思い出はいつも風の中

ヒロシ「うは。うははは」



マルぼん「どうした、不気味な笑い声をだして。とても不快だよ。死にたいの? 殺そうか?殺すよ。いいね? せーのっ!」



ヒロシ「見ておくれよ、これ、今週の『マジカル番長(漫画)』なんだけど、連載開始直後にでていたキャラが久しぶりにでてきたの! うは。懐かしい! うは!」



マルぼん「この馬鹿みたいな喜びよう。『なつかしのキャラ』とやらは、人の心を色々揺さぶるらしいなぁ」



ヒロシ「思い出はいつも美しく、人を明日へと誘う道しるべとなるんだ」



ママさん「この愚か者! 給料のすべてを山羊に食わすなんて、狂っている!」



パパさん「なんだと、この豚オンナ! 食わせたのは紙幣だけ、硬貨は持ってかえってきたぞ」



マルぼん「またやっているよ、あの夫婦」



ヒロシ「いつものように険悪な様子の我が両親だけど、もしかしたら『懐かしさ』がなんとかできるかもしれない」



マルぼん「うん?」



ヒロシ「いま思いついたんだけど、タイムマシンで幼い頃の僕を連れてくるんだ。幼い頃の僕を見た両親は、懐かしさのおかげで見事仲直り!」



マルぼん「現代の自分には、両親を仲直りさせる力はないと自覚しているわけだな。でも、良い考えだと思う。さっそく、タイムマシンで過去へと行こう!」



 タイムマシンの乗り場はヒロシの机の引き出しでしたが、諸事情で場所は変更しています。現在のタイムマシンの乗り場は、ヒロシ宅の隣家に1人で住む未亡人の家にある、亡き旦那さんの衣類がぎっしりつまったタンスの上から二番目の引き出しです。



 マルぼんとヒロシはさっそく未亡人宅へ向かい、事情を知らない未亡人となぜか未亡人の家にいた町内会長(裸体)をナイフで脅かして、ロープで体を縛り、クロロホルムで眠らせるとタイムマシンで過去へと向かいました。



  ここは過去。



幼ヒロシ「カップラーメンおいしいなぁ。昨日もおとついも、三食すべてカップラーメンだったけど、おいしいからいいや。ははは。1人でも食べられるし、美味しいし、カップラーメンは最高だなぁ。ははは。あれ、涙。涙はみなかったことにして、『傷はすべて転んだ時にできた。ママやパパにはなにもされていません。おまわりさんたちの誤解です』と証言する練習をしなくちゃ」



ヒロシ「ひさしぶり!」



幼ヒロシ「おじちゃんたち、誰?」



ヒロシ「未来の貴様です」



幼ヒロシ「え」



ヒロシ「ちょっと、君の力を借りたいの。さぁ、ともに旅立とう! 未来の世界へ!」



幼ヒロシ「たすけて! 拉致られる! 拉致される!」



ヒロシ「さわぐんじゃねえ、このクソガキ!」



幼ヒロシ「ひぃ!」



ヒロシ「よし、この麻酔銃で昔の自分を眠らせて」



幼ヒロシ「きゅう」



ヒロシ「さぁ、このガキをケンカしている両親のところへ連れて行こう!」



 そんな感じで、未亡人宅のタンスの引き出しから出たマルぼんたちでしたが。



おっさん「ひさしぶり!」



 マルぼんとヒロシと幼ヒロシの目の前に、なんか包丁を持った血だらけのおっさんが立っていました。



ヒロシ「どこの犯罪者だ!?」



おっさん「未来の貴様です」



ヒロシ「え」



未来ヒロシ「ちょっと、この包丁を使って酒の席で笑えないことをしちゃってさぁ、。周りの人々、ビビリまくっているの。ほら、懐かしのキャラクターって人の心を和やかにするだろ、だから、ほら、昔の自分を連れてきて、おびえる周りの人々の心を和まそうと思って。おや、さらに幼い俺もいるんだね。さぁ、行こう!」



ヒロシ「たすけて! 拉致られる! 拉致される!」



未来ヒロシ「さわぐんじゃねえ、このクソガキ!」



ヒロシ「ひぃ!」



 ヒロシと幼ヒロシは、ブツブツとなにかをつぶやきながら包丁を振り回す未来ヒロシに拉致されて、未亡人宅のタンスの引き出しにあるタイムマシンに引きずり込まれていきました。



 懐かしさの力ってステキ、とマルぼんは思いました。

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