15.☆夢
「沙奈瑚、大丈夫か?」
「えぇ。もう平気よ」
退院して、一週間。
顔色も随分良くなり、もうすっかり回復した沙奈瑚。
隣で目覚めた彼女を、俺は強く引き寄せる。
「夢を見たの」
「何の?」
「煉が、いたわ」
俺は、思わず身体を離す。
今、なんて?
聞き返すのが怖くて、俺は彼女を避けるように半身だけを起こした。
「あいつのことなんか」
「ごめんなさい、私」
沙奈瑚も同じように身体を起こして、こちらを気遣うように寄り添ってくる。
「ごめんなさい」
「大丈夫だよ」
そんな彼女の髪を撫でながら、再び抱きしめる。
「煉のことなんて、忘れてしまえ。あいつはもう、死んだんだ」
この腕の中で、ぐすぐすと涙を流し始めた沙奈瑚。何かから逃れるかのように、必死でしがみついてくる。
彼女の心から、あいつが消えてなくなる日の事を夢見ながら、その震える身体をいつまでも抱きしめていた。
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