ヒロシのウキウキ水泳大会

金歯「うちのパパが所属するヌーディスト地下サークル専用のビーチが今日海開きなんだ」



ナウマン象「ヌヌヌヌヌヌヌヌヌーディストビーチ!? 俺も行きたい!」



ルナちゃん「誰もが生れたままの姿! 素晴らしいわ金歯さん! アタシもお供させて!」



金歯「もちろんさ。2人は無料で、招待どころか、サークルのVIPメンバーにもしてあげるよ。あ、ヒロシはダメだからな。泳げないし」



ヒロシ「マルぼん! 泳げるようになる機密道具出して!」



帰ってくるなりマルぼんに泣きつくヒロシ。原因は上記のようなことがあったからなのですが、ヒロシになんでもできるようになって欲しいマルぼんは、『不沈海パン』という機密道具を用意しました。



マルぼん「こいつを装着すれば、水に入っても沈まずに浮いたままになる。これで溺れる心配がなくなるから、泳ぎの練習をすればいいんだ」



ヒロシ「すごいやマルぼん! よし、僕は『不沈海パン』で色々な泳ぎをマスターするぞ。そして、金歯どもが発狂して山奥の施設で余生をすごすことになるくらいの勢力ヌーディスト組織を築いてやるンだ。僕は裸界(らかい)の王になる。裸王になってみせる! 人類よ、服を脱ぎ捨てろー! 人類よ、アダムとイブに戻れー!」



 興奮して大声で叫ぶヒロシ。そんなヒロシを、マルぼんは頼もしく見つめるのでした。



 数時間後。マルぼんとヒロシはさっそく泳ぎの練習をするべく家をでました。すると、なにか様子が変。近所の人々の、ヒロシを見る目がまるで汚らわしいなにかを見るそれと同じなのです。マルぼんは、ヒロシの部屋の窓が全開なことに気づきました。ヒロシの裸王宣言、近所に筒抜け。



近所の人A「また大沼さんとこのヒロシくん…ひそひそひそ」



近所の人B「うちの子を近づけさせないようにひそひそひそ」



近所の人C「町内会にかけあって、いっそ町からひそひそひそ」



 さすが『不沈海パン』。水に浮く前に、近所からヒロシを浮かせてしまいました。ヒロシはきっと泳げるようになると、マルぼんは確信しました。



 その後、白い眼にも負けず、『不沈海パン』で、水泳名人を志すヒロシ。その心意気はたいしたもので、あっという間にクロールや平泳ぎをマスターしてしまいました。ところが、無理がたたったのか『不沈海パン』は破れてしまい……



ヒロシ「なんてことだろう。マルぼん、新しい『不沈海パン』を出してよ」



マルぼん「その必要はないよ。なぜなら、『不沈海パン』なんて機密道具はこの世に存在しないから。それは、ただの中古の海パンさ」



 驚くヒロシ。実は今回の件、ヒロシが本当に泳げるようになるためにマルぼんと金歯たちが仕組んだプロジェクトだったのです。



ルナちゃん「ヒロシさんは水を怖がって、自分は泳げないと思い込んでいただけなの」



ナウマン象「その証拠にほら。立派に泳げるようになったじゃないか」



金歯「泳げるようになったからには、ヒロシもボクらヌーディスト地下サークルの一員さ」



 いつのまにか現われた金歯や、ヌーディスト地下サークルの皆さんが、ヒロシを胴上げし始めました。もちろんみんな、ヌードです。



みんな「ヒロシワッショイ!」



みんな「ヌーディストワッショイ!」



ヒロシ「み、みんな! みんなありがとう! 愛しているよー!」



???「そこまでだ!」



 感動の場面に水を差したのは、いつのまにかその場を取り囲んでいた国家権力どもでした。




国家権力「国が定めたヌーディストピート以外での集団無許可ヌード行為の現行犯で全員逮捕だ!」



 次々と連行されていくヌーディストたち。



国家権力A「金歯コンツェルンの御曹司が、ヌーディスト地下サークルの主要メンバーという情報はつかんでいたのだが、証拠がみつからなかった。そんな時、御曹司の友人が泳ぎの練習をしていると聞いて、しばらく監視して様子を見ていたのだが…まさにビンゴだったな」



国家権力B「警部どののおっしゃるとおり、大沼ヒロシを泳がせて正解でしたね」



 実在しないのに、結果的にヒロシを「泳がせること」に成功した『不沈海パン』の効果は絶大だと、マルぼんは思いました。

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