1章 インナーチャイルド

 大村真央は遠州の浜辺にいた。

 そこは風が絶え間なく吹き荒れ、大村の長い髪を縦横無尽に揺らし、小さな体は鍋の熱湯が大気に触れ少しずつ、されど滑らかに温度を落としていくようであった。周りに人影はなく、大村の座るところは薄く草が生え、眼前の少し先は満潮の波がたっするあたりを境目に急斜面になりそこからは白い砂になっていた。ところどころに小さな人工的な廃棄物が落ちていたが秋風が身を包み、日差しは雲に遮られ、淡い明かりがあたりの闇を色濃くし、その光景は彼女からモラルや過去、常識を少しの間奪い去っていった。


大村は目を閉じて、そっとドアが開く音が聞こえた。

一人の子供が大村をみている。

「あなたはいつあっても変わらないのね。」


「・・・・・・・・」子供は何も言わない


「機嫌悪いの?」


「・・・・・・・」


「ねえ、きいて、私はそろそろ成長しないといけないと思うの。でもね、それにはあなたにも協力してもらう必要があるわ」


「・・・・・・・・・」


「いいわ、今は何も喋らなくても

それにあなたは私が忘れた頃にやってきて、波風立てていくのはわかってるの

でも私はあなたを支えていくってき決めたわ」


「・・・・・」


雲が太陽を横切り、大村の顔を照らした。

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ながしめ 川上成美 @kawakaminarumi

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