犯人はみなさんの心の中にいます

ヒロシ「最近さ、出かけ先で、必ずといっていいほど殺人事件に遭遇するんだ。この前なんて、トイレに行っただけで、そこに死体」



マルぼん「もう探偵になるしかないね」



ヒロシ「無理だよ。祖父が有名な探偵ってわけでもないし、薬で体が縮んでいるわけでもないし。頭だって『本当にホモサピエンス?』と疑問を投げかけられるほど悪いし」



マルぼん「いいかい、ヒロシくん。人間な、才能より努力だ。探偵になる努力と練習さえすれば、キミだって浮気調査のひとつやふたつ」



 マルぼんは機密道具『名探偵養成パイプ』を出しました。



マルぼん「この『名探偵養成パイプ』を咥え、どこか適当な建物にはいる。するとそこで殺人事件が起こっているんだ。その殺人事件には必ず、真相を解き明かすためのヒントがわかりやすく残されている。そのヒントを元にして事件を解決すればいい」



ヒロシ「それを重ねて探偵としての経験値を稼げというわけか」



マルぼん「レベルを調整できるよ。レベルを下げれば、残されたヒントはすごくわかりやすいものになる」



 ヒロシは『名探偵養成パイプ』のレベルを一番下までさげ、咥えました。



マルぼん「さぁ、不思議な旅がはじまるぜ!」



 マルぼんとヒロシは、さっそく家を出ました。



ママさん「マルちゃーん。ちょっとー」



マルぼん「なんですか、奥さん」



 ママさんが呼ぶので、マルぼんだけ家に戻りました。玄関でママさんが神妙な顔をしています。



ママさん「あの、家賃の支払いがずいぶん滞っているんだけど…」



マルぼん「……」



ママさん「そろそろ働いたほうがいいんじゃないかしら、マルちゃんも」



マルぼん「あの…」



ママさん「食費もね」



マルぼん「あ、もう少しだけ待ってください」



ママさん「先月も聞いたわ、その言葉」



マルぼん「すいませんすいません」



 マルぼん、思わずママさんにすがりついてました。



 これがいけなかった。すがりついたマルぼんの怪力で、ママさんは吹っ飛んでしまったのです。壁に激突し、動かなくなるママさん。



マルぼん「奥さん!?  奥さん!!!」



ヒロシ「まだ行かないの?」



 ガチャ、と玄関の開く音がしました。



ヒロシ「ねえ。マル…」



 パイプを咥えたまま、凍りつくヒロシ。



マルぼん「ちがう。ちがうんだ。殺すつもりは」



ヒロシ「犯人は」



マルぼん「ヒロシ!!」



ヒロシ「犯人は、貴様だ!!」



 マルぼんは『名探偵養成パイプ』の効果は絶大だと思いました。

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