18.☆束の間の幸せ
「わかってる。大丈夫だから、俺のことは心配するな。沙奈瑚こそ、しっかり学べよ」
『ええ。もちろんよ』
離れてもう、2週間。
時々、俺の帰宅時間に合わせてかかってくる愛しい人からの短い電話。
これがあるから、生きていける。
「沙奈瑚。早く、会いたい」
『私もよ。早く会いたいし、もっと話していたい。でも、怜は明日も仕事でしょう?もう、切るわね』
こういう関係になって初めて知る、心配性な彼女の一面。
自分のことはいつも、大丈夫よ、なんて笑ってるのに、電話ではいつも俺のことばかり心配して。
「あ、待った!沙奈瑚、愛してる」
『私も愛してるわ。おやすみなさい』
愛してる、毎晩その言葉の余韻を耳と眼裏で楽しみながら眠りに就く幸せの一時。
ようやく手に入れたそれは、半ば強引だったけれど、今となっては彼女からの愛も感じることができる。
例えそれが偽りだったとしても、このままずっと…誰にも邪魔されることなく、ふたりで死んでしまえたらいいのに。
その時、不意に鳴ったスマホのせいで、甘い微睡みから一気に現実に引き戻される。
以前、「さっき言い忘れたんだけどね」そう言って、沙奈瑚が再び電話をしてきたことがあったから、俺は急いでベッドから起き上がり、再びスマホを取る。
画面に表示された名前が、彼女のものではなかったことにも気づかずに。
『怜?』
違う声が、俺を呼ぶ。
地獄へと突き落とすかのように、響いて。
なぜ、どうして…
願いが永遠には続かないことくらい、初めからわかっていたこと。
けれど心のどこかでは、信じていたのかもしれない。
何度も裏切られて、その度にもう信じないと誓った、永遠を――。
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