第5話 怪物の力
訳の分からない怪物と一緒になったってのに、感覚は以前と大して変わらない。しかしはっきりとステータスには表れていた。
ツカサ・XXX
Lv.19
種族;人間・半妖
職業;XXX
HP;184
MP;339
腕力;195
機敏;190
器用;187
感応;503
幸運;53
スキル
槍術:Lv.5
隠密;Lv.5
XXX;Lv.10
XXX;Lv.10
XXX;Lv.10
レベルとしては四つあがっただけ、と思うかもしれない。だが、このレベルに到達すること自体、むずかしいのだ。それに感応値が異常だ。500オーバーとはありえない。魔術での抵抗能力に多大なアドバンテージを獲得しているだろう。まず達人の術法でなければ無効化できるだろう。
だがやつと合体しても(やつは合一化、と呼んでいるが)、スキルは不明なままである。槍術も隠密も俺が持っていたスキルだ。
「このXXXはなんなんだ? つかえるんだろうな?」
「フンッ、当たり前だ。狩りにでもなればすぐに教えてやる」
などといって、詳しくは教えてくれなかった。双角は合体したあとも相変わらずえらそうだが、一方マティはなんだかなれなれしい。
「これからずっと一緒のたびだねー。たのしみだねー」
そういって腕をくんできた。
「ご主人さまとのふたりたびで、ちょっとさびしかったんだよねーっ。ひとはだが恋しい、てゆうかー」
マティが上目づかいで思わせぶりにいってきやがった。正直かわいいのだ。並みの女の子では勝負にならない。男だといのが信じられない。
「でも、お前俺をだましてただろ。双角に食わせるつもりだったのに、なんで一気にやさしくなる?」
「そりゃ、ご主人さまのよりしろじゃなかったもん。いまはべつだよ」
「調子のいいやつだ」
「これからずっといっしょなんだから、仲良くやろーっ」
からっと笑うマティ。あきれるもののこの子のいう通りだとも思った。今はひとまず俺の気持ちは置いておこう。
「しかし、どうやって双角と知り合ったんだ。そもそもどうして最初はあんな弱いステータスだった? 今は半妖になっているが」
俺の疑問には双角が答えてくれた。
「簡単だ。我の血を与えていたため、霊的に変化するようになったのだ」
「血を与えて、変化した??」
マティは捨て子だったという。双角が見つけたのは今から十年ほど前で、マティは赤子は五歳前後だと思えたらしいが、正確な年齢はもう分からない。食っても大した腹の足しにはならないので、何かに使えないかと育ててみたのだと。
「しかし当時は我も食うので難儀していてな。幼児に与える食料などまず手に入らぬ。だから血を与えた。どうなるか分からなかったが、他に手段もなかったしな。しかし上手くいき我の霊力を受けて半妖に成ったのだ。しかし定期的に魔力を含んだ血を与えねば、影響が急速に弱まって元の人間に戻るのだ」
「五日間もご主人さまの血をもらえなくてヘロヘロだったんだよー。もうたいへんですた」
「じゃあこれからも血を与える必要はあるんだな」
「そうだよっ、よろしくねっ」
「よろしくね?」
「だってご主人さまの身体になったじゃん」
「俺の身体から与えるのか!? 双角は姿を現せられるじゃないかっ」
双角は確かに俺と一体になっているものの、こうして街へ帰る道中の森の中で体からひょっこりとその触手や顔を水面から浮かべるようにして出すことができるのだ。だから、やろうと思えばやつ自身の部位から与えられるはずである。
「だってご主人さまのお身体をきずつけるの、ほんとうはよくないでしょ? こういうときのためのよりしろじゃん。ちょっと指にきずをつけて血をながすだけだよ。こどもじゃないんだから」
「そりゃそうだが……」
「あ、それとも別のやりかたでいこうか? からだのうちがわで練ってつくった濃い魔力をさ、くちうつしでぼくにあたえてくれれば……」
「ばかいうなっ」
「くすくす、あわてちゃってー」
マティにからかわれているのもつかの間、双角が「待て、誰かが戦っているぞ」と伝えてきた。とっさに周囲をうかがってみるが、感じ取れなかった。
「どこにだ?」
身をかがめ、声を鎮めて双角にたずねる。
「近くではない。二千歩は先だ。お主はまだ我の魔力を掴めず分からぬだろうが、確かだ。複数の者らが戦っている。大して強くないな。良い機会だ。行くぞ」
「まてよ、なんで行くんだっ」
「我の、そして今やお主のものでもある“力”がどんなものか、知りたくないのか?」
「む……」
「安心しろ、強くはない。大設計の“れべる”で言えば十四、五といった所だ。戦闘になっても楽に勝てる」
「もっと教えてくれ。じゃないと……」
「もー、ビビりだなーっ! いいからいこうよっ! いかなきゃここで大声でもだしてまねきよせるよっ!」
「わかったよっ!」
ステータス上は強くなったとはいえ、そんな実感はない。それに俺はずっと魔物相手に一対一で戦ってきたのだ。人間相手は大公連合にいたとき以来一年ぶりだった。
魔物とは違った確かな戦術をつかって立ち向かってくる人間たち、というのが怖かったのだ。俺は、強い自分を知らない。
「こっちだ。行くぞ」
「おう」
双角が触手で指し示す方向に歩んでいく中で、俺はどんどん汗ばんで来ていた。
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