最初の村

食事を終えた後、この一年で起きた事を聞いてみた。

 整理すると


 12大国が協力関係を一斉に辞め、各地で戦争が始まり。

 バルナチア王国がガルティア大迷宮を独占。

 魔物が更に凶暴化し、危険な魔物の発生率が上昇した。

 それぞれの大国に飛ばされた転移者達はその国の力となって動いている者や国を乗っ取ったり、好き勝手している人達もいるとの事。


 「一年の間にクラスメイトが高校デビューならぬ、異世界デビューしちゃってるよ……マジか」

 「デビューってなんですか?」

 「あ、いや何でもない。えっと、あの、今この世界で暴れてる人達は自分の知り合いです。ごめんなさい」

 「……え!ジンさんって転移者なんですか!」

 「あ、ハイ」


 シャルロットは目を瞑り、暫く沈黙した後に目を見開く


 「ジンさんは悪くない!……です!」

 「あ、うん……」


 くそ、会話が……続かないぞ。何故だ!学校では知らない女子ともそれなりに会話出来たのに!


 「あ、あの!ジンさんの住んでた世界ってどんな所なんですか?」

 「え、あー、平和な所です」

 「平和な世界か〜、でもそんな世界で育った人とは思えないんですけどね。凄いですよ、ここから西にある大国レグロス王国に転移した人は侵略戦争で他国を一人で壊滅させたんですよ」

 「それは……すいません」

 「あ! いや、別にジンさんを攻めてる訳じゃないですよ!」

 「・・・」


 あ、やっぱダメだ。全然話が続かない。ってか、一国を壊滅したってエグいなぁ。


 「あの、その、レグロス大国に転移した人ってどんな人か分かります? 特徴とか、魔法とか」

 「そうですねー、有名なのは超大質量の砂魔法を扱うって事ですね。名前は分かりませんけど」


 砂魔法か。んー、確か砂魔法特化の人がいた気がするな、誰かは覚えてないけど。


 「とりあえず、そいつの所に行ってみます。ここから西ですよね?」

 「え? いや、危ないですよ!」

 「まぁ、そうだけど。 行く当ても無いし……。 それに、知り合いが利用されてる可能性もあるからその真意も確認したいので」

 「そういう事ですか! 分かりました! では、旅に必要なものを用意しますね!」

 「いや、それぐらいは自分でやりますよ」

 「んー、こんな事言うのアレですけど、ジンさんお金持ってますか?」

 「……無いです」

 「ですよね。 でも、コレは村と私を助けてくれたお礼ですから、気にしないで下さいね」


 優しいなぁ、何かお礼がしたい。よし、一先ずこの村の守りを固めよう。


 ◇◇◇


 食事を終えた後、俺は村の外に出て村をどう守るかを考える。


 「うーん、単純に村を土壁で囲むか? でも、出稼ぎに出てる人が居るみたいだから、出入り口が必要だもんな。んー、でも出入り口があったら盗賊も入れるもんなぁ〜ん〜……」

 「お兄ちゃん、何してるの?」

 「ん?」


 後ろを振り向くと、小さな女の子がいた。


 「君こそ、こんな所で何してるの? 危ないよ」

 「ふふ、わかった。おんぶして」

 「いいよ、はい」

 「ふふ、ありガトウ」


 【ガブっ!】


 ん?なんか、右肩痛くね?ん?なんか、後ろからガブガブ聞こえんな、何だ?


 「うわっ!」


 首を回して後ろを見ると、獣が俺の右肩に噛み付いていた。


 「え!ん!どういう事!」

 「ガブガブッ!」

 「っていつまでも噛み付いてんじゃねーよ!この野郎!」


 左手で獣の顔を掴み、引っ剥がして地面に叩き付ける。


 「キャン!」

 「めっちゃ血出てるし【キュア】」


 傷口に手を当てると緑色の光を発して、一瞬で治癒する。


 「よし、回復っと。で、この魔物はさっきの女の子でいいんだよな? 魔力感知が反応しなかったのはなんで? んー、分からんから後回しで」

 「ガルルルルッ」


 魔物は牙を剥き出して、威嚇している。


 「ん?さっき結構、本気で叩きつけたんだけど、なんで動けるの? 物防のステが高い? んー、まぁいいや、【風刃】」


 風の刃が魔物を真っ二つに切り裂く。


 「こんな、魔物がこんな近くにいるとか危ないな。よし!取り敢えず、村を土壁で囲むか!っとやる前に村人にしていいか確認しないとダメか」


 ◇◇◇


 村に帰り、村人に確認すると是非とのことなので、遠慮なくやってやろうじゃないか。と思い村の真ん中に立ち、要塞の壁をイメージする。


 「んーーー!キタ!いでよ!【アトランティスウォール】」


 村を要塞の黒い壁が囲む。壁の外側は棘が突き出しており、よじ登ることは不可能。壁の上にはしごで登れて上から弓で迎撃も可能である。因みにアトランティス要素は全く無い、雰囲気で言っただけである。


 「えーーー! じ、ジンさん! こ、こんな事まで……本当にありがとうございます!」

 「あ、イヤ、そんな頭下げないで」 

 「「ありがとう!ありがとう!」」

 「あ、あの、ちょ」


 俺は村の人たちに持ち上げられて、ヨイショ!ヨイショ!っと胴上げされた。日が暮れるまで……


 「うっ、うえっ」

 「ご、ごめんなさい!みんなテンション上がっちゃって」


 現在、俺は絶賛嘔吐中だ。胴上げで酔いに酔った。

しかも、最後はシャルロットが止めに入って、一斉に辞めたから、胴上げで飛ばされてそのまま地面に落下した。


 「だ、大丈夫。もぅ、落ち着いたから」

 「そうですか。良かったです、とりあえず今日はもう休みましょうか」

 「うん、そうする」


 俺はシャルロットの家に行き、シャルロットが両親と一緒に寝て、俺がシャルロットの部屋で寝る事になった。 最初は女子の部屋って事でドギマギしたが、入ってみると特に女の子の部屋って感じは無く、匂いもなんか……正直言うと石鹸が無い為、若干く、イヤ辞めておこう。

 コレはアレだ、今まで日用品がなんでもあるキングの所で暮らしてきた為に異世界の生活レベルが低い事を忘れていただけだ。 あ!ってか空間魔法にキングの所から石鹸とか入れてたな。ま、明日だな。寝よ


 

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