若さ生活
これは数十年前、H町というところで本当に起こったお話しです……
ヒロシ「老いが怖い」
マルぼん「そう言うと思って、若返りの薬をもってきたよ。さぁ飲め」
ヒロシ「待って。飲む前に説明書とか読ませてよ」
マルぼん「チッ」
ヒロシ「今の舌打ちはなんだってんだ」
そんなわけで、二人は説明書を探すべく別の部屋へ。若返りの薬は、リビングに置いたまま。これがいけなかった。
ママさん「聞いたわ、これが若返りの薬」
妻であること、そして母親であることを放棄し、1人の人間として思うままわがままに、ただ愛に生きてきたママさんですが、さすがに愛に生きるには歳を重ねすぎ、体が愛に耐えられないことに気づいたのです。
ママさん「この薬で私は、再び愛にまみれた人生を謳歌するの。船出よ。新たな人生の船出っ」
さぁ、薬を飲もう。と、思ったママさんでしたが、ふと、たった1人の船出はさびしいことに気づきました。どうせならたくさんのほうがいい。その方が楽しい。気持ちいい。そんなわけで、かつてママさんを通り過ぎて行った男たちが、大沼宅リビングに集ったのでした。その数、100人弱。
ママさん「では、みんなで若返りの薬を飲みましょう」
かつてママさんを通り過ぎて行った男A「おっと。薬はとてもじゃないが人数分なさそうだぜ」
ママさん「なら、カルピスのように水で薄めて人数分になるように……」
しばらくして、マルぼんとヒロシが戻ってきました。
ヒロシ「危ない危ない。説明書に『飲んだら胎児にまで若返ります』とか書いているじゃねえか」
マルぼん「いっそのこと最初からやりなおしてもらいたいという、マルぼんの切ない乙女心がわからぬヒロシであったか」
ヒロシ「ぼかぁ、適度に青春を楽しめる程度に若返りたかったんだ。あ、いいこと思いついた。あの薬、水に薄めて飲んだら効果も薄れてちょうどよい塩梅の若返りができるんじゃない?」
マルぼん「やめときな。あの薬は全部飲み干さなきゃならない。水で薄めようものなら、中途半端な若返りをしちまうんだ。たとえば、体の一部だけが」
ヒロシ「あっ! うちのリビングで大量死!」
リビングでは、ママさんとママさんラバーズたちが、変わり果てた姿に。みんな、手にグラスをもったまま死んでいたので、服毒死感満載で、なんか、アメリカの追い詰められたカルト宗教(視察にきた議員を襲ったやつ)の最期みたいな感じなっておりました。
みなさん、外見はどこも異常はなかったのですが、司法解剖の結果、骨やらあらゆる臓器やらが胎児くらいの大きさしかなかったとのことです。
この事件に胸を痛めた村の庄屋さまは、亡くなった人数と同じ数のお地蔵様を村に建てました。このお地蔵様にお供え物をするとこころなし若返った気がするようになると評判になり、いつしかこのお地蔵様はアンチエイジング地蔵と呼ばれるようになったそうな。めでたしめでたし。
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