第017話 √0-8B 『ナレ視点』『五月六日
どうも、私ナレーターのナレーションと申します。
基本的にここまで主人公こと下之ユウジの視点でお送りしていたわけですが、主人公なところで全知全能の神というわけではないのです。
だからこそ下之ユウジが知らないことは下之ユウジが語れるはずはない、ということですね……まぁ、まったくもって当たり前のことですが。
ということで、下之ユウジの預かり知らぬところで進行するところや、そんな彼女たちの心情などに関しては私がナレーションさせていただきます。
え? なんで私が彼女たちの心情を知れるんですかって?
そりゃ、私は一応神視点でものを言っているのですから。
そしてこの世界においては神だったりするかもしれません、なんて……まぁ言い過ぎですね、色んな意味で。
ということで、時折お付き合いください。
五月六日
藍浜高校の朝、予鈴まで十分弱という少しだけ遅めの登校時間に一人の女子生徒がやってきました。
長くサラサラとして太陽の光を浴びてキラキラ光る――金髪をの持ち主で。
この国で言うところの同世代女子の平均身長はゆうに超えた長身かつ起伏に富んだ身体つきをしています。
着ているのはそれこそ藍浜高校女子指定制服のセーラー服ですが、なんだか不釣り合いというか妙なコスプレ感も醸し出していました。
そんな彼女の鼻は高く、鼻筋はすっと通り、唇もほどよくボリュームがあり、地毛そのものであろう金色のまつげは長くカールしていて、まさに女優顔負けの整った顔立ちです。
そこにサファイアのように輝く蒼くて、青い、碧眼を持っているというのだから周囲の注目を集めてしまうのは想像に難くありません。
同じく校舎に向かう生徒達はそんな金髪の美女に意識が視線を注いでいます??
「わぁ……綺麗な子」
「誰かしらあの人……転入生?」
「あんなに髪サラサラだなんて……妬ましい」
「胸……はぁ」
「……ちょっと藁人形買ってこようかな」
以上女子呟き抜擢……なんか危ない人が居る気がするのですが、気にしないことにしましょう。
以下男子発言抜擢。
「見かけない顔だな……しかし綺麗だな」
「ふつくしい……」
「……こんな辺鄙な場所にこのような美女がおろうとは、拙者の観察眼も鈍ったものだ」
「はい、俺惚れた! 惚れたよ俺!」
「あ、あの金髪でもふもふしたいお」
「……二次元に生きると決めていたのにッ! ちくしょう、保て俺の理性ェ!」
以上生徒発言抜擢……変な人が混ざってる気がしますけどスルー推奨です。
……あっ、金髪女生徒立ち止ましたね。
そして校舎を見据えながら彼女は呟きます――
「ここが……藍浜高校ですのね」
彼女の瞳には何かに期待するようで、新しい生活に気分が高揚しているようで、そして――ある種の覚悟もあって。
まぁなんとも学校前に後姿も様になるものです、ギャルゲーで言うところの一枚絵バーンでしょう。
彼女はそこらへんに歩いていた生徒を捕まえて職員室の場所を聞きだしました。
そして職員室に向かい、担任教師と顔を合わせこれからの学校における簡単な説明を受けます。
そのまま教師に案内されるままに彼女は後ろをついて行き――
「それでは――さん、ようこそ藍浜高校一年四組へ」
そうして彼女は一年四組の転校生となるのでした。
いわゆるアニメやマンガとかにありがちな「転校生を紹介します~」という出来事があり、彼女が自分の名前を黒板に書き、流暢な日本語をもって挨拶としました。
そうして彼女は用意されている自分の席に着席しました。
それから少しの教師による通常ホームルームののち、一時限目までの僅かな休憩時間の間にも転校生は一年四組クラスの注目を一身に集め質問攻めにあう事になりました。
予鈴が鳴り、一時限目の教師が入っても興奮冷めやらぬ生徒が渋々自分の席に戻っていくのに時間を要しました。
ようやく授業が始まったことで彼女は解放されたわけですが――
「あっ」
その時彼女は自分の手元にまだテキストブック、教科書が届いていないことを思い出しました。
物怖じしない彼女は隣の眼鏡をかけた女子生徒に――
「まだ教科書がまだ届いてなくて……よろしければ、見せて頂けますか?」
「ええもちろん、いいですよ」
彼女は快く承諾してくれたようですね。
「ありがとうございます」
彼女は自分の机を金髪の彼女の机へに寄せてきます。
「この方が二人で読みやすいでしょう?」
「そうですわ、ね!? ……そ、そうですね、ありがとうございます、わ!? ……ありがとうございます」
「クセになってるんですね」
”ですわ”とか”ですわね”とかお嬢様っぽい喋り方が板についている彼女に隣の女子生徒がクスクスと笑います。
「や、やっぱり変ですわよね」
「い、いいえ……ふふ。なんだかその方がイメージに合うものですから」
「それはそれでどうなんでしょう……」
彼女もまた早速友達、のような方が出来たようですね。
「私は――と、いいますわ」
「ふふ、知ってます。私は岡小百合です、よろしくお願いします」
メガネをかけた、黒髪おさげのなんとも地味めな女子生徒は微笑んでそう自己紹介をするのです。
そんな時彼女はふと思い出すのです――
こうして友達と呼んでもいいかもしれない方がこの国で出来ましたわ、ねえ――は今頃どうしているの? と。
遠い故郷の、その隣国にいる幼馴染のことを考えながら、彼女のこの国での生活は始まっていくのでした。
それから、転校初日の彼女にとって初めて尽くしの午前授業が終わり昼休みがやってきます。
「学食は初めてですか?」
眼鏡の女子生徒こと岡小百合さんは彼女に聞きます。
「ええ、学食と言うものは初めてです」
「この学食は早くて安くてと評判ですから――さんのお口に合えばいいですね」
「たとえばどんな料理が出されるのですか?」
「まずは一番リーズナブルな”うどん”とかかな」
「UDON! 聞いたことありますわ、ジャパニーズヌードルですわね!」
KAGAWAカントリーでは一日三食全国民がUDONなのでしょう! と微妙にやりすぎな知識を岡さんに披露していました。
「そういえば岡さん、生徒会というのにはどうすれば入れるのでしょう?」
「生徒会、ですか? 生徒会に入るのは……うーん、どうなんだろう」
「何か基準が厳しいですの?」
「どうなんだろう? 厳しいと思ってたんだけど、それにしては最近副会長の弟が入ったみたいだし」
「副会長の弟……ですか?」
そんな具合に二人話し込んでいたからこそ前方不注意、ある意味不幸が重なったと言ってもいいのかもしれません。
「噂では会長の一存とか――! ――さん! 前!」
岡さんがそう叫ぶ頃にはもう間に合いません。
「へ? 前――」
そう聞き返す間もなく――
「きゃあああ!」
彼女は圧倒的な力に押され、地面に倒れました……って何が起こったんですか?
……いや、思い切り見えてて分かってますけど……まぁナレーション的には盛り上げる為にはそれっぽいこと言わないとですね?
まぁ、つまりは今彼女は男に押し倒されているわけです。
それもその男は彼女の胸をがっつりキャッチしているわけです。
その男が、ようは主人公の下之ユウジなんですけどね。
……ちょっと大きいし柔らかそうだし羨ましい。
このセクシャルハラスメント主人公、私に代わってくれないでしょうか。
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