アイドルとチョコレート
闇市コメコさん(19歳。アイドル。独身)は、自宅でチョコレートを溶かしています。恋人の穂戸堀サメ彦さん(54歳。時代劇俳優。既婚者)にあげるチョコレートを作っているんです。
闇市コメコ「サメ彦さん、喜んでくれるかなぁ」
サメ彦さん「お、おいコメコ」
闇市コメコ「あ、ダーリン!」
サメ彦さん「こまるよ。あんな、あんなラブレターを家に送ってこられたら! 妻に見られでもしたら」
(中略)
闇市コメコ「なによ、なによ! あたしに飽きたのなら、正直にそういいなさいよ! なにさ、なにさ。あたしバカみたい。こんなチョコレートなんて作ってさ! 」
溶けたチョコレートの入った容器をもったまま、暴れ始める闇市コメコさん。
サメ彦さん「落ち着けよ、おい、落ち着け」
闇市コメコ「これが落ちついていられるものですか! むきー!」
サメ彦さん「やめろ、やめろ、痛っ! こら、ひっかくんじゃない……やめろ!」
闇市コメコ「きゃあ!」
サメ彦さんにふっとばされた闇市コメコさん、壁にぶつかってしまいます。持っていた容器からチョコレートがこぼれ、闇市コメコさんはチョコまみれに。チョコまみれの闇市コメコさん、微動だにしません。
サメ彦さん「ああ、大丈夫か!? おい、おい、しっかりしろ……し、死んでる!」
その後、色々あってサメ彦さんは、闇市コメコさんの遺体に大量の鉄アレイをくくりつけ、微笑町近郊の海に沈めました。
サメ彦さん「この辺は魚が多い。魚は人の死体を食うというが、やはりコメコの遺体も喰うのだろうか。コメコの体についたチョコレートも食べるのかな。あははは。世の男性諸君が、喉から手がでるほど欲しがるアイドルの手作りチョコを、よりにもよって魚が食べるとはな。アハハハハハ。ハ、ハハハ………うううう……ちくしょう。ちくしょう」
数日後。
ママさん「ごはんよー。今日は焼き魚ー。なんと、微笑町近郊の海でとれた魚よー」
マルぼん「いただきますー」
ヒロシ「なぁ、マルぼん。この前の機密道具だけどさ」
マルぼん「機密道具? ああ、『夢をかなえロウ』のことか」
『夢をかなえロウ』は、ロウソクのような機密道具。このロウソクに火をつけて、ロウソクが溶けきるまでの間、ひたすらに『夢よかなえ。夢よかなえ』と念じれば、必ず願いがかないます。なんらかの形でかないます。
ヒロシ「役に立たなかったね。僕の夢はかなわなかったよ」
マルぼん「願う心が足りなかったんだよ。願う心が強ければ強いほど、より分かりやすい形で願いがかなう。願い心が足りなければ、分かりにくい形で願いがかなうの。でも、かならず願いはかなうから、安心しろよ」
ヒロシ「本当かね。全然手に入る気配がないよ、アイドルの闇市コメコの手作りチョコ。バレンタインもとっくにすぎたし」
マルぼん「キミの願いは、『カケラでもいいから、アイドルの闇市コメコが作ったチョコレートを食べたい』だったね」
ヒロシ「おや?」
マルぼん「どうしたんだい?」
ヒロシ「この魚ね、なんか、一瞬味が変わったんだ。ほろ苦いような、甘いような、そんな味」
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