第3話始まりの執刀③

「赤ちゃんの性別知りたい?」

「はい。」

「女の子だよ。」

「女の子ー!?」

「つわりひどかったんじゃない?」

「だった♪」

「つわりが酷かったら女の子とか男の子って決まりはないんだけどね。」

「女の子かぁ。聖夜まりあにしよう!」

「可愛い名前だね。桐原聖夜ちゃんね。今日が7月25日だから早くて出産予定日がクリスマスだね。なんっていう奇跡。」

「クリスマスプレゼントだぁ。久しぶりのクリスマスプレゼントが赤ちゃんだなんて嬉しくて泣きそうだよ。」

「俺も今日の朝知ってさ?妊娠。夫にぐらい伝えればいいのにさ!!もぅ !聖夜は、適当に付けた。由来どうしよっかな〜?『清らかな女性に育って欲しいから』って事で。」

「聖夜に早く会いたいなぁ〜♪」

「仕事してながらだから大丈夫じゃない?つか、師長に産休育休取るの?って言われて仕事続けたいって言ってたらしいね。」

「うん。」

「来る時に師長に言われたんだけどさ?」

「なにって?」

「妊娠しているの知ってたんだって。」

「うそー!?」

「産休育休取られたくないから言わなかったんだって。」

「私がいなくても大丈夫でしょ!?」

東都紅蓮西総合病院この病院も看護師不足だよ!?」

「そうなのー!?」

「うん。だから看護大学とか看護短大、専門学生は、国試さえ合格すれば入職確実視されてるから。」

「そうなの!?」

「うん。まっ。休ませる気満々らしいけど。」

「もう安定期だよ!?休むにも安定期だし………。」

「夏希の代わりに廣野さんが外回りするんだろ?」

「あっ。うん。倉庫の中の処理は、やれるけど。」

「待って。夏希。双子だった。」

「双子!?」

「双子かよー!?」

「双子だよ。女の子。」

「女の子ね〜?」

冴香さやかで。」

「OK。桐原聖夜ちゃんと、桐原冴香ちゃんね。分かった。」

と、桔梗先生は、言い、私のカルテに胎児の名前を打ち込んだ。

「双子かぁ〜。聖夜と冴香の姉妹に会いたいなぁ〜♪早く会いたいなぁ♪」

「冴香の由来は、冴え渡る香りをみんなに届けて欲しいからって事で。」

「あっ。もうじき、戻らないといけなくないの?蓮華。」

「粕川先生居るしいいかなって思ってんだけど?」

「あんたの弟、誰が見てんのさ!」

「夢道先生とかに任せていたりするし。」

「メールで『早く桐原先生返してください』って来てんだよ!」

「仕方ない戻る。」

と、蓮華先生は、言い、私のお腹をさすってから総合外科医局に戻った。

「女の子の双子かぁ〜♪どっちが上の子になるかはまだ分からないですよね?」

「うん?そうだけどどうかしたの?」

「さほど時間差ないからいいんですけど気になるじゃないですかー。」

「だね。あれー?あの人脳腫瘍っぽい歩き方してるんじゃないかなー?」

と、桔梗先生は、診察室の窓から中庭を見ながら言った。

「えっ!?ほんとだ。私も行ったほうがいいですね。ありがとうございます。1回会計済ましてから制服に着替えてさっきの人に会いますね。」

と、私は、言い、診察を終え、会計を済まして脳腫瘍っぽい人に会いに行った。

-数分後-

「蓮華先生。私は、倉庫の中にいるんで頑張ってくださいね。」

「急いで手術終えて会いに行くから待ってて。」

「セクハラで訴えるけどいい?」

「やめてーそれだけはー!」

「冗談。あっ。廣野さん!お願いしますね。」

「あっ。はい。桐原先生!行きますよー?」

と、廣野さんは、言い、蓮華先生を引っ張り手術室へ向かった。

-数分後-

「ただいま〜♪聖夜〜♪冴香〜♪」

「セクハラで訴えていい?」

「やだぁ。」

と、蓮華先生は、私のお腹をさするのをやめながら言った。

「錦野さん。」

「千暁ちゃん?どうかしたの?」

「私、妊娠してたの知ってました。」

「知ってたのー!?」

「はい。パーティー寸前に気づきました。」

「そうなの!?あっ。母さん達に報告してないや。」

「あれ?母さん!?どうしたの?」

と、千暁ちゃんは、倉庫前から顔を突き出して言った。

「夏希ちゃーん!来たわよー。」

「お義母さん!?急にどうしたのですか!?」

「お腹の子供の性別は?それ聞きに来たの。」

「女の子の双子です。」

「双子!?名前は?もう決めたのかしら?」

「母さん。」

「蓮華!?」

「うん。えっと〜。聖夜まりあ冴香さやか。」

「由来は?」

「『清らかな女性に育って欲しい。』のと『冴え渡る香りをみんなに届けて欲しいから』って事かな。」

「そういう事ね。」

「そだけど。つか、親父は?」

「家よ?」

「もう決めてたのー!?早いー。」

「蓮華が。」

「良いじゃん。」

「そうよ。」

「つか、なんで健康な人がここに居るの?」

「蓮華!良いでしょ!」

「早く会いたいな。聖夜と冴香。」

「母さん。クリスマス頃だよ?予定日。」

「えぇ!?そうなの!?」

「はい。まだちっさい生命体のままです。」

「なら仕事できるわね。」

「重い荷物は、持てませんけど。」

「錦野さん!ちょっと。来てくれない?」

「あっ。はい!では。千暁ちゃん。ゴメンね。」

と、私は、言い、倉庫からナースステーションまで向かった。

「錦野さん。出産間近になったら入院しなさいね。」

「はい。」

「来週、研修会あるから研修受けなさい。もう看護師長への研修会もこれでラストよ。」

「はい。」

「夏希って、主任だったの!?」

「そだよ?必死に頑張って主任になったんだよ?手術室看護師だけしたかったのに!!誰かさんのせいで!!病棟看護師をやって!看護主任になってさ!!」

「怒るとお腹に悪影響だよ!?」

「怒ってないよ!!呆れてるの!」

「てへ。」

と、蓮華先生は、舌をちょこっと出して言った。

「桐原先生!ちょっと良いですか?」

「うん?じゃね。」

「行ってらっしゃい。」

と、私は、トイレへ向かう蓮華先生を見送りデスク作業をし始めた。

「錦野さん。」

「あっ。国見さん。どうかした?」

「キツくないですか?」

「ん?大丈夫だよ?きつくないようにしてるから。師長も許可してくれてるし。」

「黙認よ。因みに明日から17週目よね。胎動が早い人で感じられるらしいわよ。」

「あっ。これからもよろしくお願いします。」

と、お義母さんは、言い、病院を後にした。

「何を?」

「夏希!」

「桐原先生?おかえりなさい。早かったですね。」

「夏希!ハサミない?」

「はい。ハサミ。」

と、私は、ポッケから小学校で使うハサミを渡し、入院患者のデータの確認に戻った。

-数分後-

「錦野さん。」

「はい?あっ。華蓮先生。」

「兄から。ハサミの返却と、」

「返却と?」

「ちょっと来て欲しいって連絡が。」

「ん?」

と、私は、言い、華蓮君からハサミを受け取り、ナースステーションからトイレに向かうと、そこには蓮華先生が両目を瞑り右手の人差し指と中指で右側頭部を叩きながら立っていた。

「夏希。ストレッチャー持ってきて。」

「あっ。はい!!!」

と、私は、ナースステーション横のストレッチャー置き場からストレッチャーを取ってまた戻って来ると蓮華先生がトイレの個室のドアの横で意識をなくしている女性を抱えていた。

「夏希。廣野さんを第1手術室まで呼んで。夏希は、ナースステーションにいて。」

と、蓮華先生は、言い、ストレッチャーを押しながら第1手術室へ向かった。

私は、その言葉を聞き、私は、ナースステーションに戻った。

-数分後-

「錦野さん。何を?」

「鹿野さん。あぁ。これ?これはね。持ち込み厳禁の奴とか是非持ってくるべきものの一覧表。」

「これって…。」

「本来なら後輩にやらせようと思ったんだけど、作成義務………主任なのよ。つまり、私の仕事。10枚コピーしないとなぁー」

と、私は、言いながら、新人看護師用ススメの用紙を印刷し始めた。

「ふぅー。あれ?蓮華は?」

「あれ?船原先生?今、第1手術室で手術中ですけど?」

「桜先輩!!!」

「おっ!若菜!?元気か?」

「元気ですよ!?」

若菜とは、国見さんの下の名前。そして、私が教育係をしている。

「蓮華先生に用事なら伝えますけど?」

「いや、手術中ならいいや。」

「絹織先生?急にどうしました?」

「いた!!桜!行くよ!」

と、整形外科医の絹織先生は、船原先生を連れてどっかへ行った。

「国見さん。船原先生とはどんな関係なの?」

「高校の先輩です。」

「へぇー。」

「錦野さん。」

「あっ。はい。」

と、私は、言い、師長の方へ向かった。

-数分後-

「錦野さん。子供は、病院系列の託児所に預けてね。」

「あっ。はい。」

「再来年、三田川看護部長が定年退職するから師長選挙で私が看護部長になるから看護師長やる?」

「再来年ですか?」

「そうよ。」

「だからさっき研修会の話したんですね。」

「そうよ。よろしくね。」

「疲れた。夏希〜。癒してちょ〜。」

と、蓮華先生は、言い、セクハラ行為をしようとしたのでハイヒールで反撃した。

「ふぎゃ。」

「あっ。ごめん当たった?」

「うん当たったよー!」

と、鼻血を垂らしながら、蓮華先生は、言った。

「大丈夫ですか?桐原先生!?」

「大丈夫。バカ蓮華だから。」

「夏希〜!?」

「はいはい。」

と、私は、ポケットティッシュを蓮華先生に渡し、パソコンをいじり始めた。

「錦野さん。」

「どうかしたの?国見さん。」

「桐原先生とどんななりそめなのですか?」

「幼稚園から一緒だよ?高校と大学以外だけど。」

「プロポーズの言葉とか………。」

「プロポーズの言葉?クリスマスイブに、クリスマスツリーの下で、結婚指輪を出して普通の言葉だったよ?」

「そうなのですか!?」

「うん。ね。蓮華先生。」

「うん。そだよ。『結婚しよう!!昔よりも仲良くなろうね。』ってね。」

「昔よりも仲良くなろうね。って言われてないけど?」

「そうだっけ!?」

「うん。正確には『結婚しよう!!怒らせたり泣かせたりするかもだけど一緒にいて欲しい!』って言われたよ?キスもされたし。」

「もう!桐原先生!」

「さて仕事に戻って。国見さん。」

「夏希が言うかい?それ。」

「蓮華先生には言われたくないよ?医局に戻らないの?」

「華蓮が今、医局でへばってる。俺が中に入ったら抱きしめられる!」

「な訳あるか!行くよ!!」

と、私は、言い、蓮華先生を医局まで連れて行った。

-数分後-

「華蓮君?疲れた?」

「手術の見学が一日で何回もあるなんて知らなかったですよぉ〜!」

「「蓮華先生だから。」蓮華だから。」

と、蓮華先生以外の総合外科医のメンバーは、言うと、当の蓮華先生は苦笑していた。

「蓮華先生………笑い事じゃないよ?」

「そう?」

「華蓮君。蓮華先生は、手術専門だから。」

「アハハ。」

「錦野さん。質問ですが。」

「何?」

「総合外科って………。」

「脳神経と、胸部心臓、循環器、消化器の4つの診療科が総合外科の中に入ってるよ?」

「そういう事ではなくてですね?」

「ん?」

「小児外科とか整形外科、入ってないですよね?」

「うん。それぞれ科長がいてね総合外科から独立してる感じで医局が別々にあるよ。」

「耳鼻科とかは泌尿器科は、西館にまとめてあるよ。」

と、蓮華先生は、詳しい説明をしてくれた。

「後、東都紅蓮西総合病院この病院、脳神経内科無いから。」

「えっ!?」

「いや、あるよ!藍槌先生とかいんじゃん!!」

「だっけ!?」

「そだよ!!もぅ!蓮華先生は。」

「それと脳ドック外来がある。俺も脳ドック外来やるし。一応、日本脳ドッグ学会に毎年審査依頼出してるよ。」

「毎年審査依頼?どういうことですか?」

「毎年審査員が来てくれるの。4月の初めに。今年は、OK。」

「へぇ〜。」

「まっ。紹介状あったら診察して、手術だったり内服薬出したりするよ。」

「へっ!?蓮華先生は、手術専門医師じゃないの?」

「専門っちゃぁ専門だけどさぁ?」

「だけど?」

「やらないといけないわけ。手術だけやろうもんなら夢道先生に怒られる。」

「アハハ。私戻るね。」

と、私は、言い、ナースステーションに戻った。

-数分後-

「夏希。」

「あっ。春都兄さん!?どうしたのですか!?」

春果ハルるん来てない?」

春都ハルくん?どうしたの?今着いたとこだよ?」

「きゃぁきゃぁ。うるさいよォ?」

「芸能人とプロ野球選手来たら。ね?」

「ね?じゃないよ!国見さん!あっ。蓮華先生!?」

と、私は、言い、医局に戻った。

-数分後-

「「華蓮!!」兄さん!!」

と、取っ組み合いの喧嘩をしながら桐原兄弟は、喧嘩をしていた。

「なんでさっきは仲良かったのに取っ組み合いのケンカをしてるのかな?」

と、私は、ただ二人を見ていると蓮華先生達は、怯えていた。

「華蓮がぁ!!」

「兄さんが!!」

「あぁ!もぅ!!1人ずつ理由を話してもらおうかしら?」

「看護師の中で可愛い人の話で、俺は、夏希が1番可愛い!って言って!」

「僕は、国見さんが良いって言って。」

「蓮華先生は、お兄ちゃんでしょ!!いい加減にしなさい!!分かった!?」

「はぁ〜い。」

と、蓮華先生は、私の禍々しいオーラを感じたのか怯えながら謝った。

「錦野さ〜ん。ちょっと来てください。」

「はい。分かりました。蓮華先生。怒ってないからね。呆れてるから。」

と、私は、言い、ナースステーションに戻った。

-数分後-

「錦野さん。この写真見てもらっていいですか?」

「どれどれ?」

「この黒い影。」

「腫瘍かな?単なる炎症かな?蓮華先生?ちょっと来てください!」

と、私は、医局の扉の所で言うと当の蓮華先生は、欠伸をしながら頭をポリポリ掻いていた。

「何?」

「いいから早く!」

と、私は、言い、蓮華先生の右手を引っ張りナースステーションまで行った。

「蓮華先生?この写真を見てください。」

「ほぅ。誰の写真?この黒い影の持ち主は。」

「松本さんです。」

「クモか、髄膜炎か腫瘍かな?松本さんって今どこにいるの?」

「病室ですよ。205号室。」

「ありがとうございます。夏希も行こう。」

と、蓮華先生は、言い、205号室へ向かった。

-数分後-

松本さんへの診察とCT検査を終え、症状は、『慢性硬膜下血腫』と、診断し、蓮華先生は、即手術をし、またここに戻ってきた。

「髄膜炎とかじゃなかったなぁー。」

「良かったじゃないですか!手術出来て。」

「良くないよ!!手術中は、夏希に会えないから嫌なの!」

「なに妻を口説いてんの?」

と、私は、松本さんと共に怪訝そうに蓮華先生に言った。

「口説いてないよー?怪訝そうに見ないでよー。」

「アハハ。」

と、私は、言い、松本さんに挨拶をし、蓮華先生を連れて戻った。

-数分後-

「俺、明日、休診休みなんだよねー。あっ。粕川先生、慢性硬膜下血腫術後手術お願いします!」

「了解です。」

「後は………。華蓮。また?ぐったりしてやがる。」

「兄さん!!手術し過ぎぃ~。」

「つか、俺の席。しかも俺の夜食おやつ食うな!」

「うるさいなぁ!もう!!バカ蓮華!!」

「夏希!?どうしてここに!?」

「ナースステーションまで聞こえる!!うるさい!病院は静かにでしょ?」

「はぁーい。」

と、蓮華先生達は、怯えながら謝ってきた。

「兄弟ゲンカの時は、錦野さんを呼べば良いですね。」

「出産後でお願いしますね。」

と、私は、言った。

「華蓮。兄だから研修医になりたての弟を第1助手にするって事は、出来ないから頑張って、俺の第1助手までかけ登ってこい!」

「はい!絶対に!」

「ほれ。手術ノートのコピー。俺が執刀してきた手術の術式。すべて論文に出しているんだけどね。」

「ん?何これ?こんなの書いてたの?蓮華先生は。」

「だから手術ノート。まっ。アメリカでだけど。」

「それで彼女の私が電話しても取らなかったわけね。」

と、私は、手術ノートのコピーを華蓮君に渡そうとしている蓮華先生を怪訝そうな目で見ながら言った。

「また怪訝そうな目で見られたぁー」

「蓮華だから。」

と、私は、言った。

「俺だからかよー!?」

「うん。さて仲直りしたから私は、戻るね?産婦人科の患者さんまで聞こえるからね?」

と、私は、釘を刺してナースステーションに戻った。

-数時間後-

「夏希ー。終わったかぁーい?」

「あと1行だよ?待ってて。」

「華蓮と千暁も帰ったし。後は、俺達だけだよ?」

「粕川先生達も帰ったの?」

「うん。今日の当直は、源賀先生だし。」

「申し送りも済ましてるよ。私は、日誌の書くスピード遅いから。ごめんね。」

「良いよ。こっちこそ今日は、ごめんね。」

「書いたよ。もう日勤看護師帰ってるしぃ。」

「ゆっくり書いていいよって言われてるでしょ?」

と、蓮華先生は、言い、いつもの様に缶の炭酸飲料を飲み始めた。

「提出完了っと。わっ。」

と、私は、言い、師長の机に置いて椅子からたちあがろうとするとよろめき、蓮華先生の胸に倒れてしまった。

「大丈夫?」

と、蓮華先生は、私を抱きしめながら言った。

「そこ。イチャつかない。」

「佐中さん!!イチャついてないよ!?」

「冗談だよ。知ってる。」

と、夜勤看護師の佐中さんは、笑いながら言い、見回りをはじめた。

「お疲れ様です。」

と、私は、言い、蓮華先生の後をついて行った。

-時が経ち聖夜12月25日の未明-

「産まれるぅ~~!!」

と、私は、凄く力みながら言い、その数秒後長女、聖夜まりあ次女、冴香さやかを産んだ。その後すぐに病室に連れて行かれヘトヘトになって寝ていると蓮華先生が緑茶のペットボトルを持ってきた。

「蓮華先生?私眠るよ?ヘトヘトなんだからさ?」

「うん。良いよ。ただ飲み物飲みたかったからついでに夏希のも買っとこって思ってさ?はい。これ。」

「私のはついでなんだぁ?へぇ?後でまた来たらいいよ。今すんごいヘトヘトなんだから。なんも対応できないよ?」

と、私は、緑茶のペットボトルを受け取りながら言った。

「ごめんってばぁー。対応しないでいいよ。朝になったら親父たち連れてくるし、師長だって来るだろうから2人っきりになれるのは今かなって思ってさ。」

「冗談だよ。もぅ。」

「聖夜達は?」

「下のエリアだよ?母子同室じゃないから。頼めば連れてこれるけど?」

「いや、良い。後で逢いに行く♪それより~………夏希。」

「急に何?どうかしたの?」

と、私は、右耳付近を弄りつつ急に私を見なくなった蓮華先生を見ながら言った。

「ありがとう。父親にしてくれて。」

と、今までに見たことのない幸せそうな笑顔で蓮華先生は、私に言ってくれた。

「蓮華。こっちこそありがとう。母親にしてくれて。でもお腹壊さないでよ?」

「なんで!?」

「よく蓮華は、滅多にしないことをしてからお腹壊すことが多々あるから。」

「アハハ。その癖もう治ってるよー!」

「ホントに?昔、私の部屋に最初に来た時に鼻血出して、お腹壊してトイレ行った人が何を言うかな?」

「今は、なんでも………ないよ?」

と、蓮華先生は、しどろもどろに狼狽えながら言った。

「お腹壊したね。ほら。言わんこっちゃない。おトイレに行っトイレ。」

と、ギュルルルルと、お腹を壊した蓮華先生をダジャレ混じりにトイレに行かせた。

-数分後-

「夏希〜。」

「蓮華。どうしたの?」

「オヤジギャグ言うのもどうかと思うよ?いつの間にか飲み切ってるし。」

「だって喉カラカラだったんだもん!!仕方ないでしょ?」

「そうだけどさ?まっ。良いや。もう眠るでしょ?俺が捨てとくよ。會川先生にさっき、何故いるのですか?って聞かれた。」

「私の出産日だからって言ったでしょ?」

「うん。そしたらそうなのですか?おめでとうございますって言われた。」

「感謝はしたんだよねー。もう眠いんだけど?」

「ごめん。おやすみなさい。」

と、蓮華先生は、言い、私から空のペットボトルを受け取り家に帰った。

それを眼を擦りながら見送って寝た。

-10時前-

「おはよう〜。夏希ちゃん!来たよー!」

「あっ。お義母さん達。おはようございます。聖夜達は、下のフロアですよ?迷いませんでした?病室………ここ個室なんで。」

「それは、大丈夫よ。蓮華から聞いたから。」

「教えてくれてありがとう。蓮華。今日っていうか、今なら動けますよ?聖夜達見に行きます?」

と、私は、言い、ベッドから降りて玄関まで行った。

「おぅ。俺、今から仕事だからごめん。じゃ。行ってくる。ごゆっくり♪」

と、蓮華先生は、白衣の裾をはらいながら言った。

「見に行くけどご飯は?」

「食べてるよ。お母さん。とっくの昔に。食べて、漫画でも読もうかと思ってケータイ弄っててた時に来たんだよ?」

「漫画読むのになぜ携帯が必要なのかしら?」

「漫画アプリ入れてるの。ごくたまにしか見れないんだけど。」

「そしたら来たわけね。」

「そういう事。」

と、私は、実母に言い、扉を開くと、そこには、師長が居た。

「桐原さん………。錦野さん。」

「師長。お疲れ様です。びっくりしました!」

「ごめんなさいね。師長になったら主任選びなさいよ?」

「あっ。はい。選ぼうと………。じゃぁ…秋瀬さんで。」

「分かったわ。」

「師長。」

「何かしら?」

「この前、師長が師長選挙で部長になるって仰ってたのですが、師長が何故、選挙前に部長になるって分かるのですか?」

「それね。それは、三田川看護部長が私を後任に指名したのよ。それで分かるわけ。他になんか質問ある?」

「無いです。ありがとうございます。」

「どういたしまして。じゃ。伝えておくわね。」

と、師長は、言い、ナースステーションに向かった。

「さてと行きましょう。授乳は、終わっているんですけどね。」

と、私は、言い、家族を連れ、下のフロアにある授乳室に向かった。

-数分後-

「華蓮君?」

「設楽岡?おめでとう♪」

「ありがとう。華蓮君は?」

「義姉の見舞い。」

「どこか悪いの?」

「いや、それ本人の目の前で言うか?義姉も出産したんだよ。」

「そうなの!?ごめんなさい!!そしておめでとうございます!!」

「ありがとうございます。お子さんって双子ですか?」

「いや、男の子の一人っ子ですー!名前は、海の心って書いて海心うみですー!そちらは?」

「こっちは、女の子の双子で、聖夜と書いて聖夜まりあと冴香と書いて冴香さやかです。もうこっちは、授乳してるんでただ見に来ただけです。」

「もうじきだから来ました。この子ですー!」

と、設楽岡さんは、自身が産んだ海心ちゃんを指差し、授乳室に入った。

「行ってらっしゃい!可愛い。ウチの子達も負けないぐらい可愛い。」

「設楽岡さんは高校の時の同級生だっけ?」

「そうだよ。千暁。鹿岡だったかな。今の苗字。」

「どれどれー?可愛い娘達は何処だ?」

「蓮華………蓮華先生どうしてここに!?」

「医局でソワソワしてたら、夢道先生にソワソワしてんなら赤ちゃん見に行けば?診察は、粕川先生だから。って、叱られたから来た。」

「叱られたから来たってもぅ!聖夜達は、この子達だよ。」

と、私は、言い、聖夜・冴香の順で指さした。

「可愛いー♪」

「授乳済みだからね?あげたばっかだよ?」

「そうなんだぁー。ガッカリ。」

「なんで!?ガッカリしてんの?まさか………授乳中の妻を見たかったの?変態だね。」

「違っ……違う!」

と、蓮華先生は、しどろもどろに狼狽えながら言った。

「私は、今、休職中だよ?そんなに私を見たいなら休憩時間に来たらいいよ?仕事中に来たら怒るわよ?」

と、私は、言った。

「うん。絶対に来ない。」

「私、仕事できないからね。託児所に預ける迄なんだけどね。」

「寂しいなぁー。」

「寂しいってもぅ!」

「回診は、11時なんだ♪」

「次の授乳時間だけど?」

「急いで済ませる!」

「ホントに変態だね。」

「違うってばぁ!」

「来週は、家に居るし。退院までは、病室と授乳室の往復だよ?」

「そっかー。そだね♪なんかあったら呼んでよ?」

「なんで!?」

「寂しいんだもん!」

と、蓮華先生は、言った。

「今日の仕事終わったらこればいいじゃん。私の病室。居るから。」

「晩ご飯、院内売店コンビニで焼肉弁当買って一緒に食べていい?」

「何時頃?」

「七時頃かな?」

「私、授乳中かもよ?って言うか、なんで!?焼肉弁当なの!?」

「夢道先生がよく焼肉弁当買って食べてて美味しそうって思ってたんだもん!!良いでしょ!」

「私のは、ヘルシーで健康的な晩御飯だよ!?ガッツリボリューミーの晩御飯を隣で食べられると困るんだけど?」

「ヘルシーで健康的な弁当に変える!」

「よろしい。」

と、私は、言った。

「桐原先生ー!」

「中後さん!?どうかしました?」

「医局に行ったらいなくてここにいるって聞いてきました。」

「ごめんなさい。言うの忘れてて。」

「中後さんどうしたのですか?」

「夏希さん。」

「それよりどうかした?」

「手術お願いします!」

「病名は?」

「脳梗塞です!」

「なら!早く言って!んじゃね。夏希!」

と、蓮華先生は、言い、手術室へ向かった。

-12時前-

「夏希ー!疲れたよー。」

「お疲れ様です。蓮華先生。」

「夏希ー。そういうのは辞めてよー!俺、急いで手術終わらせて授乳室に行ったら誰もいないし!そしてこっちに走ってきて、ヘトヘトなんだよ!?」

「病院を走ったんだ?へぇ?」

と、私は、蓮華先生を見ながら言うと何故か当の本人は、怯えた。

「ごめんなさい!!こっちに来る時に聖夜達見て来た。すんごい可愛い。マジで天使!やばい。鼻血出そうなくらい可愛い!」

と、蓮華先生は、悶えながら言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る