像が吼えた!」



前科十犯「ぎゃー!」



前科一犯「そして兄貴の腕にかみついたー!」



前科十犯「腕がー!! うーでーがー!!」



ヒロシ「ふふふ。効果抜群だねえ」



マルぼん「おうよ。『動物化スプレー』の効果は絶大だね」



 動物化スプレーは、吹きかけた物を動物にしてしまう機密道具です。たとえば、象のスプレーを筆箱に吹きかけると、筆箱が象のようになります。犬の像には『子供に噛み付いて処分された土佐犬』のスプレーを吹きかけたので、みごと番犬の役割を果たしたのです。



ヒロシ「しかし色々なスプレーがあるんだね。わ。昆虫や魚のスプレーまであるんだ」



『鯖』とか『アリ』とかかれたラベルの貼られたスプレーがたくさんあります。



マルぼん「竹とんぼにとんぼのスプレーをかけたら、どこまでも飛んでいったりしておもしろいよ」



ヒロシ「へえ! よし、色々試してみよう! あれ、ラベルの貼っていない

スプレーがあるよ。なんかわからないけど、なにか適当なものに吹きかけてみよう。この出刃包丁でいいや」



 吹き付けた瞬間、出刃包丁はヒロシの手を離れ、あたりを飛び回ったかと思うと、ヒロシに向かってすごい勢いで飛んできました。クリティカルヒット!



ヒロシ「ぎゃー!」



マルぼん「このスプレーは……蚊だ! 蚊のスプレーだ!」



 スプレーの力で蚊と化したハサミは、ヒロシの血を吸うのでした。

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