ちょっと妹を舐めてくるサイエンスフィクション

狐付き

第1話 プロローグ

 人類は宇宙で暮らすのに適していない。

 これは散々言われていることで、宇宙で暮らすようになって600年以上経過した今でもそうなのだという。

 だから僕らには地面が必要だ。といっても僕も父さんもじいさんも、そのまたじいさんもずっとこの宇宙船『雄大な地平線号』で生まれ育ったんだから、全くピンとこない。


 そんなわけで僕ら人類は暮らすことのできる大地がある星を探していた。

 いた、というのはもちろん過去形で、実は見つかったのだ。それが半年ほど前の話。僕らはそこを目指している。


 だけど偶然というものはあるもので、僕らの来た星とはまた別の星から来た人たちも同じ星を見つけ、そこへ向かっているようだ。

 こうなると道はふたつ。共存か戦争だ。


 諦めて別を探すという選択肢はない。なにせ僕らの船はもう限界に近い。自動修復装置があるし、駄目になったパーツは炉によって再製造されることで半永久的にもつと言われていたが、宇宙線の影響は予想以上に様々なものを劣化させていたようだ。


 そして互いに言語など通じない相手同士だったが、どうにか翻訳し対話することに成功。結果────戦争が開始されることになった。


 彼らと僕らでは、住むのに適した環境が違いすぎた。だから分け合うこともできない。更に彼らの宇宙船も限界らしく、これ以上他で探すことができない。

 このまま宇宙船と共に死ぬくらいなら戦って死んだほうがマシといった感じか。

 つまりこの船に乗っている全てのひとが兵士というわけだ。


 開戦まであと3ヵ月。その間、僕らは戦闘員と非戦闘員に分けられる。

 僕は元々士官候補生だし、エースパイロットだ。当然戦闘員として表に立つ。だけど心配なのは妹のチーハだ。

 とてものんびりした子だから万が一にも戦闘員になることはないだろうけど、もし乗せられたら確実に的だ。


 だけど僕らの乗る、4足ケンタウロス型戦闘兵器馬亜人ばあじんだって無制限にあるわけじゃない。予備パーツをかき集めて戦闘可能状態にしてもせいぜい500機がいいところだろう。

 攻撃支援用小型ロケット出射童でいるどうだって300機程度だ。この船の乗員数から言えば、チーハが搭乗する可能性はほぼない。


 負ければ戦闘員も非戦闘員も変わらぬ未来が待っている。だけど勝てば少なくとも、非戦闘員はほぼ助かるだろう。

 もちろん船自体が攻撃されたらこうはいかないだろうけど、僕らだって船を直接攻撃なんてさせない。


 だけど一番の問題は、互いに力が未知数ということだ。楽勝の可能性もあるし、逆に惨敗するかもしれない。

 兎に角3ヵ月、僕は自分のできることをして待つだけだ。

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