本日のニュース 小学生に抜かれる日3
新聞記事では、パソコンに連動させて、条件が揃ったら、お化けの形にLEDが光るようなパソコンのプログラムを子供に組ませるようなことをやる、と書いてあった。パソコンの中でなく、連動させて外の電子工作機械を動かせるのは魅力だから、子どもたちはあっという間にパソコンを使いこなすようになって、驚くようなことをバンバン小・中学生が発明するようになる未来がありそうだ。
悩める子に相談に乗ってやって欲しい、と頼まれて出て行ったら、本人は大学出たてのニートだが、職業訓練の学校に行っている、と。将来アプリの開発をやりたくて、アプリを作っているところだが、どうやったら開発者になれるのかな、と聞かれ、最近のニートの悩みは高度だなと思ったのが、数年前だ。もはやアプリは花盛りで、あの時の子はどうしてるだろう。玉石混交に訳のわからないものまで毎日すごい数のものが世界中でポロンポロン、まるで際限なく降り続く雨みたいに、日々生み出されている。
僕は自分が最早、時代遅れになっている、その危機感に絶句した。
あなたねえ、あなたってきっと古いわよ。
母さんがそう言ったが、確かに。俺が棺桶の中で、眠っているうちに、あっという間に千年くらい、経過していたらしかった。
千年は言い過ぎだな。
なぜ進化することを自分が拒絶したのか。今日、このニュースを見て、本当にまずいな、と感じるまで、俺は、農夫のように自分からわざわざ、時間を止めていたことについて、危機感を感じたことはなかった。時間というのは、一度止めてしまうと、簡単に動き出さないものらしい。
何度も何度も、古い過去をなぞることにより、何か新しいものを見出そうと試みたが、全く意味なかったのかもしれない。そんなことよりも、もしかして、新しい流れに乗ってみて、どこまでその流れが自分を運んでいくのか、そういうことを見ないと、このままでは取り残されるんじゃないか。
自分が進んでいるからと安心し、眠っていた間、急に自分が時代から取り残され、古くなる恐怖を感じたのは、人生、たくさん生まれ変わった中でも初めての経験だ。それは、自分が若死にしてきた過去生ときっと関係がある。今回、初めてそのことに気づき、歳をとるというのは恐ろしいことなんだな、と。若くして子供で死ぬから、時代から取り残されるという経験をほとんどしたことがなかった。放っておいても、自分が最先端な状態と、必死でついていかないと、乗り遅れる怖さ。もちろん、マラソンでもそうだが、後ろからついていくというのは、前を行くより、多くのエネルギーを消費する。
「長く生きる」ということがどういうことなのか、「時間感覚の違い」が、今まさに「初めての経験」で、それは新鮮なはずだろうに、人生が退屈だ。これが長く生きる弊害なのか。生まれた時から、すでにそこにあるテクノロジーを土台にして、そこから簡単に軽く積み上げる。そうやって新しい世代は、あっという間に次々、進化を遂げるが、流れがゆっくりになってしまった上の世代は、意識して流れを追わないと、あっという間に「浦島太郎」だ。
もはや、「浦島太郎」という比喩さえ、「共通言語」として通じないかもしれない。コミュニケーションというのは社会的なバックグラウンドの共有がないと、本当に単純な比喩さえ、何の意味も持たないものとなる。海外に出ると、そのことを痛感する。ごく普通に話す言葉の指し示す意味が、もはやどこを正確に指すのか、測る指標もない。同じ言語を操ろうとも、上手にコミュニケーションが取れなくなっていく。
そんな中、バルセロナでセックス・ドールのレンタルホテルが開業したニュースが同時に流れていた。もはや、コミュニケーションの相手が生身の人であることすら求められない時代に突入しつつある。
分断されていく人と人の繋がり、社会を俯瞰で眺めていると、自分たちは一体、どこに向かおうとしているのか。これからの社会がどうなっていくのか、上手に波乗りしようにも、その波が運んでいく未来が、どこなのか未知で、突然に、不安に襲われた。このままじゃ、まずい。だから僕はニュースなど滅多に見ないことにしていたのだが、とりあえず、これから、コンピューターで制御されていくものを全てハッキングされたとしても、「手動」でどうにでも対応できるように、先に「安全対策」を考えておくべきだろう。
それがあっさりと、大元のコンセントを抜くとか、ブレーカーを落としに走るとか、びっくりするくらい原始的な方法しか思いつかないが、何よりも「便利にしすぎる」とことに、注意した方が良さそうだ。
でないと、外から操られて、台所のガスやオール電化の調理器具が消えないだとか、いろいろ起こってきそうだ。個人レベルならまだしも、実際にあるのは、安全制御装置へのハッキング。暴走運転といえば、簡単に想像つくと思うが、簡単にテロ被害を受ける状況がすでに起こっているから、住む場所も気をつけるしかない。機器が暴走したら、まずいことになるというのは、簡単に想像つく。この国でも数年前にあったけれど、工場から漏れ出した、なんらかの工業用ガスが広がって、こんな広範囲で匂ってる?という事件は、おそらく日本では報道されてないだろうと思うけれど、世界を便利にしすぎると、何が起こるかわからない。気をつけて、冷静に対処法を考えたい。
案外あっさりと、危機管理を先に考えるほうがいい。僕が車のパワーウィンドーを見た時に、昔のクラシックな車のように手動であれば、例えば水没事故などの不運も問題が少ないのに、と。僕自身はすごくシンプルに「クラシックが一番」と考える方だ。そんなことをうっかり言うと、「あなた、一体、いつの時代に生きているの?サムライ袴の時代?」と嘲笑されてしまうものの、ただただ「便利」がいいこととは、僕にはとても思えないから。
まさかと思うが、死ぬ時、セックス・ドールと一緒だったとか笑えない。ハッキングされて、暴走したドールに挟まれ、押しつぶされたなんて、笑えない最期だけは誰しも避けたいだろう。でも十分にありえるから怖い。ロボットはそこまで高度でなくていい、と僕は考える。どんなことでも「抜け道」だけは、絶対に必要だ。油圧で動くドールを抱こうなんて、誰が思いついたのかわからないが、そこまで前向きに孤独を癒したいなら、もう少し別の方向性の解決を考える方がいい。ロボットの動作が途中で止まって、どうすることもできないような状態になって動けないでいて、レスキューなんて呼ぼう日には、そのまま死んじゃった方がきっとマシと僕なら感じてしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます