第21話 スタート直前
「リザードマンというのはトカゲタイプのモンスターだ」
ミッションのお知らせを聞き、アリスが鎧姿に着替えて教室に戻ってきた。
狩人姿のルカといつもの姿のカムイも、戻ってきて席に着いている。
再び先生となり、黒板にトカゲの絵を描いている。
かわいい。ゆるキャラのようなトカゲだ。
あれなら簡単に倒せそうと思ってしまう。
「二足歩行タイプで前足は手として使えるため、武器や盾を装備している個体が多い。弱点はシッポで切断するとバランスがとれなくなる」
どうやらアリスは過去にリザードマンと戦ったことがあるようだ。
ノートに大事なことをメモする。
「身体は硬い
硬い鱗か。これは今の剣では厳しいかもしれない。
ここで、素材アイテム ゴブリンの玉の使い道が決まる。
「みんな集まって。ミッション前に初期装備を選ぼう」
ナナとチンピラの初期装備。リザードマンに通用する武器を選ばなくてはならない。
「ワシの初期装備、剣、短剣、弓やな」
「ナナは杖、盾、棍棒です」
初期装備はそれぞれ違う。前衛型と後衛型で振り分けられている感じだ。
「杖は治療のスキルを増加させるとかあるのかな?」
「初期装備にそこまでの性能はないとおもうけど。杖装備、見たことないからわからない」
アイに聞いてみるが杖の性能は不明だ。
「でもナナ、力なさそうだし重そうな盾や棍棒よりは杖がいいんじゃない?」
「はい、ナナもそう思います」
ナナの初期装備はあっさり決まった。
次はチンピラだが、できれば武器よりも盾が良かった。残念ながら選択肢にない。
「剣にするしかないな、弓や短剣は扱い難い」
「しゃーないな、チャカとかあったら楽やのにな」
二人が初期装備を選びロッカーに送られてくる。
チンピラの剣は自分の物と同じもの。ナナの杖は簡単な装飾がされている木製の物だ。
見た目では効果はわからない。
「さて、次は」
自分の携帯で素材変換のアプリをタップする。
ゴブリンの玉 変換
煙玉 10個 10P
装備スキル 武器強化 50P
戻り玉 3個 100P
煙玉は煙幕。戻り玉は脱出に使えるようだ。
どちらも生き残るために役にたちそうだが、リザードマン対策に、装備スキル 武器強化を選択する。
99Pから49Pに減り、ゴブリンの玉が赤く光り、ゴルフボールくらいだった玉がビー玉くらいに縮む。
初期装備の剣の
そこに赤い玉をはめ込むと剣がうっすらと赤く光る。
ステータスを見る。
ハジメ レベル2
HP 40
攻撃 7
守備 6
速さ 7
個人スキル 隠密
装備スキル 武器強化
サブスキル なし
武器強化をタップする。
攻撃力、耐久性1・5倍。
武器が強化され威力が増す。これでリザードマンにダメージが通るだろうか。
「ハイド、スタンバイ」
背後でルカが犬を召喚していた。犬を従え、狩人装備になったルカは本当に熟練の狩人のようだ。
チンピラがびくっと身体を震わせる。犬がトラウマになっているようだ。
「ミッション始まってから、呼び出さないんだな」
「特訓イベントと違って、ミッションは携帯持っていかない方がいいからね。もし携帯が壊れたらおしまいよ。永遠にポイントつかえなくなる」
アイの説明にうなづく。携帯が壊れるイコールゲームオーバーだ。
「ポイントで携帯のバージョンアップもできるみたいだけどね。壊れないためのハードカバーやケース、かなりポイントを使うけどロボットに変形させることもできるらしいわ」
「かっこええな、ワシ、ポイント貯めたらロボにしたいわ」
「ナナは可愛くデコレーションしたいです」
「うん、物凄く余裕できてからにしような」
昨日の作戦のおさらいをする。
「まずはアリス達のパーティーについて行く。リザードマンを彼女達が倒したら、俺達の武器で攻撃が効くか死体で確かめる」
三人がうなづく。
「攻撃が効かない場合はプランBに以降。無理をせず参加ポイントだけで生き残ることを優先......」
『三年B組ーーっ、黒板先生ーーっ!!』
スピーカーから音声が流れる。
時計は十時五十分。
ミッションが始まる。
『リザードマン討伐ミッション』
『メインミッション
リザードマンロードの討伐 ポイント1500P』
『ザブミッション
リザードマン三体の討伐 ポイント150P』
『制限時間 六時間』
『参加ポイント 30P』
『場所 リンドブルク城下町 深井戸のダンジョン』
簡単なマップも書き込まれていく。洞窟のような地図で一番奥にドクロマークがある。
報酬のポイントが高い。前回のゴブリンよりかなり難易度が上がっているのだろう。
「落ち着いていこう。もうすぐ出席が始まるから席に戻って......」
とんっ、と机に袋が現れた。
コンビニのビニール袋、中を見るとアルミホイルに包まれた三角のものが三つとお茶のペットボトルが入っていた。
「これは?」
「ミッション中に食事時間が来る時はお弁当がでるの」
見ると新人以外のメンバーの机にはすべてビニール袋が転送されていた。
「後でみんなで食べよう」
ピクニック気分にはなれない。
それでも弁当はテンションが上がる。
皆で生き残って食べる。腰にコンビニ袋をぶら下げた。
もうすぐミッションが始まる。
まさにその時。
後ろのロッカーからガタガタっと音がした。
教室にメンバーは全員いる。
転校生イベントも終わっている。
だが、ロッカーが中からゆっくりと開かれていく。
「転校生?」
「ううん、イベントの人数は終わっている。ありえないわ」
アイの言葉を信じるなら、ロッカーの中から出て来るのは......。
「編入生だ」
カムイがぼそりと呟く。
ロッカーから長い足だけがゆっくりと出てきた。
とてつもなく嫌な予感がする。
「チョットだけよ〜〜」
聞いたことがある声がロッカーの中から聞こえてきた。
いままでで一番どうでもいい記憶。ピンクの照明とネグリジェを着たハゲちゃびんの映像が蘇る。
「はーーい」
ウインクで現れたのは銃をもった迷彩服の男。
「きちゃった♡」
ミッション寸前にA組のオカマスナイパー、クリスが編入してきた。
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