第5話 ポイント交換

 

 ボスゴブリンが倒れた後、数分後に頭の中でメッセージが流れた。


『メインミッション ボスゴブリンの討伐完了しました』


 すぐにアナウンスが流れなかったということは、しばらくボスゴブリンは生きていたようだ。

 なるほど、このタイミングで横取りすればハイエナができるというわけか。


『ハジメ君に200Pが入ります』


 まさか初回でボスを倒せるとは。

 このポイントは大事に使わないと。

 そういえばこのゴブリン、投石器を使っていた。

 あれを次回から使えれば有利にミッションをこなせるのではないだろうか。

 辺りを見渡すと1メートルくらいの木製の投石器がある。

 どうにかして、持って帰れるだろうか。

 手を伸ばそうとすると、目の前の投石器がいきなり消失した。

 見ると倒したボスゴブリンも消えていく。

 どうやら敵の武器は倒すと消えて手に入らないようだ。


『素材アイテム ゴブリンの玉を入手しました』


 かわりに意味が分からない素材アイテムをゲットする。

 しかし、アイテムは見当たらない。

 後から入手できるのだろうか。


『たららたったたー』


 続いてどこかで聞いたような間の抜けた音が流れる。


『ハジメ君のレベルが1から2に上がりました。HPが10 攻撃が2 守備が1 速さが2 UPしました。ポイント交換のリストが増えました』


 レベルの上がる音だったのか。本当にゲームのような世界だ。

 ポイント交換はレベルが上げることにより品物が増えていくようだ。

 強くなるよりも大事な事かもしれない。


『ミッションコンプリート。すべてのミッションが完了しました』


 どうやらこれですべてが終わったようだ。


『三分後に教室に戻ります。お疲れ様でした』


 崩れた木の近くにいるアイのほうを見る。

 こっちに気がついて手を振っている。

 しばらくすると目の前にいきなり椅子が現れた。

 これでまた教室に帰れるのだろう。

 椅子に座ると来た時と同じように目の前が暗くなる。身体が液体になって流されていくような感覚が終わると教室に戻っていた。


 教室ではアリスとルカが座っていた。

 遅れてアイが現れる。

 そのアイの隣、シュンの席には花瓶がおいてあり、薔薇バラが一輪挿してあった。


「シュン......」


 泣きそうな顔でアイがその花を見ている。

 アリスとルカは無言だ。


 キーンコーンカーンコーン


 スピーカーから再びチャイムがなる。

 黒板に書かれた文字がすべて消えて再び書き込まれていく。


『ゴブリン討伐ミッション結果』


『出席番号12番 アリスさん 38P』


『出席番号18番 ルカさん 38P』


『出席番号25番 シュン君 死亡』


『出席番号30番 アイさん 10P』


『出席番号33番 ハジメ君 210P』


『次回のミッションは四月四日の予定です』


『それではみなさん、また明日〜〜』


 機械音声が流れる。

 始まりの熱いテンションとは違う気の抜けたような音声。

 次は三日後か。

 その間はどうやって過ごすのだろうか。

 アリスとルカが立ち上がり、それぞれのロッカーを開ける。

 中に入ると扉が閉まり、そのまま二人は出てこなかった。

 そういえばカムイもロッカーに入ったままだ。

 あの狭いロッカーにずっといるのだろうか。


 椅子から立ち上がり、教室から出ようと扉に向かう。

 開かない。

 扉はまるで完全に固定されているように一ミリも動かない。


「教室からは出れないよ」


 アイが座ったまま話しかける。


「色々教えてあげるから、携帯持ってこっちに来て」


 言う通りに席に戻り、机の中から携帯を取り出す。

 その時、机の中に小さい玉が入っていることに気がついた。

 銀色のガラス玉。

 大きさはピンポン玉くらいだ。

 これが素材アイテムのゴブリン玉だろうか。

 他にも何か入ってないか、机の中を見てみると大学ノートが見つかった。

 中を見るのは後にして、とりあえず携帯だけ持ってアイの所に向かう。


「えっと......」


 話しかけようとすると、その前にアイは頭を下げてきた。


「まずは助けてくれてありがとう」


 ボスゴブリンの襲撃の時、木陰に運んだことだろうか。


「いや、いいよ。大したことはしていない」


「でもありがとう。お礼に知ってることはなんでも教えるね」


 それはありがたい。

 アイの隣の席に座る。もちろん花が飾ってあるシュンの席と反対側だ。

 早速、一番の疑問を聞いてみる。


「みんなロッカーに入っていったけど、あそこから現実世界に帰ってるのかな?」


「ううん」


 アイは首を横に振る。


「みんなポイントでロッカーを部屋にしているだけ」


「ロッカーを部屋に?」


「そ、携帯のポイント交換を押して見て」


 携帯を見る。

 いくつかのアプリが並んでいる。


 ステータス。

 パーティー。

 ポイント交換。

 カレンダー。

 装備売買。

 装備作製。

 素材変換。


 その中のポイント交換をタップする。


 ハジメ レベル2


 ポイント 210P


 交換可能リスト


 食料一週間分A 20P

 食料一週間分B 10P

 食料一週間分C 5P


 ロッカーを部屋へ拡張 100P


 装備ガチャ 100P


 スキルガチャ 200P


「これでロッカーを部屋に変えているのか。どんな部屋なんだ?」


「最初は質素なワンケーの部屋。簡単なトイレとシャワー、あとベッドがあるだけ」


 刑務所の部屋みたいだな。入ったことはないが。うん、記憶はないがたぶんないはずだ。


「部屋を作ると日用品のリストが増えるの。テレビとか冷蔵庫とか。部屋がない間は大きいものはリストにでてこない」


 なるほど、ロッカーの容量を超えるものは交換できないわけだ。


「だからみんな100P貯まると最初はロッカーを部屋にするわ。でないと教室で暮らす羽目になるからね」


 確かにそれはしんどそうだ。

 しかし、気になる項目もある。

 スキルガチャ 200Pだ。

 これはスキルが増えるということだろうか。

 だとしたら強力なスキルをゲットするチャンスだ。

 今回も隠密のスキルのおかげで生き残ったようなものだ。


「うーん、悩むな。これは」


「えっ、部屋にしないの?」


 なぜかアイが困った顔をする。


「うん、スキルガチャとどっちにするか迷っている」


「へ、部屋にしたほうがいいよ。プライバシーもなにもかもなくなるよっ」


 アイが焦って動揺していている。


「もしかしてアイさん」


 嫌な予感がする。


「うち、シュンの部屋に一緒にいたから部屋ないんだ。できたら部屋を作って泊めてほしいんだけど」


 別の意味で手強いミッションが発動した。




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