ハンドメイド

 よせばいいのに、金歯宅へ遊びに行ったヒロシとルナちゃん。そこで繰り広げられるのは、自慢の嵐。自慢の嵐。大正桜に自慢の嵐。



金歯「ほら、このタンスをご覧。これは、子供を狙った殺人犯ばかりが収監されるサイハテブリズンで、受刑者が作業の一環として作ったタンスなのでおじゃる。むろん、手作り!」



金歯「朕が着ているこの服は、痴漢で捕まったやつのみが収監されるエクスタシープリズンの囚人が作ったもの」



金歯「朕の家にあるものは、みーんな手作りなんでおじゃる。ひとつひとつ、心をこめて作られた、手作りばかりなのでおじゃる」



金歯「どうせ、うぬらの家にあるものは、機械のパワーで大量生産された粗悪品でおじゃろ。温もりも何も感じない、文明社会の負の遺産ばかりでおじゃろ?悲しいね。せつないね。生きててさびしくならないでおじゃるか?」



ルナちゃん「どちくしょう!! うらやましいー! 私も、身の回りのものを手作り品で固めて、人の温もりに包まれた生活を送りたーい。でも、手作りのものを買う経済的余裕、皆無ー(カネがあったらお布施するから)。いろんなものを作れる男の人ってかっこいいー(ちらっ)」



ヒロシ「ルナちゃんが僕に期待しておられる。メインヒロインが僕に期待しておられる!」



 フラグをたてるチャンス、到来だよ! 御帰宅したヒロシさん。当然、マルぼんに泣きつきやがります。



ヒロシ「不器用な僕でも、なんでもかんでも手作りできるようになる道具だしてー!!」



マルぼん「まかせな」



 そんなわけでマルぼんが出した機密道具は



マルぼん「『ハンド・メイド・フィギュア』~」



 手のひらサイズの、小さなメイドさんフィギュアでした。



マルぼん「こいつを置いておくと、ものすごい勢いで、なんでも手作りできる技術が身につくんだ『ハンドメイド』と『メイドさん』をかけた、マルぼん渾身の機密道具さ」



ヒロシ「パクリやん。『HAND MAID マイ』の続きを、いまだに待っている僕をなめてんの? ブチ死なすよ?」



マルぼん「ごめんなさい」



 パクリだけど、効果はオリジナルです。念のため。



マルぼん「とりあえず今夜一晩、枕元にでも置いておけば、すこしづつ効果が現れるはずだ」



ヒロシ「よし! ルナちゃんフラグ、ゲットだぜ!」



 そんなわけで翌朝。



マルぼん「おい、起きろ」



ヒロシ「なんだよ……今日は登校拒否だよ、登校拒否。僕は義務教育に叛旗を翻したアウトローを気取るって今決めたんだ」



マルぼん「いいから起きろ。そして手を見てみろ」



ヒロシ「ったく。なんだよ……。って、ああ!?」



 なんということでしょう。ヒロシの手が、なんといいましょうか、「親と子が肩を寄せ合い、笑いながら楽しめるブログ」を目指す『マルぼんと暮らす』にはそぐわない、わいせつ物、でも、人類の繁栄のためには欠かせないアレ。「ち」で始まったりとか、「ぺ」で始まったりとか、「だ」で始まったりとかする、アレと化していたのです。



 しかも両手とも。



ヒロシ「ふはっ! なんだよこれーこれー!!」



マルぼん「手にモザイクがかかる道具だしてやるから、残りの人生、常に笑顔を忘れぬように生きろ」



ヒロシ「そういう努力はするつもりだけど、なんでこんなになっているんだよー!!」



マルぼん「『ハンド・メイド・フィギュア』の効果さ。なんでもかんでも手作りできるようになるんだ。そりゃ子供だって手で作るようになるさ」

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