マイライフマイナイフ

マルぼん「なに、ナウマン象に殴られたから復讐したい? そのための武器がほしいだって?」



ヒロシ「すげえ攻撃力のある、すげえ武器がいいんだ。すげえお手軽感覚でつかえるやつ」



マルぼん「好みの武器がでてくる『武器ボックス』。戦う直前にこの箱を開ければ、キミが望む武器がでてくるだろう」



 ヒロシはさっそく『武器ボックス』を持ってナウマン象のところへ向かいました。



ナウマン象「なんだヒロシ、また殴られにきたのか。俺を愛していると言ってみろ!」



ヒロシ「ふふふふ。こっちには、すげえ武器があるんだ。よい、『武器ボックス』オープン! いでよ、すげえ武器!」



『武器ボックス』がパカっと開くと



武器ボックス「バーカ」



武器ボックス「醜い豚」



武器ボックス「アホ」



 箱の中からでてきたのは、機械音声による暴言でした。



ヒロシ「なにこれ?」



マルぼん「こ、これはナイフだよ、言葉のナイフ!  いままでたくさんの人が、暴言というなの言葉のナイフで心や体を傷つけられきた!  誰でも使える上に攻撃力は絶大で、まさに最強の武器だ! ただ…」



ナウマン象「誰が豚だ! コロス!」



ヒロシ「ぎゃー!」



マルぼん「人によってはまるで効果がない」



 それからのち。



ナウマン象「おい、金歯! 世の無常が許せねえから殴らせろ!」



金歯「ひょえー!」



マルぼん「それでナウマン象にボコボコにされたの? で、仕返ししたいって?」



 ヒロシは前回殴られて、現在、遠方で心と体の療養中。今では青い空を見て「ソラ、キレイ」と言えるまで回復しています。そのため、金歯が次のターゲットに選ばれたようなのです。



金歯「でも朕は暴力はいやなのでおじゃる。なんかこう、己の手を血で汚さない方法で、仕返ししたいのでおじゃるよ」



マルぼん「そうさなぁ。こいつを使うか。この間の騒動で、その存在を思い出した機密道具『言葉のナイフ』」



金歯「なに、このナイフ。肝心な刃の部分がないではないか」



マルぼん「まぁ、見てなよ。醜い豚の金歯さん」



金歯「ひ、ひどい。醜い豚だなん…う…ぎゃー!」



 暴言を吐かれた金歯の額が突然スパッと切れ、血が噴出しました。



金歯「いてえいてえいてえ!」



マルぼん「『言葉のナイフ』。このナイフを向けられた人は酷い言葉で心を傷つけられると、その心の傷と同じくらいの傷が肉体にもつく。相手の心を傷つければ傷つけるほど、相手の体も傷つくんだ」



金歯「朕みたいに『暴力で人を傷つけたくない』と望む心優しい人間にとっては、すばらしい機密道具でおじゃるな」



 金歯は『言葉のナイフ』片手にナウマン象の元へ向かいました。



ナウマン象「なんだ金歯。また嬲られに来たのか」



 金歯、『言葉のナイフ』をナウマン象に向けて



金歯「○○○(耳を疑うような暴言)!」



ナウマン象「ひどい。ひどいわっ…ぶべら!」



 全身から血を噴出して倒れるナウマン象。



金歯「あははは。絶対勝利でおじゃる!」



ルナちゃん「うわ、な、なんなの? 人殺し!? これだから、金持ちは! いまからでもおそくありません。全財産をうちに寄付して、身を清めなさい。いま出家したら、もれないく素敵なホーリーネームをプレゼント」



金歯「おまえの宗教○○○!」



ルナちゃん「ぶべらっ!」



金歯「がははは、僕に逆らうやつは、しけいでおじゃる。しかし朕、財力もあるし顔もいいし、

んごい攻撃方法も手に入れることができたし、無敵でおじゃるな」



通りすがり子供「うう。お腹が減ったよう」



金歯「そういえば、微笑町では米が不作とかいっていたでおじゃるな。金持ちの朕には関係ないでおじゃるが」



通りすがりの子供の親「あ、金歯のお坊ちゃん。じ、実は家には米を買うお金がなく、もう1週間もなにも食べていないのです。私はいいから、この子に、この子になにか食べるものを」



金歯「うぬはバカでおじゃるか? 米がないなら、お菓子を食べればいいではないか、でおじゃるよ」



 この発言で、微笑町の民衆の怒りは爆発。町を支配していた金歯一族は、巻き起こった一揆によって皆殺しにされて、捕らえられた金歯は公衆の面前でギロチン。ギロです、ギロ。



『言葉のナイフ』は、一国の王女さまから町の中学生まで、どんな人でも持っている機密道具です。誰でも持っているワリには、多くの人を傷つけ、時に死に追いやってしまう危険な機密道具です。どうか皆様、使い方を誤まらぬよう、おねがいします。

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