第10話 特訓イベント
朝食を終えるとアリスとルカは部屋に戻った。
またアイと二人きりになる。
「次は十二時にお昼ご飯、その後今日のイベントが発表されるわ」
「今日のイベント?」
そういえばノートにそれらしきことが書かれてあった。
「ミッションがない日も毎日何かのイベントがあるの。ここって何かのゲームみたいでしょ、まあ最悪のクソゲーだけど」
ごめん、たぶん考えたの俺です、と心の中であやまる。
「ポイントに関係ないイベントが多いけど、たまにサービスでアイテムやポイントをくれることもあるから、確認だけでもしたほうがいいと思うよ」
ノートに書かれていたイベントは、慌てていたので、内容などほとんど確認していない。
「了解。それまで部屋で休もうか。アイさん先に行ってきなよ」
「え、さっきいっぱい寝たから大丈夫だよ。ハジメくん、あんまり休んでないじゃん。もう一回休んでおいでよ」
本当はそうしたいが、下着姿の女性をずっと教室にいさせるわけにもいかない。
「じゃあ服が乾いていたら戻ってきて。結構休めたから気にしなくていいよ」
「ねえ、もう無理しないで二人で部屋に行かない? 別に変なことしないからさ」
まったく信用できないので首を振る。
「もう、意地っ張り! 童貞!」
アイをロッカーの部屋に押し込んで席に戻る。
なかなか厄介だ。
限りなくゼロに近いがカムイではなく、アイが俺を呼び出した可能性もある。
あまりずっと一緒にいるのはよくないだろう。
もちろんアリスやルカが呼び出したという可能性はさらに上がる。
そしてさらにもう一つの可能性。
この教室にいる全員が違うという可能性だ。
ノートは消えてしまったが気になることが書かれてあった。
別のクラスの存在。
確かにそう書かれていた。
ここが三年B組なら三年A組や三年C組も存在するのだろうか。
それなら別のクラスの人物が俺を呼び出した可能性もでてくる。
調べることが多い。
やはりノートをじっくり見れなかったことが悔やまれる。
がちゃりと、ロッカーが開きセーラー服を着たアイが出てきた。
「服、
そう言って、スカートの裾を掴んで、その場でくるっ、と回る。
本当はまだ乾いてないだろう。
あまり休憩してない俺に気を使って出てきたみたいだ。
「うん、じゃあまた昼に」
入れ替わりにロッカー部屋に行く。
昼食後のイベントのため、頭と身体を休ませないといけない。
ベットに倒れこむように寝転がると、最初と同じように、一瞬で眠りについた。
再びチャイムが鳴り昼食に向かう。
朝と同じでトレイに食事がのせられている。
コッペパン。シチュー。枝豆。竹輪の磯辺揚げ。牛乳。統一感はないが普通においしい。
アイはもう断りを入れずに、隣の席に来て一緒に食べている。
カムイは朝と色の違うバランス栄養食を二口で食べると、すぐには帰らず席に座っていた。
イベントの発表を待っているのだろう。
「早く食べろよ、アリス。良かったら手伝ってやろうか」
早々に食べ終わったルカは後ろを向いてアリスの食事を狙っている。
アリスは相変わらずゆっくり食べている。
どうやらハンバーグのようだ。
Aの食事はかなりうまそうだ。頼んでみたい誘惑にかられてしまう。
『三年B組ーーっ、黒板先生ーーっ!!』
スピーカーからいきなりの大音量。
教室の皆が食事の手を止めて黒板を見る。
自動で白い文字が書き込まれていく。
『本日のイベント 』
『特訓イベント』
『十三時スタート』
「あちゃーー、外れイベントだね」
アイが自らのオデコをピシャリと叩く。
「ポイントもアイテムも手に入らない。運動場で特訓するだけのイベントよ」
「運動場? どんな特訓をするんですか?」
「基本的な武器とカカシが沢山置いてあるの。使ったことのない武器を試したりできるけど、当然持って帰ることはできないわ」
なるほど、自分に合う武器を試して気に入れば後でポイントで購入するということか。
「自分の装備も持ち込めるから、新しく得た武器やスキルを試すなら行ってみてもいいかもね」
「最初だから行ってみようかな」
「うちはパス、頑張ってね」
見るとカムイとアリスもロッカーに戻っている。
ルカは座ってる。
特訓するつもりなんだろうか?
「あ、そうそう。特訓でも武器は本物だから怪我には気をつけてね。怪我したらポイントで回復できるけどもったいないからね」
「ありがとう、気をつけるよ」
ロッカーを開けてアイを部屋に入れる。
ルカと初めて教室で二人きりになる。
イベントが始まる十三時まであと十分くらいか。
なんとも言えない緊張感だ。
背後を見ないで黒板を見ているが、後頭部に視線が突き刺さる。
「やはりスキルは見えないか」
振り向くといつの間にか片目ゴーグルを装備しているルカが後ろに立っていた。
机に入れていたのだろうか。
競泳水着を着ているので変な水泳選手みたいになっている。
アリスのような巨乳ではないがスタイルがいい。
すらっと細く背が高いのでモデルみたいだ。
「アリスみたいに胸がなくてすまんな」
両手で自分の胸を持ち上げる。
牛乳を飲んでいたら確実にふいていただろう。
どうして女子は胸に向けられる男の視線に気がつくのだろう。
「いえ、なかなかのものをお持ちですよ」
「そうか」
動揺して訳のわからないことを言ってしまった。
ダメだ。空気に耐えられない。
早くイベント始まって、と祈る。
『三年B組ーーっ、黒板先生ーーっ!!』
願いが通じたのかスピーカーから大音量が鳴り響く。
黒板の文字が全て消え、黒板に新たな文字が書き込まれていく。
『特訓イベント』
『制限時間 三時間』
『場所 運動場』
『参加クラス 三年A組 三年B組』
参加クラスのところを見て固まる。
二つのクラスが書かれている。
「合同訓練か」
『出席をとりますっ、参加者は席について下さいっ!』
再びスピーカーから音声が流れ、転送が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます