落とし物の行方
ヒロシは今日も町をゆく(学校はさぼっています)。
ヒロシ「あ! 500円玉が落ちてる! 拾って交番に届けないと!」
ところがどっこい。どこからともなく現れたおっさんが500円玉を先に拾って、しかも己の財布に入れてしまったからさぁ、たいへん!
ヒロシ「あんた! 拾ったものは交番に届けないとだめじゃないか! 実に人間の屑だな!」
ヒロシの説教に腹をたてたおっさんは、でかい刀を取り出しました。。数秒後、ヒロシの頭部が宙を舞う。
通行人「たいへんだ! 誰か救急車を!」
近くの微笑病院に運ばれたヒロシはさっそく手術をうけます。
医者「これは助かるかどうか微妙だぞ。でも、全力を尽くすしかない!」
命のドラマが繰り広げられる手術室。その上のほうに、半透明のヒロシがぷかぷか浮かんで、己の手術を眺めています。ヒロシの魂です。生きているか死んでいるのかあやふやな状態なんで、こうして体の近くを漂っているわけです。当然、生きている人には見えません。
ヒロシ「こりゃ死ぬよなー。首ちょんぱだもんなー。まぁ、いいかー。来世に期待だな、うん」
己の手術を眺めながら、つぶやくヒロシ霊魂。
ヒロシ「でも、くちおしいな。実にくちおしい」
拾ったものを交番に届けない人間の屑を注意して殺されたという事実……
ヒロシ「拾ったものは交番に届けることが当たり前の世の中なら、僕は若い命を散らさずにすんだんだ」
いつかそんな世になればいいのに……。そう願うヒロシですが、今の彼にできることといえば、例の青龍刀男の子供に転生して、しゃべれるくらい成長したあたりで、「今度は殺さないでね、パパ」と発言することくらいしかできないちっぽけな存在。なにができようというのか。
???「その願い、かなえてやってもいいぜ」
ヒロシ「どちら様!?」
???「俺だよ、神だよ」
いつのまにか、ヒロシの目の前にマッチョな男が立っていました。
ヒロシ「神ですって!? あ、でも、それもありえるか」
魂だけのヒロシが見えるのですが、ありえないことではありません。
神「チミの願い、かなえてやろう。チンカラホイ! はい、これで君の望む世になったよ、世界は!」
ヒロシ「ほんとですか?」
神「ホントさ。まぁ、見てな」
神は、必死で手術をしている医者のほうを指さしました。
神「波ァーーーーー!」
神の指先から放たれる謎の怪光線。怪光線は医者の手に直撃し
医者「痛っ」
医者は持っていたメス床に落としてしまいました。
医者「やべえやべえ……うわっ!?」
咄嗟にメスを拾う医者でしたが、メスは医者の手を離れ、すごい勢いで宙を舞い、手術室の壁をぶちぬいて外へ……
神「病院の前に交番あるだろ。あそこに飛んで行ったんだ。ふふふ。世界を『拾われた物が、自動的に病院前の交番に届くことが当たり前の世の中』にしてやったんだ。」
ヒロシ「たしかにこれなら、どんなに世の中が悪意に満ちた人間だらけでも大丈夫ですね! ありがとうございます!」
神「いいってことよ、それじゃあな、迷える子羊!」
そう言うと、神は静かに消えていきました。
医者「あ、やった! この患者、助かったぞ!」
ヒロシ「え、マジで! ヤター!」
いいことは続くもので、ヒロシの命も助かりました。
医者「しかしあれだ、首ちょんぱでも助かるもんだな。この少年、命拾いしたな!」
ヒロシ「ほんとほんと! 命拾い……あれ?」
ヒロシ霊魂は、手術室からこつぜんと消えました。
医者「あ! 容体急変! ……やっぱダメだった! 合掌っ」
数週間後。心霊写真を取り扱う雑誌に、微笑病院前交番を撮影した写真が掲載されました。無念そうな少年の顔が写りこんでいる不気味な心霊写真。この交番には小銭やらエロ本やら軍手やら色々なものが飛んでくるという怪奇現象が起こっていて、それとの関連性が指摘されています。世の中怖いですね。あと、作中の描写のほとんどは適当です。現実では首ちょんぱしたら、たぶん死にます。あしからず。
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