第2話 そこはまさに無の国だった

目を閉じている感覚はわかった。体はふわふわと軽くなっていて、目を開けたくないほど心地よい空間。誰かに叩き起される事も無く、私は目を瞑ったまま眠った。


眠ることに飽きた頃、ついに目を開けてみた。目を開けるとそこに広がっていたのは白。何もかも白。遠くの木も空も目下にある花も全てが白で少し目がチカチカするほどだった。私の周りには果てしない草原が広がっていて、感触も寝心地も幼い頃感じた草の匂いも全て私が知っている世界と同じだった。


ここはどこだろう。私はどうなってしまったのだろうか。ここに来た経緯を思い出せない。17年間生きてきたのは覚えている、しかし中学を卒業して高校に入ってからの記憶がどうしても思い出せなかった。わかるのは、幼い頃の何もかもが楽しかった記憶だけが鮮明に思い出せた。草の上で転がるだけで楽しくなって、確か空は透き通るような青色でそれが眩しくても笑っていたあの頃。何にも縛られず純粋だった。


私は今までいい子を演じてきた。親の言うことはちゃんと聞き、先生に好かれるように言われたことは完璧にこなしてきた。そんな事をしていたら、同年代の人と馴染めなくなってしまった。そしたらいつの間にか1人ぼっちになっていて、教室の前の花壇に咲いた花とばかり戯れていた。

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明日、生きていれば奇跡である。 夕凪月花 @yuunagi_gekka

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