最強の……
同志たちと署名活動をしていたら、珍妙な恰好をした男が話しかけてきた。なんでも彼は異世界の住民で、今まさに魔王に世界が侵略されているそうで、その状況を打破できる勇者を探すために来日してきたのだという。どうせなら一番強い者を勇者として連れ帰りたい。日本で一番強い者は誰だと聞いてきた。
単なる悪ふざけをしている男だと思ったが、どうせならぎゃふんと言わせやろうと思った。
「今、我々はこの国の平和のために署名活動を行っている。この世で一番強いのは、武勇に優れた者や、軍隊を自由に動かせる独裁者ではない。真に強いのは、権力者に脅かされても何度踏みにじられてもあきらめずに立ち上がる、平和を愛し自由を愛する、我々! 平和を愛するすべての市民なのだ!」
「それならば、一番強いという『平和を愛するすべての市民』を連れ帰らせていただく」
男がそう言うと辺り一面が輝きだし、それが治まると男も、署名活動をしていた同志たちも消えていた。聞けば、他の場所で活動していた同志も消えてしまったという。男は本当に異世界の者だったのだ。
苦労して作り上げた票田が全て消えてしまい、次の選挙はどうしたものかと、私は途方に暮れた。
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