ヒロシのミラクル大逆転

ヒロシ「うわーん。ボラシニコフ~!  機密道具だしてー!!」



マルぼん「ボラシニコフ?  もしかしてマルぼんのこと?  失礼な! マルぼんには西表ヤマネ子という立派な本名があるのだぞ!」



ヒロシ「ルナちゃんとこの尊師が『汝の居候の名前は今日からボラシニコフです。でないと死にますよ、貴様。内臓とか全部腐って。ゲップもとまらくなって。死にますよ』というんだよ。あ、なんで機密道具が必要かっていうと、そのルナちゃんの尊師が原因でさ」



マルぼん「宗教ネタはもういいよ。このネタやって以降、見知らぬ男女が家の周りうろつきだしたりするんだ。だから勘弁してよ。しろよ、勘弁」



ヒロシ「ルナちゃんとこの尊師、最近空中浮遊の奇跡を起こせるようになったらしいんだけど、その空中浮遊を見せてもらったら50万円の布施を要求されたんだ。そんな大金、臓器売らないと用意できないよ」



マルぼん「売ればいいじゃん。余った金で焼肉いこう。焼肉。ママさんもパパさんも泣いて喜ぶよ」



ヒロシ「いやだよ!  どこの世界に、子供の臓器の代金で焼肉食べて喜ぶ親がいる…って、案外いそうだよな。親が子を、子が親を殺しまくるカオスな21世紀だし。あ、それはそうと、内臓と焼き肉の等価交換、嫌だからね!」



マルぼん「んー。その空中浮遊は奇跡という触れ込みなんだよね? 奇跡じゃなかったら50万円の価値がなくなるわけだ。それなら…」



ヒロシ「出してくれるんだね!」



マルぼん「『偉人召喚マシーン』。これは歴史上のあらゆる人物を召喚できるマシン。これであいつを呼ぼう。奇跡破壊人のあいつを!」



ヒロシ「奇跡破壊人!!」



マルぼん「あの男…『奇跡殺しのネラチョンペ』を!」 



ヒロシ「奇跡殺しだって!? それはいかなる人物なの、ボラシニコフ!」



マルぼん「ネラチョンペ氏は、未来科学研究所の所長。『この世に不思議なことなど存在しない』『奇跡なんてない』『おこらないから奇跡っていうんですよ』と、ありとあらゆる超常現象に科学という名の刀で斬りかかり、真相を暴きだした人物なんだ。残念ながら、別れ話のもつれから交際相手といざこざになり、殺されてバラされて山に埋められてしまったんだけど、こいつなら、空中浮遊の謎も暴いてくれるはず!」



ヒロシ「うわ。話を聞いただけでも頼りになる存在! 僕が女なら抱かれてもいいかも!」



 そんなわけで、マルぼんたちは『偉人召喚マシーン』でネラチョンペ氏を召喚しました。



ネラ氏「ふむ。その空中浮遊の謎を我輩に解いてもらいたいのだな。OK。我輩の力でその奇跡の真相、暴いてくれよう」



ヒロシ「さすが先生!」



 そんなわけで、マルぼんとヒロシとネラチョンペ氏はルナちゃんの尊師がいるという町内のサティアンへと向かいました。そこでは、ヒゲのおっさんが座禅をしながら宙に浮いていました。



尊師「修行~修行~」



ルナちゃん「飲むと幸せになる尊師の入った風呂の残り湯はこちらで売っていますよ。一本五万円です」



信者「幸せになるハンコとツボもこちらです」



ネラ氏「謎は全て解けた!」



一同「なんだってー!?」



ネラ氏「これは空中浮遊なんて奇跡ではない。このヒゲ面は、元から飛べる人間だったんだ。鳥が飛び、魚が泳ぐのと同じことなのだ。だから、奇跡でもなんでもない、不思議でもなんでもない!」



尊師「バレたか。私はかつて地球上に存在した天空都市ズンドコキヨシブシッブシッに住んでいた天上人の生き残り。天上人は生まれつき浮くことができるのだ」



信者「そんな! われわれを騙していたのか! 私刑や私刑!」



尊師「ぎゃー」



ヒロシ「さすがネラ氏! 最高最高! これで50万は無事だ!」



ネラ氏「ははは。ワガハイをあがめろ。そして靴を舐めろ。ははは」



ママさん「ヒロくん!  大変なことがおこったわ!」



ヒロシ「なんだい、お母さん」



ママさん「この前受けた全国模試、ヒロくんってばなんと5位!」



ヒロシ「な、なんだってー!? 奇跡だ! 奇跡!」



マルぼん「本当はそこそこ良い点を取れるのに、『ちょっと不思議な生物と同居している小学生』という立場にあるという理由だけで、担任教師が強制的に0点にしてしまうヒロシが全国5位!」



マルぼん「ふしぎな話もあるもんだ!」



ヒロシ「奇跡! 奇跡! 奇跡!」



 気がついたときにはもう遅い。ネラ氏は、ヒロシの首筋に注射をしていました。崩れ落ちるヒロシを乗ってきた車のトランクに押し込めるヘラ氏。



ネラ氏「奇跡なものか、不思議なものか。こいつの脳を調べれば、謎は全て解けるはずだ。いや、必ず解けるのだ。運転手さん、脳の手術とかの手術も余裕で可能な、人を人とも思わない所業で有名な某研究所へ!」



 さようならヒロシ。

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