人生攻略本
いよいよ俺も人の親になるときがきたのである。まもなく生まれてくる我が子に、なにかあげられるものはないかと、知り合いの大沼くんに相談したところ、便利な道具で夢をかなえてくれる存在と同居しているとかで、「人生攻略本」なる道具があると教えられた。
その名の通り人生の「攻略本」だ。これからの人生で起こるすべてのことがらについて書かれており、「こういうことをすれば結果としてああなる」「ああいうことをすれば結局こうなる」「ここでああいう選択をすればこんな結末に。こういう選択をすればあんな結末に」という攻略情報も載っているのだ。この攻略本はすべての人間の分が存在するのだという。
難点は紙の本しかない上、「人生で起こるすべてのことがら」について書かれているということから分厚く、巻数もえげつないことになっているということらしい。
だが、こいつさえあれば人生は楽勝だ。俺は大沼くんを通じてマルぼんに頼んで、我が子の「攻略本」の手配を頼んだ。
マルぼん「そんなわけで、『攻略本』を持ってきました」
「ちょっと待ってくださいマルぼん氏。ここをどこだと思っているのです。産婦人科の分娩室前ですよ。今まさに妻が頑張っているんのに。かさばるものを持ってこられても困りますよ」
マルぼん「全然かさばらないから。ほら」
渡された我が子の「人生の攻略本」は、薄かった。冊子状になってはいるのが、1ページくらいしかなかった。おかしい。分厚いのではなかったか。巻数がえげつないことになるのではないのか。
マルぼん「長生きすればするほど色々な事があるから、分厚くなる。つまり薄いということは」
その時、分娩室の扉が開いた。中から出てきた医師と看護師は、ひどく暗い顔をしていた。
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