ヒロシ、また命を狙われるの巻

「まずいことになったんだ、マルぼん。ルナちゃんの関心を引こうと彼女の信仰について調べていたら、うっかりその宗教を壊滅に追い込める情報を掴んだ上、うっかりマスコミにリークして、うっかり多数の逮捕者をだしちゃって、うっかり教団関係者を集団自殺(服毒)に追い込んでしまったの。このままじゃルナちゃんに嫌われちゃうよ!」



「嫌われるもなにも、彼女は君を抹殺するために殺し屋を雇ったとのもっぱらの評判だぜ。守れるの、君の命。死守できるの、君の未来。将来は歌やお芝居もやりたいんでしょ?」



「殺し屋!? ヒットマン!? 僕の命を狙っている!? あ! 家の前を黒い服の男が歩いてるぞ! さてはあいつが!」



「落ち着いて。あれは殺し屋風の恰好しただけの一般市民。本当の殺し屋はあんな『ヒットマンでござーい』みたいな恰好はしていないよ」



 本当の殺し屋は、世を忍ぶ仮の姿を持ち、ヒットマンとは思えない表の職業につき、家族にすら正体がばれないように過ごしている。暗殺方法だって、銃や刃物をなんて使わない。事故に見せかけるなどして、殺し屋本人と依頼者以外は、たとえ殺された本人だって「暗殺された」なんて夢にも思わない方法で殺害する。そしてうけた依頼はなにがあろうと実行する!

 


「そんな! じゃあ僕はただ震えてその時を待つしかないと!?」



「まぁ、こういう時にぴったりな機密道具が――――」



 その瞬間、微笑町の全てが消し飛んだ。ならず国家として知られる某国から突然発射されたミサイルが原因だ。ならずもの国家の発表によると、誤射ということだった。国際社会の批判の声は止みそうになかった。



 某国内だってそれは同じだ。誤射なんていうのは建前だと、みんなわかっている。絶対に故意だ。目的があるに決まっているのだ。偉大なる指導者様が、このややこしい時期に、なぜミサイル発射命令をだしたのか、なぜ標的が日本の一地方である微笑町なのか。国家のやることに、疑問を持つことすら許されないこの国の人たちですら首をかしげている。



「ほんとに微笑町消し飛んだ? みんな死んだ? ひとり残らず死んだ? きちんと工作員に調べさせてる?」



 偉大なる指導者様は、微笑町の状況にしか興味がなく、決して理由を話そうとしないのだった。



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