人妻と不浄の巻

 人妻が我が子を連れて訪ねてきました。



「聞いてください、マルぼんさん。この間、深夜にこの娘とテレビを観ていたんです。そしたら、やたらと露出度の高い服を着た女の子の出てきているアニメがやっていて! テレビ局に苦情を入れたんですが、まだアニメの放送は続いているんです!」



「本屋に行くと、露出度の高い服を着た女の子が表紙の本がたくさん! この子のためにならないものがたくさん! この子って間違ってその本をみてしまったんです。汚らわしい! 苦情を言っても本屋はその本の取り扱いを止めようとしないんです!」



「この子のためにならない全ての不浄なものを消し去る道具をだしてください!」



 他ならぬ人妻の頼みなので、マルぼんは機密道具をご用意。さすがに不浄なものとはいえ全て消し去るわけにはいけないということで、それと変わらぬ効果をもたらす薬。この薬を飲むと、不快に思ったもの嫌だなと思ったものが見えなくなるのです。実際になくなるわけではなく、服用した人の視界から完全に消えてしまうわけです。



「そのお薬。配合とかを工夫して、私が不快に思うモノや嫌なモノをこの子が見えなくなるようにしてくれないかしら」



 望むように調合された薬を娘に飲ますと、人妻は満足そうに言った。



「これで一安心。この子がなにを嫌って、なにを不快に思うか。親である私が決めないといけませんからね」



 これを聞いて、マルぼん。ついにブちぎれました。



 深夜に卑猥なアニメ? なぜ深夜に子供寝かさず起こしたままにしている! 卑猥な本をみた? それがなぜダメなのかをなぜ説明しようしない! 親の責務を果たさずに、ただ嫌いなもの。自分が不快に思うものを排除する方向に向かうなんておかしい! それに、なにがダメでなにが嫌だなんて、子供だって自分で判断できる。親のわがままを子供に押し付けるのは止めたまえ!



 ってなことを懇々と説教したったのです。すると人妻反省したようで。



「たしかにそうです。マルぼんのおっしゃるとおり。私はこの子にずいぶんひどいことをしてきたようです。ほんと、自分が嫌になります」



人妻の我が子「あれ? ママは? さっきまでここにいたのに。急にいなくなったよ。ママー!! どこー!? ママー!!」



 






 



 

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